七人の侍と百姓達 | 3571|共感0
46961| JAPANwatcher1 | 2005.10.30 21:59:02
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 本日、久々に黒澤明の名作「七人の侍」を鑑賞した。
 黒澤明のDVDは晩年の作品を除き殆ど揃えているのだが、定期的に見返すのはこの作品と「隠し砦の三悪人」だけだ。誰もが楽しめる娯楽作なのだが、しかし何度見ても新しい発見と感動があり、まさに映画とはこういう物だと思う。ここの所ギャグスレをいくら建てても、冗談を理解しない良識派の管理人さんが削除して下さるので、たまには少し真面目に、今回思いついた事をつらつら書いてみたいと思う。


 良く、黒澤映画の解説で「彼の作品の根底に流れるのは暖かい視線とヒューマニズムであって」云々というのを見かけるが、とんでもない勘違いだと個人的には思っている。黒澤映画の主人公達が庶民に見せる優しさ、その精神は例えば近世のイギリス貴族に見る寄付や福祉事業であろう。
 それは哀れな庶民に対する傲慢と紙一重の労わりや施しであり、現代社会に溢れる、ベタベタとした甘ったるいヒューマニズムなどでは断じて無い。黒澤明の他の作品「天国と地獄」「赤ひげ」等をご覧になった方には、この感覚は頷いていただけると思う。
 そして、この作品にあっても、それは例外では無い。本作における百姓達の描き方は、いわゆる娯楽映画には有るまじきまでに辛辣だ。



 「七人の侍」に登場する百姓の行動を見てみよう。
 雇った侍達が村に来ても信用せず、娘を隠して家の戸を閉ざす。そのくせ危機になると自ら戦う努力もせず侍達に頼ろうとし、自分の家が防衛線の外になれば団結を反故にして反抗する。落ち武者狩りで侍を突き殺し、得た物資を床下に密かに蓄える。

 彼らは決して、命を賭けてまでして救うべき、愚直な善人では無い。この突き放した描写、そして愚かさと勇気の無さ故の貧しさと哀れな境遇。おそらくこれが超越者・黒澤明に見える、我々庶民のリアルな姿でもあろう。(百姓達を救おうかどうか迷う侍達を決心させる、「こんな百姓にいったい誰がした?侍だよ。侍がしたんだよ!!」という名台詞は、おそらく黒澤明の本音ではあるまい。)



 対して勘兵衛率いる侍達は、能力・精神共に優れた「超人」であり、百姓達と立場を共有したり、ましてやいかに零落しようとも、これと置換される事など絶対に不可能な英雄である。侍達はあくまでも哀れな庶民を救う超越者であり、彼らを描く監督の視線も、共にそこにある。

 対立概念ですら無い、絶対的な優越者と非支配者。この作品においては、侍は侍、そして百姓はどこまでも百姓なのだ。ただし、ここに三船敏郎扮する菊千代を登場させるのが黒澤のうまい所でもあり、ずるい所でもある。
 菊千代は百姓の心と侍の強さを併せ持つキメラであり、侍達と観客としての我々の意識を繋ぎ、商業芸術として成立させる為の便宜上の創造物だからだ。劇中、彼に心を動かされた侍達は村を守りきる事を決心するのだが、黒澤明としては本来菊千代という存在は有ってはならないのであり、あのラストは必然だったのだろう。











 さて、ここからが今回思いついた事なのだが・・・この侍達と百姓の関係こそ、100年前当時の日本の指導者達と半島とのそれでは無かっただろうか。自ら救おうとはせず、困れば事大という根性。近代化する意欲も能力も欠如し、モラルも疑わしい。その上ロシアという強大な野武士に狙われている。
 そして困った事には、地政学的にも無視するには微妙なポジションだ。この連中が、我が国の隣で助けを求めつつ迷走している。
「えらい物を抱え込んでしまったな」
「さて、弱ったぞ」
「だが・・・見殺しにも出来まい」

 その後我々の先祖が下した苦渋の末の決断を、批判はすまい。しかし半島の住民達は、100%の善意からとは言えずとも、結果として自らの為に戦ってくれた侍達に、尊敬の念はおろか土饅頭の墓すらも造る気が無い事は確かなようだ。



 酔いも手伝い、思いつくままに駄文を書き流してしまったが御容赦願いたい。兎も角、考え抜かれた見せ場とカメラワーク、最高の役者、そして緻密なシナリオを持つこの作品は、日本映画史上ベストと迷い無く言える大傑作だ。未見の方は是非ご覧になっていただきたい。
 最後に上掲の作品をご存知無い方の為、参考ウェブサイトを紹介しておく。

【「七人の侍」(ウィキペディア)】←クリック

【「天国と地獄」】←クリック

【「赤ひげ」オフィシャルサイト】←クリック

何にせよ、侍達が後日百姓達に、謝罪や賠償を延々と求められる事態は無かったようで何よりである。




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chirigumo|10-30 22:02
本題からそれて申し訳ないのだが、最後に若者が死んだ方が良くないか?それとも菊千代との対比だろうか?
watcher1|10-30 22:07
(ネタバレ発言 未見の方は読まないで) 菊千代のラストは当然最初から構想にあったろうから、そこまではやらないだろうね。話が暗くなるだけだし。
watcher1|10-30 22:09
ちなみに、この作品の勘案「荒野の七人」だと彼の役の男は、おねーちゃんの為村に残る。それも甘すぎていやだなw去っていく男の傍らで田植えに励むほうがオチとして良いと思う。
guevara|10-30 22:26
なかなか鋭い指摘ですね。「おらたちも強い侍を雇うだよ」と叫んだ高堂国典扮する長老は、朝鮮民 조선민の世界では、李完用にあたるということでしょうか。
kumo|10-30 22:26
ホルスト・ブッフホルツは、三船と木村功を合わせた役でしたね。そのためブラッド・デクスターという金のために動くキャラクターを創った。(と記憶しています)
chirigumo|10-30 22:26
私が映画監督なら若者と村娘の恋をもっと熱く描いて最後に殺すのだが。そうかもね。失礼しました。
kumo|10-30 22:29
ラストはあれでいいと思う。映画の中で菊千代は成長した。彼の死は、成長の果ての昇華なのだ。(意味が通じるかな…)
guevara|10-30 22:29
いずれにせよ、朝鮮民 조선민の方々の社会では、日本文化、特に世界に広く認知されている日本文化の紹介については、バイアスがかかっております。黒澤明のことなど、どれほどの朝鮮民 조선민が、情報を得られる立場にあるのか、期待しないほうがいいでしょう。大昔から、暗黒半島と、..
guevara|10-30 22:31
大昔から、暗黒半島と、文化を楽しむ我々の間には距離がありすぎるのではないでしょうか。
kumo|10-30 22:31
木村功は、結局成長しないままだった。死んでも観客は、「可哀想だね」以外の感想は持たない。
watcher1|10-30 22:32
黒澤明は若者に冷たいしなwww
kumo|10-30 22:36
若者に冷たい>そうかなあ。「赤ひげ」では、加山雄三の成長を温かく見守った。「用心棒」のラストで、夏木陽介を斬らなかった。
watcher1|10-30 22:40
ちなみに、「七人の侍」では宮口精二、「荒野の七人」ではロバート・ボーンがお気に入りです。ロバート・ボーンはなんとロジャー・コーマンの「宇宙の七人」にも登場ww
watcher1|10-30 22:41
kumo>>あれ夏木陽介だったのね。知りませんでしたw
kumo|10-30 22:41
「野良犬」では、木村功を決して凶悪な人間として描いていない。むしろ時代の犠牲者として描いている(と記憶…)。
watcher1|10-30 22:45
「野良犬」そうかな・・・あれが「天国と地獄」の山崎努の原型では?しかし白黒画面なのに、あんなに暑苦しいのも凄いよな。
watcher1|10-30 23:00
しかし、kumoさんの評論は鋭いね。
prozokukoku|10-30 23:18
菊千代は鄭大均か?
kumo|10-30 23:30
「野良犬」の木村功は逮捕されて泣き出してしまう。一方「天国と地獄」の山崎努は自殺を図る。刑務所に面会に来た三船に対して、反省の色は見せない。他の黒澤作品には見られない悪人中の悪人だ。
kumo|10-30 23:32
「用心棒」や「椿三十郎」の仲代達矢は、悪人というより好敵手(ライバル)。以上、記憶に頼って書きました。間違いがあったら謝罪しますが、賠償はいたしません。
kumo|10-30 23:43
ちなみに、私も「七人の侍」では宮口精二がお気に入り。「荒野の七人」では、同じキャラクターのジェームズ・コバーンかな。馬で逃げる野党を、遠く後ろから撃つ。「すげぇ!」と驚くH.ブッフホルツに、「いや、ミスった。馬を狙ったんだ」 カッコイイ!
watcher1|10-30 23:45
スピーク・ラークww
kumo|10-30 23:56
watcher1様>あ、見られてしまった。晩酌の酔いにまかせて、いろいろ私見を書こうと思ったけど。やめた。
watcher1|10-30 23:58
止めないでくださいな。是非是非。
kumo|10-30 23:59
すみません。かなり酔っているので、議論を吹っ掛けられても、論理的には答えられないから、勝手に書きますね。
kumo|10-31 00:03
記憶に寄れば、確か1976年。別冊洋画秘宝という雑誌が、突然「日本映画が好き!」というタイトルで、邦画の特集をした(この雑誌は、素晴らしいないようだった)。当然ある評論家(名前失念)が、この中でこの映画を取り上げた。
kumo|10-31 00:04
「荒野の七人」が公開された時、佐藤忠夫が、「『七人の侍』の農民より、人間扱いされている」と書いたそうだ。確かに、そう見える。
kumo|10-31 00:06
しかし、19世紀のメキシコ人と16世紀の日本人を、同じ土俵で比べていいものか。
kumo|10-31 00:10
リアリズムを追及する黒澤なら、当然、農民を弱い存在に描くだろう。しかし、完全な弱者として描いたのだろうか。
kumo|10-31 00:14
否、農民たちが意見をまとめられず、向かった先は長老の小屋。長老は言った。「やるべし」。この長老の存在こそ、農民の強さだ。(そろそろ酒がまわってきて、さっきまで書こうとしていた事と違ってきているような気がする)
kumo|10-31 00:19
watcher1様>まだ途中なんですが、昔の雑誌の内容を紹介しただけで疲れてしまいました。ちょっと、休みます。すみません。
kumo|10-31 00:20
それにしても、漢字の変換ミスが目立ちます。
kimchinko|10-31 00:33
一言・・・。 Kurosawa 映画の根底にあるのは・・・、リアルと向きあった 「厳しいヒューマニズム」 だと思いますよ・・・。
kumo|10-31 00:36
ああ、問いかけないでください。酔っ払いには答えられません。  …と、書きながら、反論を考える。
kumo|10-31 00:39
「用心棒」は、ヒューマニズムは強くなかったな。ヤクザはぶった斬るし。あれは大型娯楽時代劇。←これが酔っ払いの精一杯の反論です。
guevara|10-31 00:40
別冊洋画秘宝ですか、覚えておかなければいけないのですが、覚えていません。佐藤忠夫は、無学歴、農民、工員といったものへ(もしくはそういう言語に)、異常にシンパシーを感じておられましたね。私の個人的感想ですが、出演した高堂国典、左ト全、土屋嘉男などからみて、村人の描き方は、荒野の七人よりも繊細だったとい..
guevara|10-31 00:41
荒野の七人よりも繊細だったという気がいたします。
kumo|10-31 00:43
guevara>すみません。「別冊映画秘宝」だったと思います。表紙は、リメイク版の「キング・コング」が、貿易センタービルにまたがるイラストでした。
guevara|10-31 00:45
私も酔っ払って思い出しております(笑)。70年代末、浅草東宝ほかのオールナイトで、黒澤や植木等のサラリーマン喜劇などをよく観ておりました。大型娯楽時代劇ですね、たしかに。当時、朝鮮民 조선민の方々の国は、全くの言論弾圧、非民主主義国家でした(今でも変わりませんが)から、話題にはつい..
guevara|10-31 00:47
話題にはついていけないでしょうね。別冊映画秘宝ですか・・。そういえば、あの頃、浅草東宝では、アンケートに答えると、郵便葉書で、次の上映作品の紹介を自宅に送ってくれました。懐かしい時代です。
kumo|10-31 00:49
ワードを開いて続きを書いていましたが一言!ホント、懐かしいじだいでしたねぇ。
kumo|10-31 00:51
名前は(酔っているから)思い出せませんが、浅草には戦争映画専門の小屋もありましたね。休憩中は軍歌が流れてました。
guevara|10-31 00:53
どこかなー、東京クラブでしょうか。サムペキンパーの映画などよくやっておりましたから・・。
kumo|10-31 00:54
そう、浅草東京クラブ!
kumo|10-31 00:58
ヨーロッパ戦争での、ドイツの残虐さを描いた白黒の「13階段への道」。70年代のイタリア猟奇映画の元祖かな?
guevara|10-31 00:58
やはりそうですか。ただ、あそこは、けっこうマッチョな人間も多くいて(笑)、何も知らない私は、最初、前列の端のほうに座って・・・、早々に退散したことを覚えております。それ以後は、後の席で平和に鑑賞しておりました(笑)
guevara|10-31 01:01
おかげさまで、懐かしい思い出に浸れました。日曜の夜、お酒を飲みながら、たまにはEMPTY KOREAの掲示板を覗くのもいいですね。
kumo|10-31 01:02
もしかして当時、お互い近くの席に座ってたりして。(笑)
kumo|10-31 01:03
「EMPTY KOREA」ですか。私は「ネバー・エンジョイ」と読んでいます。(笑)
guevara|10-31 01:06
kumoさん、その可能性は意外と高いかも(笑)。私は、映画好きの大学生でしたが、映画のときはだいたいいつも一人で観に来ていました。映画以外は多くの友人達と飲み歩いておりましたが・・。ただ、大学のシネ研やシナリオ研究会の連中とは、青臭くて今ひとつ意見が合いませんでしたね。
guevara|10-31 01:07
「ネバー・エンジョイ」ですか(笑)。略して、NAVERですね!
kumo|10-31 01:13
私も一人で見に行ってました。映画館の閉館の時に見に行くと、映画マニアだらけ。テアトル東京、上板橋東映。懐かしいな。そういう所で業界の人と知り合ったりしました。今は昔。
guevara|10-31 01:16
池袋文芸地下、五反田TOEIシネマ、鵜の木安楽座、飯田橋佳作座、牛込文化、高田馬場東映パラス・・・、いくらでも思い出されます。kumoさん、懐かしい思いに浸らせてくれて、ありがとうございます。
kumo|10-31 01:17
略して、NAVERですね!>いいえ、「NEVER(決して〜ない!)」です!
guevara|10-31 01:18
私は、歌舞伎を中心に、EMPTY KOREAにスレッドを掲載しておりますが、いずれまた映画のこともスレッドにします。そのときは、よろしくお願いいたします。
kumo|10-31 01:18
「鵜の木安楽座」以外は全て行きました。どこで何を見たかも、しらふなら答えられますよ!ああ、楽しい!
kumo|10-31 01:19
guevara様>こちらこそ、よろしくお願いいたします。
guevara|10-31 01:19
決して文化が無い!決して楽しめ無い!決して言論の自由が無い!の、朝 鮮の無い無いづくしですね。
guevara|10-31 01:21
そういえば、私にも過去に映画のスレッドがありました。アップローダーの関係で画像は消えていますが・・。http://bbs.enjoykorea.jp/jphoto/read.php?id=enjoyjapan_13&nid=29112&work=search&st=writer&sw=guevara&cp=2
guevara|10-31 01:22
kumoさん、こちらこそまたよろしくお願いいたします。お互い、しらふのときにまた会いましょう(笑)
kumo|10-31 01:24
ああ、「東京物語」!でも写真が、リロードしても見られません。orz
kumo|10-31 01:26
guevara様>ええ、しらふの時にお会いしたいです。(でも、最近晩酌が過ぎる。トホホ…)
kumo|10-31 01:31
と、言う訳で、ダウンする前に、ワードに書いたことをアップしておきます。私見、「果たして、農民だけが弱い存在だったか」(watcher1様の論とはかけ離れていくような… これも酒のせい)
kumo|10-31 01:31
七人のうち生き残ったのは三人。残りの四人は皆、銃で撃ち殺されています。侍たちは刀と弓矢で銃と戦い、そして死んでいきました。銃は新時代の象徴。それに対し、刀で戦う侍たちは、時代に取り残された者たち。(ここまでは、いい)
kumo|10-31 01:32
農民たちは、侍たちが去った後も、普段と変わらぬ生活(田植え)を続けます。黒澤は決して侍を超人的な存在として描いていません。「勝ったのは、あの農民たちじゃ」 その通り!侍が勝ったのではありません。これからは官僚化された士族の時代で、浪人たちは滅んでいくだけなのです。(なんか、論点がずれてないか?)
kumo|10-31 01:33
だから、この作品を見終わったあとは、一抹のカタルシスを感ずるのです。←以上、本来書こうと思った結論とは全く違いますが、酔ってるから仕方が無い。謝罪はしますが、賠償はしません。では、お休みなさい。明日は仕事。(酔ってるから、これで良し!)
kumo|10-31 01:35
ああ… 明日しらふになって、これを読んだら、削除したくなるだろうな。でもguevara様との対話は楽しかった。しらふだったら、もっと楽しかっただろう。
guevara|10-31 01:53
私もすごく楽しかったです。kumoさん、またよろしくお願いいたします。私も、あと一杯飲んだら(笑)、寝ます。それでは、おやすみなさい!
kumo|10-31 01:59
お休みなさい。
ama10com|11-23 17:29
酔っ払いが集うスレはここですか?wこういうスレもいいね
if 第24回★「もし日本が6・25に参戦していたら」 [1]
- 七人の侍と百姓達 [70]
北韓 [1]