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記憶の障害 3/31/04
酒鬼薔薇聖斗の説明をするには先ず、私を含めた自閉症の記憶のしかた(記憶の構造)について
述べる必要がある。
私は、3歳の初め(2才の終わり)の記憶から、小学校、中学校と幼少期の記憶が克明に残っている。
転校により、普通の子供より遙かに多くの同年代と知り合うことが出来たが、
後にも先にも私と同じように、幼少時の記憶を克明に持っている人間に出会ったのはたった一人、
私の妻だけである。
私ほど執拗な記憶では無いものの、妻も実によく子供の頃の事を覚えていて、
そのエピソードは、20年以上話し合っていても尽きることが無い。
この二人が、ほぼ同時にアスペルガー症候群という診断を受けたことは偶然ではない。
つまり、自閉症は記憶システムが定型発達(普通の人)とは違うのだ。
ここで脳機能をパソコンに当てはめて見る。
パソコン
メインメモリ (ワーキングメモリ)作業命令を蓄えておく。電源を切ると消える。
システムメモリ マイコンの設定(日付、時刻など)を蓄える。電池が切れると消える。
電池の寿命は4年。
ハードディスク 書いたデータは消えない。
定型発達(普通の人)
メインメモリ 仕事の手順、電話番号などを一時的に記憶する。
必要とする期間は、忘れない。
嫌なこと(自動的に忘れる)
楽しいこと(自動的に楽しい気分だけ残す)
システムメモリ 身繕い、あいさつ、親しさの度合い、など社会に順応して徐々に
変化するデータを記憶する。年単位の記憶。
ハードディスク 絶対忘れられない出来事。一生忘れない衝撃的なこと。
普通なら自動的に忘れられる嫌なこと、PTSD。
自閉症(アスペルガー症候群)
メインメモリ 一時的記憶。電源の配線が切れかかっているので、
しょっちゅう電源がとぎれ、記憶が消えてしまう。
システムメモリ メインメモリの調子が悪いので、ここになんでも記憶させる。
くだらないことでも、電池が切れる4年も記憶する。
ほんとうに必要な、身繕いや、あいさつや、親しさの変化を記憶する
スペースがない。
ハードディスク システムメモリはすぐいっぱいになってしまうので、自動的に
一生記憶するべき事として、くだらないことまで記憶してしまう。
だから、やたら記憶力だけはいい。
しかし、本来なら自衛として忘れなければいけない嫌な事も
無条件で記憶する。
つまり毎日がPTSD状態。
余談ながら、だからTBSでやったちゃちなドラマ「君が教えてくれたなんとやら」のように
主人公が抜群の記憶能力を持っていながら、PTSDを併せ持ち、絵を見たら過去の事件を
思い出すなんてのは、全くつじつまが合わないんだよね。
どちらが正しいかって? もちろんこちらの話が正しい。
なんと言っても、あのドラマは演技性人格障害の「演技」を真に受けた連中が作った
ドラマだからね。
(もえちゃんだけはリアルだったけど)
さて、こんな脳を持った子供が家族の中に一人いたらどうなるか。
私は3人姉弟だが、姉たちは何とも思わない事や、すっかり忘れていることでも
私だけは克明に覚えている。
PTSDは、何かのきっかけ(トリガー)で過去を思い出すかもしれないが、
私たちは、過去の事柄と今まさにリアルタイムで繋がったまま。
なにもきっかけ(トリガー)が無くても過去のエピソードが、その時の感情と映像と共に
ありありとよみがえる。
まさしく、毎日、いつもPTSD状態。
さて、酒鬼薔薇聖斗の話。
私のような脳を持った子供が、子供にとってやや過酷な(本質を外れた厳しいしつけ、激しい叱責)
生育環境に置かれたとするとどうだろう。
他の兄弟たちが忘れてしまうような叱責も、からかいも、絶対忘れない。
忘れないどころか、目をつぶっても遊んでいても頭の中に浮かんでくる。
これは、定型発達の人たちには絶対分からない、大変な苦痛なのだ。
これこそが、酒鬼薔薇聖斗、誕生の一因なのである。
そして、彼と私は間違いなく同じ脳を持っているのだ。
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