国宝「燕子花図」
さる11月5日,都内の根津美術館に行ってきました。
この根津美術館,国宝の「燕子花図」屏風を持っていることで有名です。
もちろん常設ではないのですが,このたび約1ヶ月の間,
「燕子花図」および作者の尾形光琳のコレクションを
特別展として展示していました。
この伝統文化板にはその筋 (日本美術) に造詣の深い方がたくさんいらっしゃいますので,
敢えてわしがスレッドをたてることもないのですが,
実物を見て,わし自身が素直に感動したので掲示させていただきますw
■ 豆知識
★ 尾形光琳 (OGATA Kohrin) (1658-1716)
日本の近世を代表する画家,工芸意匠家としてその名を知られています。
絵画をはじめ、蒔絵,漆工,陶芸,染織とあらゆる分野で活躍した人です。
絵画性と装飾性とが高い次元で均衡する光琳芸術は,明治以後の近代日本画のみならず,
西欧のジャポニスムにも少なからぬ影響を与えました。
1658年、京都の呉服商雁金屋 尾形宗謙の次男として生まれる。
尾形家の先祖は、足利義昭に仕える上級武士であったといわれるが、正確なところはわからない。
30歳の時、父の死去に伴い家督を継ぐが、生来遊び人であった光琳は遊興三昧の日々を送り,
相続した莫大な財産を湯水のように使い果たし、弟の尾形乾山からも借金するような有様であった。
画業に身を入れ始めたのもこうした経済的困窮が一因。
大画面の装飾的な屏風絵から、水墨画まで作風は多彩だが、どの作品にも都会的センスとデザイン感覚があふれている。
弟の乾山との合作による陶器の絵付け、手描き友禅の絵付け、漆工芸品のデザインに至るまで、幅広くその才能を発揮。
★ 琳派 (Rim-pa)
俵屋宗達、尾形光琳ら江戸時代に活躍し、同傾向の表現手法を用いる美術家・工芸家らを指す名称。
尾形光琳・乾山とその作風を継承した酒井抱一らを一つのグループとみなし「光琳派」、
あるいはそのルーツと考えられる俵屋宗達や本阿弥光悦らを含めて「宗達光琳派」と呼んでいたが、
現在は一般に「琳派」と呼んでいる。
背景に金銀箔を用いたり、大胆な構図、たらしこみの技法などに特色が見られる。
宗達・光琳・抱一の3人が著名であるが、狩野派や円山派といった流派と異なり、時代も違い、直接の師弟関係は無い。
ヨーロッパの印象派や現代の日本画、デザインにも大きな影響を与えている。
■ 展示物紹介
国宝 「燕子花図 」 尾形光琳筆 根津美術館
金箔地一色の大画面に、群青と緑青だけを用いて燕子花の群生を描いている。
左隻は水平線、右隻は対角線構図と対比させ、中間に花のない一叢を配置する。
二種のパターンがそれぞれ二箇所に出現する律動的な画面構成。
題材を『伊勢物語』八ツ橋にとりながら、人も橋も流れも全部省略して、
ただ燕子花の群落だけを描出する象徴的な画法は筆者の独壇場。
「紅白梅図」と双璧をなす光琳の代表作であるが、画風や落款からみて、45、6歳の頃の作と見られている。
「夏草図 」 尾形光琳筆 根津美術館
重要文化財 「白綾地秋草模様小袖」 尾形光琳 東京国立博物館
富豪の特別注文にも応えて着物のデザインをしています。
光琳小袖とか、冬木小袖(豪商、冬木家の妻のためにつくったことからこう呼ばれる)といわれるものです。
重要文化財 「扇面貼交手筥」 尾形光琳筆 大和文華館
国宝 「八橋蒔絵螺鈿硯箱」 尾形光琳作 東京国立博物館
『伊勢物語』第九段三河国八橋の情景を描いた硯箱。物語絵にありがちな説明的な要素はなく,主題の本質を鋭く追求する文様構成と装飾材料大胆な用法が見る者の目を引く。
光琳蒔絵の特質をはっきり示した彼の代表作である。
重要文化財 「銹絵菊図角皿」 尾形乾山作・尾形光琳画 大和文華館
著名な陶芸家である,弟の乾山との合作。兄弟合作結構多いようですね。
「燕子花図団扇」 尾形光琳筆 MOA美術館
団扇に貼る紙ですね。
重要文化財 「小西家資料 円形図案帖」 大阪市立美術館
染織品や工芸作品制作のための元図案ではなかったかと思われる。
光琳のデザイナーとしての才覚がこの小さな図案集にも見て取れる。
「流水図乱箱」 尾形光琳筆 個人蔵
■ 琳派はいいですね
なかなか見ごたえのある特別展でした・・・
ちなみにこの光琳はすぐれたデザイナーでもあり,動植物を大胆にデザイン化した優れた意匠には,
後に「光琳鶴」「光琳菊」「光琳梅」などとその名が冠されるようになりました。
例えば・・・
★ 家紋
光琳梅 光琳桐 光琳橘
光琳松
★ 文様
光琳波 着物の帯ですね。 光琳松 これは襖の紙の模様です。
★ 和菓子
和菓子の老舗,虎屋 (16世紀半ば~現在) には,1710年5月21日に光琳が発注した和菓子の記録が残っています。
そのうち「色木の実 (Iro konomi)」と「友千鳥 (Tomo chidori)」は『御菓子之畫圖』(1707年) から
当時の色形や材料を知ることができます。
「色木の実 (Iro konomi)
現在虎屋では同じ菓銘で葉のみを作ることがあるそうです。。
http://www.toraya-group.co.jp/gallery/dat02/dat02_010.html
このように,光琳のすぐれた意匠は
日本の多くの工芸品や服飾品,はてはお菓子にまで取り入れられています。
真正の伝統文化は,このようにはっきりとした伝承系とともに,
さまざまな分野に広がっていくものですね。
(=´ω`=)y─┛~~