いろいろな用途に使ってきたMOディスクやフロッピーディスクをデータの受け渡しに使う場合、空き領域に残ったデータを「復元ツール」を使って読み出される可能性がある。
使いまわしているリムーバブルメディアを第三者に渡すときは、空き領域のデータを抹消することを強く勧める。
PC本体やハードディスクを他人に譲ったり、中古ショップに売ったりする場合も同じだ。
以下に、データ抹消(完全削除)ツールでフリーのものを紹介する。
Windows用
UNIX用
MacOS用
Windowsのデータ抹消において注意が必要なのは、FAT用の抹消ツールをNTFSで使用する場合だ。NTFSではデータサイズが800バイト程度以下であれば、MFT(Master File Table)レコードというファイル管理領域内に格納される。FAT用の抹消ツールでは、MFTレコードに格納されているデータを抹消できない。
NTFSではMFT以外にも「代替データストリーム」という領域にデータを格納でき、このデータもFAT用の抹消ツールでは抹消できない。
代替データストリームはNTFSにしかないため、他OSとのファイル互換性を必要とするアプリケーションでは使用されないと予想される。しかしMFTレコードに収まるデータの問題は、データサイズが小さければ必ず発生するので、非常に注意が必要だ。
NTFSのMFTについては「NTFSではフラグメントは発生しにくい? ―NTFS基礎のキソ―」(http://www.atmarkit.co.jp/fwin2k/experiments/defragment/defragment_column.html)、代替データストリームについては「プログラマから見たNTFS 2000 Part1: ストリームとハードリンク」(http://www.microsoft.com/japan/msdn/windows/windows2000/ntfs5.asp)などを参照。
以下で紹介しているWindows用フリー抹消ツールについてまとめておく。「安全」といっているのはソフトウェア(復元ツールやダンプツール)による復元に対してのみである。
以上はあくまでフリーの抹消ツールのみについてである。商用抹消ツールについては各社のサイトを参照。
さらに補足しておくと、MFTレコード内のデータは、ディスクをNTFSで再フォーマットすると、すべて上書きクリアされる。MFTレコードに納まらないデータについてはFATの場合と同様に、フォーマットでは上書きされない。実際に試してみると逆で、MFTレコード内のデータはそのまま残り、MFTレコードに納まらないデータがクリアされるという結果が出ている(MOをNTFSフォーマットした場合)。
作者 加藤 高明氏(Ver.4.2.8まで)
ダウンロード 商用化に伴いフリー版のダウンロードは終了
このツールで抹消したデータが、商用の復元ツールで復元不能かテストした結果(FATでの場合)はここ。NTFSでの結果はここ。
FATでは正しく動作する。
しかしNTFSでは対象によって上書きできる場合とできない場合がある。NTFSのハードディスクは正しく上書きできるようだが、NTFSのMOは正しく上書きできない結果が出ている。
「PCfan」誌2006/3/1号のP.47において、「復元」の抹消機能でハードディスク全体を抹消する説明があるが、そのとおりに操作すると、削除されていないファイルはそのまま残ってしまう。「復元」の抹消機能は、未使用領域だけを上書きするためだ。このツールでハードディスク全体を抹消するなら、まずクイックフォーマットして全体を未使用領域にしてから抹消機能を実行する必要がある。
作者 昇太 & Miyoko氏
ダウンロード http://www1.nisiq.net/~miyokko/
このツールで抹消したデータが、商用の復元ツールで復元不能かテストした結果はここ(ただし検証はファイルシステムがFATの場合のみ。NTFSについては未検証)。
作者 井上 博計氏
ダウンロード http://www.vector.co.jp/soft/win95/util/se094526.html
このツールで抹消したデータが、商用の復元ツールで復元不能かテストした結果はここ(ただし検証はファイルシステムがFATの場合のみ。NTFSについては未検証)。
完全削除のヘルプには、NTFSで抹消できない対象(MFTレコード内のデータ、代替データストリームなど)について明記されている。
2006/9/3訂正 : ハンドルネーム「kotsu」様の指摘により、MFTレコード内のデータは抹消できることがわかりました。kotsu様、ありがとうございました。
なお完全削除のヘルプで「MFTミラー」と記載されているものは、NTFSのトランザクションログのことだと思われます。
作者 mt氏
ダウンロード http://www.vector.co.jp/soft/win95/util/se185807.html
このツールで抹消したデータが、商用の復元ツールで復元不能かテストした結果はここ(ただし検証はファイルシステムがFATの場合のみ。NTFSについては未検証)。
作者 Type74 Software氏
ダウンロード http://www.vector.co.jp/soft/win95/util/se119287.html
このツールで抹消したデータが、商用の復元ツールで復元不能かテストした結果はここ(ただし検証はファイルシステムがFATの場合のみ。NTFSについては未検証)。
このツールで抹消したデータが、商用の復元ツールで復元不能かテストした結果(FATでの場合)はここ。NTFSでの結果はここ。
注1
フォルダにEFSを設定して、その中でファイルを作成していく場合は、削除済み平文データは生じないようだ。この件について検証した結果はここを参照。
注2
以前、cipher.exeの機能として「フォルダを指定して、その中の削除済み一時ファイルを抹消できる」と書いていたが、これは誤りだった。"cipher /W:D:\user\encfolder1"のような指定はできるのだが、結果はディスク全体の抹消になる。フォルダの指定は、フォルダに別のドライブをマウントしているとき、マウントされたドライブの空き領域を抹消するためのものだ。使っている人はごく少数だと思うが、Windows 2000/XPはUNIX風の「ディレクトリ(フォルダ)へのディスクのマウント」ができる。
作者 黒鏡氏
ダウンロード http://www.vector.co.jp/soft/win95/util/se305149.html
このツールで抹消したデータが、商用の復元ツールで復元不能かテストした結果はここ(ただし検証はファイルシステムがFATの場合のみ。NTFSについては未検証)。
作者 はりせん氏
ダウンロード http://www.vector.co.jp/soft/dl/winnt/util/se297498.html
このツールで抹消したデータが、商用の復元ツールで復元不能かテストした結果はここ(ただし検証はファイルシステムがFATの場合のみ。NTFSについては未検証)。
作者 バージョン5.3まで Sami Tolvanen氏
バージョン5.4以降 Garrett Trant氏(Heidi Computers Ltd.)
ダウンロード http://www.heidi.ie/eraser/
ダウンロード先としてhttp://www.tolvanen.com/eraser/が、雑誌などで紹介されている場合があるが、このサイトでは最新版はダウンロードできない(メンテナーがSami Tolvanen氏からGarrett Trant氏(Heidi Computers Ltd.)に移っているため)。
選択したファイルの抹消、削除済みファイルの抹消ともに可能。
削除済みファイル名も、無意味な名前に書き換えられる。
スケジュールに従い、抹消を自動実行する機能もある。
"Boot Nuke Disk"というものの作成機能がある。これはDarik Horn氏の「DBAN(Darik's Boot and Nuke)」と同じものである。
DBANは起動可能なフロッピーで、PCのハードディスクをOSごと抹消できる。ただしEraserから作成できるDBANは少しバージョンが古いので、DBANを使いたい場合はDarik Horn氏のサイト(http://dban.sourceforge.net/)からダウンロードするのがよい。
Windowsで使えるフリーの抹消ツールでは、Eraserだけがグートマン方式を利用できるのではないだろうか(DOS上のツールでは、次項の"DESTROY"がある)。
このツールで抹消したデータが、商用の復元ツールで復元不能かテストした結果はここ(ただしファイルシステムがFATの場合の検証。NTFSでの検証結果は、「抹消・リカバリー! 大全」に掲載)。
NTFSにまつわる制限は、ほぼなくなっているようだ。
NTFSで「削除済みデータの抹消」「ファイルを選択して抹消」を行うなら、このツールが最も適しているといえる。
2006/3/31に、Ver.5.8がリリースされた。
http://www.heidi.ie/eraser/
は現在混雑しているようなので、
http://sourceforge.net/project/showfiles.php?group_id=37015
から入るといい。
sourceforgeでは5.8はBetaとなっている(2006/4/15現在)。
ヘルプには、まだ5.8の新機能について説明されていないためかもしれない。
上書きパターンについては、Ver 5.7から変わっていないようだ。
以下、5.8のhistory.txtから。4月10日版のパッケージでは、ヘルプの内容は5.7のままであるため、以下のことは書いていないので注意。
V5.8
(1) Option to erase first and last 2k of a file i.e a ultra quick erase
(解説) [Edit]-[Preferences]-[Erasing]、または抹消実行時に[Option]を押して表示されるダイアログに、[Only first and last 2KB]が追加。ファイルの先頭と末尾2KBだけ上書きするというもので"ultra quick erase"と称しているが、どうしてこんなオプションを追加したのか理解に苦しむ。
(2) Option to password protect the app from unauthorised usage.
(解説) [Edit]-[Preferences]-[General]に追加された[Set Protection]。他人が勝手にファイルを抹消しないように、抹消実行時にパスワードを入力させる機能が追加。
(3) Erase files on reboot
(解説) [Edit]-[Preferences]-[General]に追加された[Locked files]。ロックされていて抹消できなかったファイルを、次回の起動時に抹消できるようにする機能。
(4) Secure moving of files
(解説) ファイルを右クリックして出るメニューに、これまでの[Erase]だけでなく[Eraser Secure Move]が追加された。ファイルを別ドライブに移動するとき、移動元のデータを抹消するのだろう。同一ドライブ内の移動では意味がないはず。
(5) When erasing recycle bin also erase norton unerase files.
(解説) ごみ箱の中身を抹消する際、"Norton Unerase"が保持しているファイルも抹消できるようになったらしい。
(6) Option to shutdown or reboot after finishing the erase process
(解説) これはスケジュールされた抹消が完了したときのオプション。[Task Properties]に追加された[When Finished]を指すようだ。None(何もしない),Restart(リブートする),Shutdown system(シャットダウンする)から選択可能。
(7) The Win64 version is also available.
(解説) 64bit版をリリース。
DOS上で動作し、グートマン方式を利用できるツール(Windows上では動作しない)。
抹消はパーティション(DOS的にはドライブ)単位で行える。ファイル単位および削除済みファイルのみの抹消機能はない。
DOSの起動ディスクに入れて、システムディスクの抹消ができる。DOSで認識できるディスクが対象であり、USB接続などのディスクは対象外。
抹消方式は以下の7種類から選択できる。
何らかの事情でDOSの起動ディスクが作れない場合でも、DESTROYのZIPファイルにはFreeDOSを使ったフロッピーディスクイメージが含まれているので、readmeの説明に従えばDOSの起動ディスクができる。
作者 藤原 武氏
ダウンロード http://www.vector.co.jp/soft/dos/util/se196626.html
DESTROYのreadmeにはフリーソフトとして利用する条件について、次の記載がある。「家庭での個人使用を目的とする限りどなたがお使いになられてもかまいません。他の BBSや Web Site への転載も自由です。企業・団体での無断使用はお断りします。企業での使用、あるいは商品としての使用につきましては契約の上ライセンスを発行させていただきますのでご連絡ください」
"Forensic Acquisition Utilities"に含まれるコマンドラインツールで、下で紹介しているUNIX用のwipeとは異なる。Windows 2000以降で利用可。
ディスク/パーティション全体、ディレクトリ単位、ファイル単位の抹消が可能。ディスクの空き領域の抹消はできない。
抹消方式のデフォルトは0xFF→乱数→0x00。コマンドのオプションで、0x00を1回だけ、xFFを1回だけ、乱数を1回だけ、のどれかを指定することもできる。
作者 George M. Garner Jr.氏
ダウンロード http://users.erols.com/gmgarner/forensics/
forensic acquisition utilitiesのZIPファイルを解凍してできる"bin\UnicodeRelease"フォルダにwipe.exeが入っている。wipe -?でコマンドオプションのヘルプを表示できる。
このツールによるパーティション全体の抹消前後を比較したダンプはここ。ハードディスク全体の抹消前後を比較したダンプはここ。
作者 Tom Vier 氏
ダウンロード http://wipe.sourceforge.net/
「日経Linux」2002年7月号に、わかりやすい解説がある。
グートマン方式の上書き回数は、なんと35回である。大容量ハードディスクに対して実行したら、完了まで何時間かかるだろう?
グートマン方式の上書きパターン このページに含めると35行も伸びてしまうので、別リンクとした。
なお、「rm -P」はMac OS Xの全バージョンでも使える。
Mac OS Xの標準機能である「ディスクユーティリティ」を使うと、以下のものを抹消できる。
上書き方式は、Mac OS Xのバージョンによって異なる。
システムボリュームを抹消する場合は、Mac OS XのインストールCDで起動し、ディスクユーティリティを使用する。くわしくは以下を参照。
http://www.apple.com/jp/support/faq/#7
Mac OS 9の標準機能である「ドライブ設定」を使うと、内蔵ハードディスクを抹消できる。パーティション単位の抹消はできない。上書き方式は0x00で1回。
「ドライブ設定」は「ユーティリティ」フォルダ内にある。
システムボリュームを抹消する場合は、Mac OS 9のインストールCDで起動し、ドライブ設定(OS 9)を使用する。くわしくは以下を参照。
http://www.apple.com/jp/support/faq/#7
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