やまと新聞 1912.6.21-1912.7.4(明治45)
朝鮮半島見聞記(一)-(十) ・雲客外史
その(五)より抜粋
衛生状態の改良
鮮_人町を歩いて、先ず感ずるは、プーンと来る一種の悪臭なり、衛生思想の欠乏思いやらる、陰鬱なるオンドル家屋に仰臥して、安逸を貪る処、尚妨げなしと雖も、幾万の細菌を養成し、之を四方に伝播するに至っては、看過すべからず、因襲の久しき改善の途容易ならずと雖も、刷新に一歩を加うべきは、目下の急務なるべし、糞も味噌も一所なりの一句は、鮮_人の衛生状態を形容すべき適切なる詞にして、食膳に配すべき茶碗に、子供の尿を受くる如きは、所謂尋常朝飯前の事にして珍らしからず、最近の事なりと聞く。
茲に一個の奇談あり、総督府令を発し、朝鮮_人は腹及尻を出して、外出する様なれども、是れ衛生上最も厭うべきことにして、炎暑の候の如き就中謹むを要す、是に反するものは、科料に処すべしと、然るに間もなく、鮮_人の一群は、警察署に押し寄せ、是れ怪しからぬ法令なり、総督府は抑衛生々理の途を知れりや、朝鮮_人が尻を出し、腹を出すは、数百年来の習慣にして、寒中如何に凛冽の日と雖も、未だ是を覆いたる事なし、若し夫れ腹と尻とを温めんか、却て下痢を起し、腹痛を感ずべし、何卒斯る法令は、撤廃し呉れよと哀願し来れりと、警察官も有繋の申分に腹を抱えて失笑したりと、衛生思想の幼稚なる概ね斯の如し、豈容易に与すべけんや。
【翻訳用・現代語版】(翻訳・句読点等はwatcher1によるので適当)
造船_人の町を歩いてまず感じるのは、プーンと来る一種の悪臭である。衛生思想の欠乏が思いやられる。陰鬱なオンドル家屋に仰臥して、安逸を貪ることは邪魔は出来ないとは言っても、幾万の細菌を養成して、これを四方に伝播するに至っては、看過出来ない。
長い因襲を改善するのは容易では無いと言っても、刷新に一歩を加えるべきは目下の急務である。「糞も味噌も一所なり」の一句は、鮮_人の衛生状態を形容する適切な言葉であって、食膳に配すべき茶碗に子供の尿を受ける程度は、まったく普通の事であって珍らしくも無いと聞く。
ここに一つ面白い話が有る。総督府が法令を発して、「朝鮮_人は腹と尻を出して外出するけれども、これは衛生上において最も良くない事だから、暑い時でも止めなさい。これに反対するものは、科料に処す」とした。
すると間もなく鮮_人の一群は警察署に押し寄せ、「これは怪しからぬ法令だ、総督府は衛生の意味を知っているのか。朝鮮_人が尻を出し腹を出すのは数百年来の習慣で、どんなに寒い日であっても是を覆う(服を着る)事は無い。もし(総督府の言うように)腹と尻とを温めたなら、かえって下痢を起し、腹痛となるだろう。どうかこのような法令は、撤廃してくれ」と哀願しに来た。
警察官もこの言い立てに腹を抱えて失笑したりと、衛生思想が幼稚な事はだいたいこのようだ。とてもまともに相手出来ない。