私(桜井淳)は、これまで、英文の聖書や日本語の聖書の解説書を読んだことはあるものの、決して一般的ではない「ユダヤ教」(世界宗教ではなくて、いまのイスラエル地域に限定して発展した宗教であり、モーセは、イスラエルの民をエジプトからイスラエルに導き、旧約聖書の時代を経て、キリスト教誕生の母胎となっていました)の論文集や解説書を読んだことは、一度もなく、すべて、初めてずくしの連続であり、そうなった原因は、2009年1月15日、神学の研究を志して、東大本郷キャンパス法文二号館の中にある東大大学院人文社会科学系研究科のH先生を訪問した時から始まり、本書を読んだことは、ついに、研究の具体的な第一歩を記すことになったに等しく、大変感激すると共に、見慣れない用語が出現し、難解ではあるものの、絶望的なほど分からなくはなく、それどころか、ユダヤ教の特徴と体系、歴史的発展と停滞、研究の着目点と研究の基本的手法が手に取るようによく分かり、求めていたこれほどよい的確な教科書が早い段階に手に入り、一気に読み進み、今後の方針を定めることができたことは、まさに、奇跡的な出来事であって、いま、深い癒しと安心感に浸っていますが、本書の内容と目的は、以下のように示すことができ、
目次
はじめに
イスラエル・パレスチナ地図
地中海周辺地図
序「我らのラビ・モーセ」に倣いて
第1章ユダヤ教の正統性
第2章タルムードと自治社会
第3章自由と戒律
第4章偶像崇拝との闘い
第5章神への愛
第6章罪と赦し
第7章神秘の力
第8章自治の終焉
第9章聖書解釈の行方
第10章聖書と現代
おわりに
初出一覧
「本書の目的は、キリスト教出現以後に発展するユダヤ教の、とりわけ、ミシュナ、タルムード(普通名詞としては学習の意、引用者)という法律議論を聖典の中心にすえたユダヤ人の精神構造と思惟方法の研究である」(p.4)、ここに収録してある10編の論文は、市川先生が、イスラエルのエルサレムにあるヘブライ大学大学院に3年間留学(東大大学院人文社会科学系研究科博士課程休学期間)していた頃の研究への視点であって、論点は広範囲に及び、単にユダヤ教の体系や歴史のみならず、キリスト教や法華経等の他の宗教との比較をとおし、ユダヤ教の特徴と本質に導き入れており、また、各部に挿入された写真から、イスラエルの今昔の歴史的遺跡によって、生活の中に入り込んでいる宗教の深さが理解できるように感じ、ただ、一度だけでなく、何度も繰り返し熟読吟味することにより、確実に何かをつかめそうに感じています。