ミニチュア文化・netsuke [後編] | 2812|共感0
41210| JAPANrindoh | 2005.07.07 21:03:18
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ミニチュア文化・根付 (根付 netsuke) [後編]


■ さまざまな根付





無銘 「筵に横たわる鹿」 4.0cm 19世紀 (大阪?)
材質は象牙。角の生え出したbambi。両目には黒角が象嵌されている。


 
参考までにサザビーズ (1998年9月) に出品された同じ根付師による鹿の写真。
予想落札価格は$3000-$4000で,実際の落札価格は$7130 (約87万円) だった。



 
初代 白龍 (Hakuryuu) 「虎」 3.5cm 18世紀初期? 
素材はセイウチ。実用根付の為,細かな細工をせず怒り肩の虎を彫りあげ,
目は白蝶貝で象眼され白蝶貝の上から銀打ちされている。
もし根付に国宝指定があるなら,国宝間違えなしの初代白龍の作品。



正直 (Masanao) 「草履蛙」 柘植 4.0cmx3.5cmx2.5cm 18世紀 京都 
眼には海松の象嵌。



正直 (Masanao) 「福良雀」 象牙 横4.2cm,幅6.0cm,高3.5cm 18世紀 京都
京都正直は非常に人気のある根付師であり,おそらく18世紀の古い根付師の中では群を抜く芸術センスの持ち主。特に外国の収集家はこの京都正直を特別な存在と位置づけているようです。。。



友忠 (Tomotada) 「山羊」「狼」 19世紀中期 京都
友忠はその後の上方派根付に多大な影響を及ぼし,ひとつの根付意匠の流れ (南蛮風) を確立した人物。非常にモダンで写実的。背骨と肋骨の表現が特徴的です。


 
無銘 「鮭」 19世紀中期 (江戸もしくは会津系)
この根付は海外美術館で人気のある根付で,精密すぎ鑑賞にはルーペ叉は顕微鏡が必要。

 

長三郎 (Chohsaburoh) 「白菊矢立」 7.2cm 四分一 (合金) 天保年間 (1830-44年) 出雲
銀製の小さな筆が格納されている矢立型の根付。故レイモンド・ブッシェルの旧コレクション。



蘭若 (Ranjaku) 「子犬」 3.7cm 19世紀中期 大阪
子犬が神社の瓦で遊ぶ図柄で子犬は毛彫りされ瞼が綺麗に彫られています。



玉宝齋 (Gyokuhohsai) 「海の幸」 4.0cm 19世紀 大阪
彫られているものは,ヒトデ,河豚,鮑,赤貝,蛤,ヒラメ,星カレイ,アオリ烏賊。
「白錆」と呼ばれる手法で加工されており,白く輝く真珠のような感覚と河豚や鮑のざらざらした彫りを持つ。
非常に手間のかかる高度な技法。


 
東谷 (Tohkoku) 楳立 銀印 「搗屋 (tsukiya)」 3.7cm 木刻象牙象嵌 明治 東京
搗屋とは賃をとって玄米から白米に米つきをする人。
この作品は,両眼や搗臼の米に象牙が象嵌され,緑の染め鹿角で紐穴が補強されている。
さらに,臼の縁や底面の散らばった米 (象牙),臼の割れ目に補強用に打ち込んだ鉄の
かすがい (金属象嵌,2カ所)で細かい象嵌細工が施されている。



「鉄砲根付」 4.2cm 銃床: 木製,銃身: 鉄,からくり: 真鍮・銀
鉄砲職人が余技に作ったとも,金工師が作ったとも言われている。
ちゃんと火縄ばさみも可動し,引き金で落ちる。
火蓋も開き,鉄製の銃身には金の布目象眼で三葉葵と唐草が描かれている。




「龍」 珍材料根付 ウニコール根付 (幕末−明治)
一角鯨の貴重な角を材料として彫られた根付。
左巻きで中空の特徴的な角。江戸時代には非常に高価で,薬としても用いられた。


 
日本の根付は江戸時代に最も発達し,数多くの素敵な作品が残されました。
18世紀後期から19世紀前半が根付の最盛期と言えます。
しかし,明治の文明開化とともに導入された洋服文化(ボタンの文化)が原因となり,
明治以降は実用的な根付は無用のものとなりました。そのため,根付製作は激減し,
以降は主に観賞用や海外輸出用として作製されつづけ,現在に至っています。
しかし,根付製作は途絶えたわけではありません。明 治より後の大正・昭和・平成の20世紀に作製された根付は,
現代根付 (contemporary netsuke)”と呼ばれており,今なお,数少ない根付師 (netsuke-shi) により作品が細々と作り続けられています。





旭齋 (Kyokusai) (塚本旭齋) 「鮎」 5.0cm 大正・昭和 千葉


 
「麒麟」 鯨歯 5.5cmx3.2cm 
マッコウクジラの歯でできており,とろっとした感じがよい。目は海松が象嵌されている模様。



藻 School 「焼き栗」 象牙 幅 3.3cm,厚み 2.0cm,高さ 3.5cm 明治


 
「からくり三番叟」 顔が象牙 烏帽子がタガヤサン 身体がセイウチ 2.0cmx2.0cmx4.5cm 明治? 
からくり根付で舌を出すように作られている。片足立ちするバランスの良さもある。



春画根付 「裸少女」 象牙 2.6cmx2.0cmx5.0cm 
こんなのもあります(笑) きれいですね。


 
左: 高木喜峰 (TAKAGI Kihoh) 「宇宙飛行士のお土産」 マンモス牙,木,針金 4.4cm 2000年
右: 小林仙歩 (KOBAYASHI Sempo) 「蝉丸」 象牙 6.8cm 1980年



 
左: 宮澤宝泉 (MIYAZAWA Hohsen) 「誕生」 象牙 3.4cm 1999年
右: マイケル・バーチ (Michael BIRCH) 「メビウス達磨」 マンモス牙 5.3cm 1979年



 
Susan WRAIGHT 「猫に鈴」 黄楊,金 5.0cm 2001年
右: 阿部賢二 (ABE Kenji) 「うさぎ」 琥珀 3.9cm 1987年






■ Japonisme としての根付

 
海外でも“Netsuke”という言葉は良く知られています。日本でよりも、むしろ外国の方で良く通じることがあります。
残念なことに,江戸時代に作られた貴重な根付は,明治時代以降にその多くが海外に流出しました。
現在でも海外の有名オークションなどを通じて,たくさんの根付が売買されており,美術品としての流通性は確保されています。
世界中に熱心な根付コレクターが存在し,日本人よりも外国人のコレクターの方が数が多いのが実情です。
海外の美術館などでも確立された美術として正当な評価を受けています。
大英博物館の netsuke の常設展示などは有名ですね。



○ 歴代の高額落札

 
1位友忠の馬 落札価格 $260,000 (3975万円)            2位牙虫の貘 落札価格 $179,000 (2800万円)
 1990年5月にロンドンで記録        1987年6月にロンドンで記録
  
 
3位懐玉斎の鶴 落札価格 $188,000 (2700万円)           5位京都正直の親子猪 落札価格 $158,000 (2400万円)
   1990年5月にロンドンで記録                     1990年5月にロンドンで記録


○ 大英博物館コレクションより


柳左根付と印籠



Wooden netsuke by Hojitsu
Beetles on a sandal   Edo period, 19th century AD
  

大英博物館 日本室 netsuke ギャラリー【クリック】  





■ 今に生きる根付文化

 
携帯電話に付ける携帯ストラップ (keitai sutorappu: cellular phone strap) は,日本の江戸時代に起源を発します。
根付文化を有したのは,着物文化と社会経済的に安定した江戸時代を過ごすことができたことだけが原因ではなく,
そもそも日本人の国民性に根ざしたものがあったのでしょう。
携帯ストラップは,日本が流行の発信源となって,台湾や香港,ヨーロッパに伝搬していきました。



寿司と天ぷら



石焼ビビンバ



 
ポカリスエット   紐を引くと,ストローが・・・



カブトムシ



これからの季節,このようなストラップも・・・



点滴。結構売れたようです。



和服のリカちゃん人形               銀河鉄道999






日本独特の伝統文化・netsuske。現在でも国境を越えて老若男女に親しまれています。


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rindoh|07-07 21:05
TopはDoCoMo携帯のミニチュアストラップ。本物とセットで使える。(w
rindoh|07-07 21:06
疲れた・・・あの程度の裸婦は芸術として認めてもらえるようだ。管理人さん,ありがとう。
chihouroujin|07-07 21:30
GJ
kuroyagi|07-07 21:50
ご苦労様です。焼き栗欲しいw
rindoh|07-07 21:54
kuroyagi> 焼き栗いいですよねー。紐通し穴を虫食い穴に見立てている芸の細かさ。
kuroyagi|07-07 22:11
本物と見分けが付かないですね。本当に芸が細かいなぁ。
kimchinko|07-07 22:34
凄いね・・・圧巻・・・。 netsukeは、日本人の「小さきもの」への愛情、技術、伝統の結晶なのかもしれない・・・。 それは、姿、形、用途を変え、現在に受け継がれている・・・。
rindoh|07-07 22:41
kimchinko> ですね。携帯ストラップの発祥が日本であることからもわかるとおり、至極日本的な文化ですね。韓国人には真似できない文化。
mannmai|07-07 22:54
rindoh>そういうこというとまたストラップはウリナラ起源ニダって言ってくるよw
rindoh|07-07 22:55
mannmai> www
guevara|07-07 22:56
rindohさん、本当にいいスレッドですね。勉強になります。根付は、「精緻な技術を尊敬し、小さな飾り付けでさえも楽しむ土壌」が無いところには無縁の文化ですね。
kimchinko|07-07 22:57
とても小さい物なのに、圧倒される強さ・・・。 江戸時代の名も無き(当時は現地では有名だったのだろうが)市井のクリエイターの、このレベルの高さ・・・尋常ではない。 しかし、NAVERにくることがなかったら、netsukeのことも、殆んど何も知らずにいたと思う・・・。
rindoh|07-07 23:01
guevara> こんばんは。不器用でsaru真似しかできない人たちには無理ですよね。guevaraさんが常々おっしゃっているように文化を楽しむゆとりがないとありえない文化ですね。(w
rindoh|07-07 23:02
kimchinko> 実は上にあげたものの1つは今ネットオークションにかけられてまして・・・欲しい♪
peachboy|07-07 23:28
待望の後編、ご苦労様。値付けを見ているとコツリと胸に当たる物があります。これってなんだろう。掌(たなごころ)に文化を、かな。偉そうに生意気を言ってゴメン。
rindoh|07-07 23:33
peachboy> こんばんは。いずれ印籠とセットで本歌のいい根付を入手したいものです。時折手にとって日本文化を感じたい。(w
rindoh|07-07 23:44
アメリカの国際団体のようです。なんでも9月にconventionを開催する模様。。>>> http://www.netsuke.org/
rindoh|07-07 23:48
こちらはロサンゼルス郡立美術館(LACMA)の根付コレクション。>>> http://collectionsonline.lacma.org/mwebcgi/mweb.exe?request=hiersearchimages&key=97083
peachboy|07-07 23:51
rindoh>情報感謝。サンフランシスコですね。ちょっと遠いけど行ってみるかな。ロスの方はおなじみです。
rindoh|07-08 00:03
こないだ東京国立博物館に行ったんですが、日本刀は見ましたが時間がなくて根付は見逃しました・・・昨秋世田谷の静嘉堂文庫に行ったときも曜変天目は見ましたが、根付は・・・駄目ですね、今後はミーハーにならず印籠や根付をチェックします。(w
mammalia|07-08 00:36
白龍 の「虎」は大分すり減ってますね。見た目だけでなくて触感も素晴らしいのでしょう。
rindoh|07-08 00:44
mammalia> こんばんは。でしょうね。牙系の材質は適度な重さもあるし。陶芸も触って楽しむところがありますよね。刀の鍔なんかもそういうところがあるかも。。
hyirop|07-08 07:20
外国の美術館にはとんでもない物がたくさんありますね。魅了されるとともに悲しくもなります。
voiiiov|07-08 09:11
福良雀可愛い♪
mukaetutu|07-08 12:04
過去の落札価格に驚いた・・ 良thread、いつもいつもありがとうございます。
thespis|07-09 00:02
お見事の一言。
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