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ロシア「失地回復」 キューバとの連携復活、シリアなどに海軍基地も
【モスクワ=佐藤貴生】キューバのラウル・カストロ国家評議会会議議長が、同国の国家元首として約25年ぶりにロシアを訪れ、ソ連崩壊後に冷え込んだ両国関係の進展を印象づけている。1月30日にはメドべージェフ大統領と会談し、戦略的パートナーシップの覚書を交わした。「両国の軍事協力は復活した」と語る関係者もでてきている。ロシアは昨年末、北方艦隊をカリブ海に派遣して米国の神経を逆なでしたのに続き、シリアやリビアなどで海軍基地設置を検討しているとされ、世界各地で“失地回復”に向けて軍事的な存在感を強めつつある。
メドべージェフ大統領とラウル議長の会談で、ロシア側は、ハリケーン被害に悩むキューバに2万5000トンの食料支援を行うほか、ロシア製品購入のため2000万ドルを融資すると表明した。メドべージェフ大統領は「訪問は両国関係の歴史に新たな1ページを記した」と述べた。
ロシアは2002年、南米で最後まで維持したキューバの電子情報収集拠点、ルルデス基地を財政難で手放した経緯がある。昨年末に派遣された北方艦隊は、反米政権率いるベネズエラの軍と合同演習を行う一方で、キューバのハバナにも寄港しており、露下院議員は「キューバとの軍事協力は復活した」としている。
一方、イタル・タス通信は1月中旬、当局者の話として、露海軍が数年のうちにシリアのタルトスやリビアのトリポリ、イエメンのソコルタ島などに海軍基地を獲得するとの見通しを明らかにした。当局者は「政治的な決定はすでになされ、設置されることは疑いない」としている。
ロイター通信によると、タルトスはソ連時代、軍艦艇が地中海をにらむ物資供給拠点として使用していた。トリポリには昨年末、北方艦隊が寄港している。
ロシア軍のノゴビツィン参謀次長も国名を挙げるのを避けつつ、基地開設に向けて関係国と交渉していることを認めた。ただ、基地の維持には莫大(ばくだい)な予算が必要だとしており、基地開設のスピードは現在進行中の経済危機の推移にも左右されそうだ。