家族について           10/01/03
 
自閉症は遺伝性であることは、もうタブーではない。
 
我が家の家系に、目立つカナー型の人が居ないだけで、
本質は自閉症に寄り添っている。
 
私の父は、手先が異常に不器用である。
職場では陽気であったようなので、何とか職業人として全うした。
テレビドラマを見ていると
「トール。犯人は誰だ?」
「トール。犯人はこいつだろ?」
「おい、犯人はコイツだよなあ。」
ドラマの展開を楽しむどころではない。
 
そして今から25年ほど前、
全く知られていなかった「若年性老人性痴呆症(アルツハイマー)」になった。
今は、誰でもアルツハイマーと呼ばれるが、
当時は父のように40代後半から50代に発病する人たちの事を指していた。
 
母は、私の面前で3度程卒倒したことがある。
つまり「てんかん」だ。
本人も、、又親戚筋もてんかんの事は一度も認めなかったが、
私が見た物は、「てんかんの発作」そのものだった。
 
そして、私は「アスペルガー症候群」診断を受ける。
(やがてアルツハイマーになるだろう)
 
 
妻の父は、典型的な癇癪持ちで、しょっちゅうヒステリーを起こしている。
一家の長男として生まれ、戦後、家族兄弟を養おうと頑張ったのに、
祖父が死んだのをこれ幸いと、祖母を連れ兄弟たちは家から逃げ出した。
逃げ出した先では、まあまあ仲良く暮らしていたようで、
仲間はずれにされた長男(つまり父)は、老齢になった今でも、
なにかにつけ「親は長男が見なければいけない」と
恨み言を言うように、子供に向かって言う。
 
物事の説明は、相手が何を知ってるのかお構いなしに話すので、
だいたいが、ちんぷんかんぷん。
それでも、10年も同じ事を聞いている内にやっと話の内容がつかめてくる。
 
これは、何も年を取ってボケてるのではなく、20数年前からそうで、
逆に言えば、80を過ぎた今でも、脳味噌ははっきりしているので、
60代の頃から全く変わらない。
 
妻の母は、60代からもう耳がほとんど聞こえなかったので、
その、応対の不思議さはすべて耳のせいになっていた。
 
ところが、自閉症の概念と、その行動、応対に照らし合わせると、
前述の4人の中で、最も自閉症の色合いが強いことが分かってきた。
 
しかし、人のことに頓着しないその母のおかげで、
妻は野放しで育てられ、
変な風に曲げられることなくすくすく育ち、
私が言うところの
「自閉症のサラブレッド」になった。
 
 
ここで、変なことに気がつかないか?
いくらなんだって、夫の父母、妻の父母、
みんな自閉症のグループなんて出来過ぎじゃあないか。
 
 
これがやっかいなことに、
私と妻が引きあったように、
変な人間は、変同士惹かれ合うのだろうか。
 
多分、そこには「価値観」という、
普通の人間からはみ出た部分をお互いが認め合うからではないか。
そう私は考える。
 
とにかく、家族の話は未だ続く。
 
義母は40代から耳が悪くなったと言う話だったが、
実際のところは分からない。
義母の姉は、生まれたときから片耳が聞こえず、
妻の兄は、50代に入り「突発性難聴」になった。
 
妻も、耳鳴りのような音に始終悩まされていたが、
最近、精神科で処方された薬で耳鳴りまで改善した。
 
義母から義兄、妻までみんな脳に関係しているようだ。
 
妻の叔母はパーキンソン症になり亡くなった。
 
 
またここで面白い話がある。
オリバーサックスが、「レナードの朝」の演技指導をしたときに、
役者が、「絶えず動くグループ」と「動かず固まるグループ」に分かれた、と述べた。
役割を当てはめることなくである。
 
私は、まさしく脳の特徴が現れたのだと考える。
 
「絶えず動く」脳を持った叔母は、「パーキンソン症」になった。
「固まる」脳を持った父は、「アルツハイマー」になった。
 
これは衝動性(ADHD)との関連も考えられる。
「絶えず動く」脳を持った妻は、衝動性(ADHD)も確認されている。
妻は、たしかに動き回り、家の中は本当に綺麗に掃除がされている。
ちょっとゴミが出ると、すぐ掃除機を出す。
 
ところが、夜、散らかっているゴミを見ると掃除機を出そうとする。
「ちょっとまってよ。今夜中だから近所迷惑じゃないか。」
「大丈夫。まだ早いから。」
「でもやめた方がいいよ。」
 
最近は、自分の特性に気付いているのですぐ切り替わるが、
昔は、一度やると言い出すと聞かなかった。
 
これに比べ「固まる」脳を持った私は、
一度テレビの前に落ち着くと、18時間でも固まる。
トイレも食事もしなくても平気なんだよね。
 
ところが、「衝動性」と言われるものもある。
ギルバーグがサンプリングした「ちびっこ教授」を見ると
まさしく、私の子供時代の話だ。
 
もちろん、話しかける方は、相手がこちらに好意を持っていると感じるから、
こちらからも話しかけたいだけで、
「ぼうやは、立派だねえ。」とでも言われると、
ますます図に乗って話し出す。
 
ところが「止めなさい!」と言われると、固まるのも早い。
 
動物の巣穴を見たり、昆虫の観察などは得意中の得意で、
何時間でも固まっていることが出来る。
釣りをしていても、何時間でも集中力が切れることはない。
 
 
妻は逆だ。
足元に動物がいるときに、「動いちゃダメだ」と言われると、
動いてしまう。
スプーンを持っているときに驚くと、スプーンを放り出す。
 
 
今はみそくそ一緒で「衝動性」というが、
内容は上に書いたように違うのだ。
素人判断しちゃあいけないよ。
 
 
とにかく、このように我が一族にはキラ星のごとく人材豊富なのであるが、
今気になるのが、36才のイトコである。
 
彼も又色濃く自閉症の特徴を持っている。
家業を手伝うと家に入ったが、どうも実体はあまり働かせず、
家業を廃業した今は、収入もなく、家からもほとんど出ないそうだ。
 
はてさて、彼の行く末は・・・。
 
 
 
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