大阪朝日新聞 1930.5.23(昭和5)

朝鮮統治と開け行く産業

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朝鮮_人は多年の誅求政治から解放されて、今や文化政治の恵沢に浴し、内鮮融和の度は、日に月に増し総督政治を謳歌している、尚極力産業を開発して各人の富力を増進し、生活程度の向上に努められている、併合当時僅かに三億円の生産増額であったものが二十年後の今日では十八億円という六倍の高に上っている、これを見ても如何に産業が開発され朝鮮_人の幸福が増進されつつあるかが分る、その他衛生、医療、測候、河川、港湾などの社会的施設も現在支那よりは平均してよく整頓している、これ一つに内鮮融和協力の賜と言わなければならぬ。

人口と面積

朝鮮はどれ程の大きさがあるか、面積が一万四千余方里、台湾の六倍、本州より少し小さい、人口は千九百万、内地人が僅かに四十万人である、満洲にしても四五十万、台湾で五万と云うから、日本の植民政策の振わぬのも無理はない。失業問題や、食糧問題で悲鳴を上げて居る癖に出て行かぬのが日本人の国民性である。

産業の発達

農産
朝鮮の農業は近来内地人の移住増加と、総督政治の指導と奨励で、一般の農業は次第に改善され農産物の収穫は逐年増加し、最近年産額十三億円近くで総生産額の三分の一を占めている、この上産米増殖が成功すれば実に大したものである。

水産
何しろ海岸線が一万余哩、寒暖二潮流を有し絶好の漁場地であるだけに、年産実に一億二千万円に達している。殊に海苔事業は将来有望で現に年産二百万円、これが原料となって浅草海苔に化けている、この予想で当局も力瘤を入れている。

工業
朝鮮の工業は往昔は発達した時代もあったが、併合当時に在っては日常生活の必需品すら大部分輸入品を以て充当せられる位であった。その後当局は工業振興に関する施設計画をなし専らその発達を促した結果、技術の進歩、製品の改良、産額の増加を来し、一方内地実業家にして朝鮮における工業経営に着目する者次第に増加し大規模の工業を見るに至った。明治四十四年に三千万円に過ぎなかった工産も昭和二年末にはその約十二倍三億六千余万円の巨額に達している。

鉱産
鉱産物は蓋し無尽蔵である、石炭を始め鉄鉱、金、銀、鉛、亜鉛、水銀、硅砂、黒鉛など主なるもので年総産額二三千万円に達している、特に石炭は頗る豊富で今日迄に調査済みの炭田だけでも十億噸以上を蔵している、然もその大部分が北鮮地方にある、平壌の無煙炭は海軍の御用を努めて有名である、日本の石炭の寿命は五千年といわれている、日本の石炭問題も朝鮮で解決出来る訳である。次に朝鮮で解決される問題は日本の石油問題である、それは石炭は出ないが液化原料として好適の石炭が豊富だからである、総督府では目下試験中で今その機運に向いつつある、然もかかる事業に必要な水力電気が低廉な費用で容易に得られ、労働賃金も安いから一層有望である。

林産
朝鮮の宝庫は何と言っても北鮮地方でそれが未開拓の富源である、その宝の第一は木材である、八百何十哩の国境即ち下関から宇都宮に至る位ある、この鴨緑江、豆満江の二川の流域には千古斧鉞を入れない大森林があって十億尺締の木材を蔵している、この豊庫で日本の材木問題も解決出来ると言われ、総督府では営林署を特設して林務を管理し、昭和六年には九百万円の森林収入あらしむる予定である、国境拓殖森林鉄道とでも言うべき線路が緊急問題として朝野に叫ばれている、遠からず着手されるに至るであろう。

商業
朝鮮_人の商業取引は旧式で幼稚で、内地人及び支那人の商業者に比べると資力、信用、取引高、経営法、店舗の構造等に於て著しい遜色がある、近時市街の発達に伴って稍や進歩の跡を見るに至った。
内地人の商業は併合以来諸般の設備の発展と共に今や都鄙の別なく到る所にその勢力の伸びて居ることを認めることが出来る、貿易状況も、累年輸移入超過を続けていたが、大正十三年に至って初めて輸移出超過に転じたことは注目に値する。

産米増殖計画
現在朝鮮の米は年々一千五百万石以上その内五百万石を内地に移出している、これをもっとふやして内地の食糧問題を解決しようとするにある、即ち大正十五年度以降十二ケ年計画で毎年三万町歩、合計約三十五万町歩の土地を改良して八百二十万石の増収を図らんとする、これが所謂産米増殖計画である。

朝鮮の鉄道網
朝鮮の富源は交通機関の不備のため放置されている、そこで目下の急務は何よりも鉄道の普及である五十二議会で十二年計画案が通過し三億二千万円という尨大な予算を以て昭和十三年度中には全鮮に鉄道網が張られ、その暁は朝鮮の産業は愈活躍時代に入るのである、続いて吉会線の完成と共に、満蒙の豊富な物産を吸収して直接裏日本へ輸送し、我国と満蒙との経済的関係が一層密接になる、裏日本の面目一新も遠き将来ではあるまい。
現在国有一千四百哩、私鉄五百余哩、道路は併合後特に意を用い現在一、二、三等道路の総延長四千四百哩、四通八達自動車の通せない所はない、海運も関釜連絡八時間、釜山、仁川、元山、木浦、群山、城津、清津、雄基等の諸港から各地に定期、臨時の便がある。

朝鮮の財政向き
昭和四年の予算高二億四千余万円内地台所の先ず七分の一、この中経常歳入が一億九千五百万円、臨時歳入が四千七百万円、主なる歳入で租税が四千四百万円、専売収入が三千八百万円、これは煙草と人参である、鉄道収入が七千三百万円で、結局一千五百万円を不足して内地から補充されている。
歳出の方で一番金を食うのは鉄道で、経常部の方で五千八百万円、臨時部の方即ち建設や改良費に二千万円を要する。
曩に慶尚南北道、平安南北道を紹介した如く残る各道に就いての産業を概観することとする。 (以下略)