最後の授業
朴少年は その日も韓国語の宿題をしておらず、おまけに朝寝坊、いっそ授業を怠けて どこかへ遊びに行こうかと考えました。
韓国語のややこしい分詞法の暗記などより、風光明媚な釜山の野原を駆け回るほうが 遥かに楽しい。が、やはりそれは良くない、そう思い直して、大急ぎで学校へ向かいました。
ところが、教室はいつになく静かです、
普段は怖い 担任の金先生も 遅刻を咎めず、優しく着席を促しました。
しかも先生は正装しています。さらに奥の席には、元村長をはじめ地元の大人たちが 沈痛な面持ちで腰を下ろし、ある者は古い初等韓国語読本を膝の上に開いています。
教室全体に、何か異様な厳かさがありました、
やがて金先生が、優しく且つ重々しく語り始めました。
「皆さん、私が授業をするのは これが最後です。
韓国の学校では、日本語しか教えてはいけないという命令が、朝鮮総督府から来ました・・・ 新しい先生が日本から来られます。
今日は韓国語の最後の授業です。」
悪い大臣たちが国を売ったために 韓半島は日本の植民地となり、
金先生は退職を余儀なくされるのです。
そんな「最後の授業」だというのに、宿題を忘れた朴少年は案の定、指名されても 録に答えられず、これまでの度重なる不勉強を心底恥じました。
しかし、今日ばかりは 先生も叱らず、「悪いのは君たち子供だけではない、教育を軽んじた点では 我々大人も同罪です。
いつも勉強を翌日に延ばすのが 韓国人の大きな不幸なのです。
これでは日本人たちから『どうしたんだ、お前たちは韓国人だと言い張っていた。それなのに自分の言葉を話す事も 書く事も 出来ないではないか!』と言われても仕方がありません。」と説かれました。
これで最後かと思うと、教師も 生徒も 自ずと発奮しました。
金先生が これほど辛抱強く説明してくれた事は 今迄にありませんでしたし、
朴少年も これほどよく聞いた事は 一度だって無かったのです。
授業の終わりの時間が近づいてきます。
金先生は「世界中で一番美しい、一番はっきりした、一番力強い言葉である韓国語を決して忘れてはいけません。
なぜなら、ある民族が奴隷となっても、その民族の言葉を保っている限り、その牢獄の鍵を握っているようなものですから」と言い、絶句されました。
そして、最後の授業が終わりました。
金先生は 黒板に大きな字で力強く「大韓民国 万歳!」
と書き、振り向かず「皆さん、さようなら」とおっしゃいました。
おわり
※お母さま方へ、
幼いお子様に このお話を読み聞かせる時には、日帝が行った 悪逆非道な植民地政策を 徹底的に教えてあげましょう。