生鮮野菜の2008年の輸入量が56万7200トンにとどまったことが、財務省の貿易統計で明らかになった。中国製冷凍ギョーザ中毒事件などが尾を引き、主要な対日輸出国である中国産が敬遠された結果といえる。スーパーなどの開発輸入が本格化し始めた1993年以降、輸入量が57万トンを割り込んだことはない。輸入野菜の実需となっている業務・加工需要を国産が奪い返す好機にしたい。
輸入量が最も多かったのは2005年で、史上初めて100万トンの大台を超した。過去2年間の国内相場が好値で推移したことから、業務・加工需要のパイプが広がったためだ。しかし、1990年代以降の生鮮野菜の輸入を振り返ると、最大の対日輸出国である中国産の安全性の問題が常に横たわっていた。100万トンを突破すると思われた2002年は冷凍ホウレンソウの残留農薬問題の発生で、06年はポジティブリストによる農薬規制強化で、それぞれ輸入量を大幅に減らした。一昨年はペットフードやせき止め薬などの中国製品が世界中で引き起こした事件の影響によって、生鮮野菜の輸入は10年ぶりに70万トンの大台を割り込んだほどだ。
ギョーザ中毒事件は、1年たってもまだ原因究明がなされていない。そればかりか、その後のメラミン混入事件なども影響して、中国産に対する消費者の忌避反応はこれまでにないほど根強い。多くの輸入業者が、「生鮮ばかりか冷凍も含めて中国製食品の輸入減は長引く」とみているのは、そのためである。しかし、だからといって楽観できるか。わが国の野菜の全体需要量の半分以上は業務・加工で占められているが、その3割は輸入野菜だ。特に、米国発の金融危機によって景気の後退は深刻さを増し、「消費不況」となって襲ってきた。日常品である食品でも、価格の安さが再び強く求められ始めている。
中国ではいま、安全性を確保するため幾つかの試みが実践されている。例えば、日本の市ぐらいの規模の県で農薬を一元管理する取り組みだ。不必要なものを排除するだけでなく、使用量も適正に指導する狙いがある。また、安全な野菜作りを一層進めようと、冷涼な地域に産地を移転させる政策が一部で始まった。元東京農業大学教授で現在、中国・青島農業大学合作社学院教授の大島一二さんは「対日輸出に意欲的であることに変わりない」と指摘しており、反転攻勢の態勢作りが進んでいるとみていい。
国産にとって追い風が吹いているいまのうちに、業務・加工需要を輸入から奪い返すチャンスにしたい。価格や量の安定性が求められる分野だが、歩留まりや包装コストを考えれば家庭向けより農家の収益が落ちるとは一概に言えない。JAが指導力を発揮、業務・加工向け野菜の生産にいまこそ取り組んでほしい。