不況が言葉を暗くし、暗い言葉が心の中まで暗くすることがある。経済の現状について麻生首相が「危機の津波」といい、与謝野経済財政担当相が「不安と萎縮の連鎖」との言葉を使ったのを聞いての感想だ 白川日銀総裁も、先日の講演で「がけから落ちるよう」と表現した。理解はできるが、がけから転落なら、回復不可能のような気さえする。さらに、この現状回復に「過大なレバレッジの解消を促す」と続けた レバレッジとは「てこの原理」のことだ。小さな資金で大きな金を動かす場合に使った。米国の住宅ローン問題が、世界経済を大混乱に陥れたことなどから、その「てこの原理」は、モンスター扱いになってしまった 「落ちる」「滑る」は禁句にしようと決めた受験生の家族が緊張し過ぎて「落ちた」「滑った」と口走る笑い話がある。転落、津波、不安の連鎖も禁句にしたいくらいだが、緊張をほぐし現実を直視する力を持ちたい リーダーの言葉は影響が大きい。無責任な楽観論を求めるのではない。正確な分析は必要だ。ただ、厳しい表現の中にも希望と可能性があってほしいのである。
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