NICUで新生児のケアをする医療スタッフ=大阪府和泉市の府立母子保健総合医療センター
身体管理が必要な新生児に対応する新生児集中治療室(NICU)に、1年以上入院している子どもが全体の3.8%にのぼることが、厚生労働省の研究班(班長=梶原真人・愛媛県立中央病院長)の調査でわかった。障害児や未熟児が増えたのに退院後の受け皿整備が追いついていないことなどを背景に、増加傾向にあるとされる。研究班は「極めて高い割合」としたうえで、こうした長期入院が母体や新生児の受け入れに支障をきたしているとみている。(重政紀元、稲垣大志郎)
研究班は06年10月、NICUを持つ296病院に調査票を郵送。その後の経過をみる後方病床(GCU)を含めて、長期入院している子どもの数や障害・疾患の状況などを聞いた。この結果、回答があった188施設(4333床)中、102施設に計163人が1年以上入院していた。研究班はこうした子どもが全国で300〜350人いると推計している。
NICU、GCUのうち、人工呼吸器がつけられる「呼吸管理可能病床」に1年以上入院している新生児は108人で全体の6.6%。日本産婦人科医会が03年に363病院を対象に実施した調査では、長期入院児は全病床の2.8%、呼吸管理可能病床の4.2%だった。単純比較はできないが、いずれも3年間で約1.5倍に増えている。
増加原因としては、先天異常などで重い障害を負った子どもが医療の進歩で助かるようになったほか、不妊治療が進み、多胎児や体重千グラム以下の極小児が増えたことが影響しているとみられる。NICUの入院期間は通常、長くても3カ月とされ、1年の長期入院が1人いると、少なくともほかに3人の受け入れができない計算になる。
退院できない理由では、在宅療養の担い手がいないなど「家族の都合」が24%、「療育施設の不足」が22%で、いわゆる「社会的入院」が半数近くを占めた。「症状が重い」などの医学的原因は34%にとどまった。
今後の措置に関する主治医の判断を分析すると、「入院継続」はわずか2%。「地域療育センター」(58%)と「在宅療養」(28%)を合わせると、8割超が「退院が望ましい」との意見だった。
長期入院児が新規患者の受け入れに与える影響では、20%が「非常にあり」と回答。「時々あり」を含めると、7割が問題と感じていた。厚労省が周産期母子医療センターを対象にした調査では、07年度に病院が母体搬送を受けられなかった理由の第1位は「NICUが満床」だった。