日曜救急外来に開業医 宮古医師会が県立病院に派遣

宮古病院の日曜救急外来で患者を診察する佐藤医師
 岩手県宮古市で、地域の基幹病院と地元医師会が連携し、医療体制を守っていこうと試みている。宮古医師会は昨年12月から、県立宮古病院(387床)の日曜救急外来に応援の医師を派遣。医師不足という地域医療の深刻な危機を、地域全体のサポートで乗り切っていく取り組みだ。(宮古支局・阪本直人)

<初期診療手伝う>
 医師会からの診療応援は現在、市内の9人の開業医が分担する。1月は3日間実施、2月は2日間、3月は4日間の応援を予定している。今月18日は外科の佐藤雅夫医師(60)が宮古病院を訪れ、日直の医師2人とともに午前9時から午後5時まで救急外来を担当。この日の26人の外来患者のうち、風邪など初期診療の7人を診察した。

 佐藤医師はかつて宮古病院に12年間勤務し、副院長も務めた。それだけに勤務医の負担の大きさを熟知している。「日直は病棟の回診と救急を兼ねている場合が多い。私がいた時より医師の数も減り、一人一人の負担は増している。初期診療だけでもわれわれが手伝えば手助けになる」と話す。

 宮古病院の休日の救急外来には1日平均約40人が訪れ、その7割は軽症の患者だという。

<6年で10人減少>
 今回の取り組みの背景には、宮古病院の医師不足の深刻化がある。2003年に47人いた同病院の医師数は年々減り続け、現在は常勤医33人と研修医4人の計37人。循環器科は07年7月から常勤医不在の状態が続く。

 さらに、年間約1万5000人の救急患者がある宮古病院では盛岡市へ転院搬送するケースも多い。07年度は1年間で119件、昨年度は4―12月で105件の搬送があった。基本的に宮古病院の医師1人が付き添うため、勤務医の負担が増えるとともに、病院の診療体制にも影響が出ていた。

<市とも関係強化>
 こうした状況から、宮古病院は宮古市や宮古医師会と連携強化を模索。宮古市も昨年12月から市新里診療所の循環器科の医師を週1回、宮古病院に派遣し始めた。同病院の菅野千治院長(62)は「医師不足で基幹病院の機能が落ちれば、地域全体の医療を守れなくなってしまう。病院と医師会、行政が地域医療を守るという共通の認識を持てたことが大きい」と言う。

 宮古医師会は4月以降、宮古病院への救急外来の応援診療を毎週日曜に強化する。このほか、市の休日急患診療所も現行の2人体制から1人体制に減らしながらも継続する。医師会の副会長でもある佐藤医師は「岩手県北や沿岸には開業医自体が少なく、かつ高齢化している地域も多い。こうした取り組みがどこでも可能なわけではないが、県立病院と開業医がうまく機能分担してやっていければいい」と話す。

 地域を挙げての取り組みについて、自身も3年前に宮古病院で心臓の手術を受けたという宮古市町内会自治会連合会の岩間晋一会長(81)は「お世話になった循環器科の先生もいなくなり、宮古病院が大変な状況にあると思っていた。病院と医師会の連携がより深まれば、われわれ患者側も安心できる」と話している。
2009年01月31日土曜日

岩手

社会



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