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社説2 疑念募るギョーザ事件1年(1/31)

 千葉県と兵庫県で被害を出した中国製冷凍ギョーザ中毒事件が表面化してから1年が経過した。真相は不明のまま、中国国内では回収したギョーザが横流しされ新たな被害を招いていたことが明らかになった。

 新華社通信などによると、製造元の天洋食品が回収したり出荷を差し止めたりして在庫になっていた製品を、同じ河北省に本社を置く20社以上の企業が昨年4月に購入し、福利厚生の一環として従業員に配布した。それを食べた関係者の一部が体調不良を訴えたという。

 これに先立つ2月、中国の捜査当局は中毒の原因となった有機リン系殺虫剤のメタミドホスが「中国国内で混入された可能性は極めて低い」と発表した。回収した製品に対して徹底的な検査をしないで、結論を出していたわけである。

 日中の捜査当局はそれぞれ自国での混入の可能性は小さいと発表して対立した時期があったが、今からふり返ると中国側の捜査に問題があったと判断せざるを得ない。

 中国当局は真相解明に一層力を注ぐべきだ。捜査のあり方を反省する必要もある。日中関係はますます緊密になっており、両捜査当局は協力強化につとめなくてはならない。

 いったん回収した製品が出回った経緯は理解に苦しむ。河北省の国有企業を管理する部局が指示したのだという。天洋食品の損失を他の地元国有企業の分担によって補う狙いがあったとみられるが、真相を解明して消費者の信頼を回復することこそ経営再建の王道である。

 ギョーザ事件が中国国内でほとんど報じられていないのも不可解だ。中国国内で6人の死者と30万人近い被害者を出した粉ミルクのメラミン混入事件で大々的な報道がなされているのとは対照的である。

 メラミン事件では河北省の裁判所が3人に死刑を言い渡し、共産党政権として厳しい姿勢を鮮明にした。それだけにギョーザ事件への対応のお粗末さが際だつ。

 昨年1―10月の中国からの加工食品の輸入額(ドルベース)は前年同期に比べ31%落ち込んだ。ギョーザ事件の真相が解明されない限り中国からの輸入食品に対する日本の消費者の不信と不安は続くだろう。

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