久々の土幕民史料です…内地在住朝鮮_人の半数近くが居住している大阪を本場と呼んで何が悪いんやろ?とふと思った大阪府民のしゃおこーですよ。
これまでの支援
▲大阪の状況【土幕民祭り支援】▲大阪在住朝鮮_人の住宅事情【土幕民祭り支援2】【避難】▲大阪に於ける朝鮮_人の住宅紛議【土幕民調査支援3】(削除されたためテキスト版に疎開)
▲大阪に於ける朝鮮_人の住宅事情【土幕民調査支援4】▲大阪に於ける朝鮮_人の住宅事情【土幕民調査支援5】▲大阪在住朝鮮_人の住宅紛議【土幕民調査支援6】▲大阪の朝鮮_人概況【土幕民調査支援7】(削除されたためテキスト版に疎開)
予告どおり大阪市社会部調査課編纂の「大阪市住宅年報(昭和3年)」についてみていきます。

社会部報告第106号であり、奥付を見ると発行は昭和4年7月29日となっています。この報告については、実は、この調査支援シリーズの第5弾で少し出てきています。例によって表中の漢数字はアラビア数字に改めました。
二 争議
A 概観
(中略)
本期にあつて更に注目に値することは朝鮮_人住宅争議の続発したことである。次に引用する昭和三年六月二十二日の大阪毎日新聞掲載の記事は這般の事情をよく現はしてゐる。
「鮮_人の借家争議が最近いちじるしく増加した。昨年中に大阪府警察部で取扱つた件数五百三十二件しかもこれらは直接警察の手をわづらわさねばならぬ程面倒な事件ばかりだが、単に家主側と店子側が警察に訴へてきたといつた程度のものなら鶴橋署部内だけでも月百件、年にして千件以上に達するに中本署の如きも最近タツタ一日の間に十件近い争議を見てゐる。そしてこれらの争議がどう解決してゐるかといふに、無条件解決は一割あるかなしで、大部分は立退料を取つて鮮_人に有利な解決をしてゐる。甚だしいのは四五百円の立退料に五六ケ月分の家賃を無料でヤツと家をあけるなどとほとんど立退料をせしめるべく家を借りるといつた傾向さへあつて、大阪の鮮_人街を形成してゐる鶴橋 今福方面の一部家主間では昨今家主同盟をつくり鮮_人には家をかさぬといふ決議をせんとしてゐる程で鶴橋方面の家主で鮮_人に引かかつて損をしないものは一人もない。鶴橋、中本、今福の各署は毎日これが取扱ひに悩まされてゐる始末だが、原因は七分通り鮮_人側が悪いらしく、それにしても彼らに家を与へぬといふは生活上由々しき問題で、また内鮮融和の点からしても捨おかれず、警察部特高課内鮮係では大いに頭を痛めてゐる。右につき迫本内鮮係長は語る
とにかく朝鮮_人も悪い。家をかりておきながら天井板をめくつて焚いてしまつたり不潔の限りをつくして平気である。これでは家主もたまつたものではない。憂ふべきは今後の彼等で到底家を建てるやうな資力のない多数鮮_人のこと故、つひには借りやうにも貸手がなく、空しく野天を放浪せねばならぬといつた時代が来んにも限らず、当局としても多いに考へねばならぬところである。」


ここで言っている昭和3年6月22日付の大阪毎日の記事とはこのようなものです。上記記述と重複するのでテキストは省略しますね。
では、引用を続けます。
以上の如き次第であるが、更に港区船町及び小林町のバラツク無断建設問題もあり、彼等は年々増加する傾向を有するので問題は更に重大といはねばならぬ。
大阪府在住朝鮮_人累年増加表 |
|
男 |
女 |
計 |
大正元年末 |
246 |
2 |
248 |
大正5年末 |
749 |
13 |
762 |
大正10年末 |
6,168 |
1,252 |
7,420 |
大正14年末 |
25,795 |
6,065 |
31,860 |
昭和3年6月末 |
33,775 |
11,358 |
45,133 |
とにかく該問題の解決は一朝一夕で出来るものではなく、彼等の生活状態を直視しよく彼等を理解した上でなければならないこと勿論である。当課にあつても問題の重要性に鑑み、先きに「本市に於ける朝鮮_人生活概況」と題する一小冊子を発表したから、ここには重複を避けるため詳細には述べないが、特志の方は同書を参考せられんことを切に希望する。
「本市に於ける朝鮮_人生活概況」については
前回見ましたが、港区船町と小林町のバラック無断建設についても載っていましたね。やっぱり問題になっとったんかい。
更に住宅争議の深刻化に伴つてこれを悪用した新犯罪を惹起せしめた。借家を片つぱしから借受け手附金を渡しその家屋の表に「全国借家人同盟会本部」と大書し敷金家賃を一切支払はず、立退を要求すれば、この家を借りるためには全国同志が関係してゐるから、せめてそれらへの通信費でも出して貰いたいと五六十円づつ巻き上げた家主恐喝事件の如き、又内地人を手先に使つてその名義で家屋を借受け、家主が朝鮮_人をきらひ家屋を貸さない事実を逆用して、立退料をせしめ、かくの如く転々と移転しては同一事実を繰返す朝鮮_人の如きその最たるものである。かくの如き犯罪の発生はまことに遺憾のことであるが一面から見るとこれも争議深刻化の副産物表徴ともいひ得るであらう。


朝鮮_人は善管義務を守らず家賃も払わないので貸さない→それを逆用して強請タカリをする→そういうことをするから朝鮮_人には家を貸さない、と負のスパイラルです。
「争議深刻化の副産物表徴」とあるように、大正末期から昭和初期の不景気は、内地人・内地在住朝鮮_人(以下「内鮮_人」)双方に平等に借家難と住宅争議を引き起こしたわけですが、これまで見てきたように、内鮮_人の場合、不況や引き下げられない家賃といった一般的な問題に加えて、善管義務の不履行や契約違反といった彼ら特有の問題があり、それがついには犯罪まで惹起していたということがわかります。家主としては、こんな事態を招くような連中に家を貸す気にはなれへんわな。善良な内鮮_人は同胞の行状のとばっちりをくうわけやけど、そらしゃーないで。
次回は「大阪市住宅年報(昭和7年版)」を見ていきます。
xiaoke☆史料調査中
