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過激デモと強硬鎮圧に振り回される韓国(下)

死亡事件が「政争の具」に

 昨年のろうそくデモの際、政府とデモ隊の双方から「警察官やデモ隊の中から死者が一人でも出れば、政局が変わる」という声が出た。「女子大生がろうそくデモで警察官に首を締められ死亡した」というデマが飛び交い、「目撃者を探しています」という広告がある日刊紙の1面に登場したこともある。結局、このデマを流した40代の男は裁判で実刑判決を受けたが、ろうそくデモ当時は真実を明らかにする「暴露」と認識されたほどに関心を集めた。

◆死を待つ政治の残滓(ざんし)

 「死」による政治に対し、与野党の見方は異なっている。ハンナラ党の鄭泰根(チョン・テグン)議員は「80年代は民主と反民主がはっきりと対立し、その矛盾が死という形で現れた。だが、民主化以降は、政治の前面に再び死を登場させてはならない」と言った。一方、民主党の徐甲源(ソ・ガブウォン)議員は「偶発的な死ではなく、李明博政権の“ごり押し政治”が生んだ構造的な死」と表現した。

 公権力と反政府勢力の衝突で死亡事件が起きた場合、それがすぐに政権レベルの対立に発展する、というのは国の品格を落とす恐れがある。現代社会では、権力が政治・経済・文化など細かく分かれ、複合的に動いているため、懸案は懸案として、衝突により発生した偶発的な事件は事件として対応できるシステムが確立されるべきだ。

 延世大学心理学科の黄相旻(ファン・サンミン)教授は「先進社会では、社会的な葛藤の過程で死亡事件が起きれば、それが偶然的なのか、それともほかの犯罪行為と関係があるのか、まずは原因究明が先だ」と話す。しかし、「深刻な経済危機により不安な心理状態が広がる中、政府がこれに合った国政を行うことができなければ、その解決法も極端なものになりがちだ」と専門家らは指摘している。

鄭佑相(チョン・ウサン)記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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