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2009年1月31日

◎北陸の雇用悪化 職業訓練も取り入れた支援を

 昨年十月から今年三月までに職を失う非正規労働者が全国で約十二万五千人に達し、北 陸でも雇用が急速に悪化する厳しい現実が浮き彫りになった。石川県などで比較的高く推移していた有効求人倍率も、非正規の求人がかなり上乗せされていたためで、求人倍率の下げ幅が他の地域以上に大きいのは雇用構造のもろさを表している。

 製造業を中心に非正規労働者の割合が地域で増えることは、好不況の波に雇用が左右さ れやすく、社会基盤が潜在的に不安定になることを意味する。安定した仕事に就ける人を増やすには、資格や技能を身につけてもらう必要がある。県や各自治体は臨時職員を募集するなど雇用の受け皿となっているが、そうした緊急避難的な措置は当然として、これから一層大事になるのは職業訓練である。

 厚生労働省によると、三月までに職を失う非正規労働者は、石川が二千六十四人、富山 は二千百五十二人に増えた。これらの数字は企業から任意に聞き取りした結果で、全体を正確に把握したわけではない。派遣などの業界団体は三月末までに全国で約四十万人の失職を試算しており、企業の急激な減産や年度末に集中する契約更新などを考えれば、こちらの方が現実に近いかもしれない。正社員のリストラが広がってきたことも底知れぬ不安をもたらしている。

 石川、富山県では、人手が不足する介護や第一次産業分野へ人材を移すため、新たに職 業訓練コースを設けたり、受講費などの支援が始まった。職業訓練を通じて雇用のミスマッチをいかに減らしていくか。地域の現状に合わせたプログラムがいる。手に職をつけたくても当座の生活費が不足して受けられない場合もあろう。求められているのは実効性ある再就職支援である。

 自治体の雇用対策は企業誘致などで全体のパイを増やすことに重点が置かれてきた。多 額の補助金を用意して工場を誘致しても、本社の判断で雇用が削られるのが今の現実である。非正規という働き方の増加が地域にどんな影響を及ぼすのか、雇用の質という側面からも対策を考える必要がある。

◎公務員制度改革 役人に足元見透かされた

 三十日に予定されていた公務員制度改革のスケジュールとなる「工程表」の決定が、人 事院の強硬な反発や自民党内の異論続出などで週明け以降に先送りされたことは、この改革の前途多難さを思わせる。

 制度改革の柱となる「内閣人事・行政管理局」の二〇一〇年度への設置先送りをはじめ 、官僚OBが再就職を繰り返す「渡り」を容認する政令をめぐるゴタゴタなど、公務員制度改革のもたつきぶりは目に余る。とりわけ霞が関の激しい抵抗は、求心力が低下する麻生太郎首相の足元が見透かされていることの表れとも言えよう。

 人事院は幹部人事を一元管理する「内閣人事・行政管理局」への機能統合に反発し、政 府の国家公務員制度改革推進本部の会合出席を拒否した。本部長は麻生首相であり、政府機関が首相主宰の会合をボイコットするのは前代未聞である。

 人事院の主張の当否はともかく、出席を拒否すること自体、霞が関の一歩も引かぬ姿勢 を象徴している。そもそも、この組織の設置が今年から来年へと先送りになったのも、権限移管を迫られた各省の強い抵抗が背景にある。

 「渡り」を容認する政令は昨年末に閣議決定された。麻生首相は「(政令を)厳格に運 用する」から「絶対に認めない」と国会答弁を軌道修正したが、不退転の決意がどこまであるのか改革姿勢が疑われる結果となった。

 改革の工程表については、自民党の公務員制度改革委でも「天下り根絶に向けた取り組 みが分かりにくい」などと修正を求める意見が相次いだ。首相は改革期間を一年短縮して向こう四年間で完了させる考えを示したが、霞が関が長い時間をかけて築き上げた人事システムをどこまで突き崩せるのか不透明感は増すばかりである。

 日本の官僚制度を抜本的に変える公務員制度改革を着実に前へ進めるには、政権の安定 感や役人の抵抗をはねのける突破力が欠かせない。今の麻生政権にそんなエネルギーがあるだろうか。今後も迷走が続くようなら、次の政権で仕切り直しもやむを得ないだろう。


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