地域の住民や消防署員らを前に日ごろの訓練の成果を披露する災害救助犬のステファンと相良順子さん=兵庫県宝塚市末広町、深松真司撮影
「わんわんパトロール」をする相良順子さん(左)とステファン(手前)。もう一頭はミモザ=兵庫県宝塚市
兵庫県宝塚市の住宅街を朝夕の2回、毎日パトロールしている犬がいる。オスのラブラドルレトリバー、ステファン君。実は彼、災害救助犬である。95年の阪神大震災で、道路や通信が寸断されれば救助の手はなかなか届かないと痛感した同市の主婦相良順子さん(58)が、「地域の安全はまず自分たちの手で」と愛犬を育て上げた。(深松真司)
子どもたちの登下校の時間帯になると、ステファン、それに救助犬を目指して訓練中のメス犬・ミモザは相良さんに連れられて「わんわんパトロール」に出発する。地域の地理や地形を隅々まで覚えるのは重要な訓練の一つ。しっぽを振り、鼻をひくつかせながらステファンたちは街の安全確認に余念がない。
相良さんのかばんには、三角きんや消毒液、ゴム手袋などの応急医療グッズが詰まっている。「いつ何が起きても対応できるように」との理由からだ。災害救助犬を育てようと思ったきっかけは阪神大震災。当時住んでいた大阪府茨木市の自宅は被害を免れたが、宝塚市の実家が被災。すぐに駆けつけられず、数日間は連絡も取れなかった。
テレビをつけると、がれきの山と化した神戸の街で、外国から駆けつけた救助犬が行方不明者を捜索していた。「なんで海外の犬なんやろ」。もどかしさが募った。
父親が大阪府警から警察犬の育成を委託されていたこともあり、相良さんは幼い頃から5、6頭のシェパードに囲まれて育った。犬の訓練士を目指したこともある。「私も犬と一緒に人の命を救えるかもしれない」と思い始めた。
00年ごろ、プロの訓練士らでつくるNPO法人「犬の総合教育社会化推進機構(オプデス)」(本部・埼玉県)が災害救助犬を認定・育成していることを知り、救助犬向きの犬を探し始めた。救助犬の先進国とされるデンマークやスイスへ出かけたり、国内でもプロの訓練士に指導を受けたりして訓練方法や犬の生態を学んだ。