ヤミ金グループの取り立てを苦に、大阪府八尾市の夫婦ら3人が心中した事件をめぐり、遺族2人がグループの統括者らメンバー8人に慰謝料など約7700万円を求めた訴訟で、大阪地裁は30日、計約4800万円を連帯して支払うよう命じる判決を言い渡した。高橋文清裁判長は「取り立ては客を精神的に追いつめる過酷なもので、逃れる手段が死のみだと夫婦らが思うのもやむを得なかった」と述べ、夫婦2人の自殺に対する責任があると認定した。
判決によると、03年4月にヤミ金融「アクセス」から計3万2160円を借り入れた女性(当時69)はグループのメンバーに「殺すぞ」と脅されて、すでに完済しているにもかかわらず支払いを求められ続け、合計33万7千円の利息を払わされた。同6月、「追いつめられてどうにもならなくて」と記した遺書を残し、夫(同61)、兄(同81)とともにJR大和路線に飛び込み自殺した。
判決は、恐喝などの罪で実刑が確定している取り立て役の男ら7人について「過酷で違法な取り立てを実行した」と指摘。さらに、統括者の川口高弘受刑者(36)=出資法違反(高金利)の罪で懲役1年10カ月の実刑が確定=については、収益を分配する立場だったことなどから、配下の男らの不法行為にかかわる使用者責任があると認定した。
そのうえで「メンバーは客に恐怖を与えて追いつめ、逃れる手段が死のみと思うのもやむを得ないと認識しており、夫婦の自殺を予想できた」として取り立てと自殺に因果関係があると判断。一方、女性の兄については「支払いを援助していたことをメンバーが知っていたとは認められない」として自殺への責任を認めなかった。
この事件では8人のほか、グループのトップだったとされる亀井浩次被告(41)が昨年11月に逮捕され、貸金業規制法(現・貸金業法)違反などの罪で起訴されている。