(社)日本オーディオ協会は、「音の日」の記念行事のひとつとして、1996年より音を通じて文化や生活に貢献した人々を「音の匠」として顕彰する活動を行っている。本日、都内で行われた「音の日」行事(関連ニュース)において、第13回「音の匠」顕彰式が執り行われた。
同協会 会長の校條亮治氏は「人間の生活の中で音、そして音楽は切っても切り離せないもの。音の匠として音に携わる人たちを顕彰することで、多くの方に、普段何気なく接している音の素晴らしさを改めて認識してもらいたい」とその活動の意義を説明する。
本年度、音の匠に選ばれたのは電話案内や公共機関のアナウンスを務めるナレーターの中村啓子さん。また音の匠特別賞として、パイオニアの“体感音響システム"を使った聴覚障がい者向けの音楽イベントを運営する「身体で聴こう音楽会」事務局長のパイオニア(株)山下桜さんが顕彰された。顕彰式の前には、山下さんがトークセッションに参加するとともに、会場に体感音響システムを設置し、弦楽四重奏の生演奏による「身体で聴こう音楽会」が開催された。
スピーチの冒頭で「午後5時10分をお知らせします」と時報のアナウンスを生で披露し会場を沸かせた中村啓子さん。中村さんはNTTの時報や番号案内、 NTTドコモの留守番電話サービスをはじめ、銀行や郵便局のATM、駅のエスカレーター、電車やリムジンバスのアナウンスなどを務めており、その明瞭で親しみのあるアナウンスによって日常生活を支えていることが評価され「音の匠」を顕彰した。
「この知らせを聞き自分の半生を振り返ってみたが、富山の小さな町で生まれた私がまさか匠と呼ばれるなんて、と感動し目頭が熱くなった」とその喜びを語る。
中村さんがナレーターの仕事をする上で心がけていることは「何事でも、自分にしてもらいたいことは、ほかの人にもそのようにしなさい」という聖書の一節だという。「たとえばNTTドコモの留守番電話サービスの『電波の届かないところにいるか・・・』という言葉はすみませんという気持ちを込めて、リムジンバスのアナウンスでは、“外国から長旅でいらっしゃってお疲れ様です”という気持ちを込めている」と聞き手の立場に立って読むという姿勢を大切にしていることを紹介した。
「ですから、機械じゃないの?と言われる度に、寂しい思いをしていた」という中村さんだったが、第11回の「音の匠」に選ばれたエッセイストの三宮麻由子さん(関連記事)がエッセイの中で、自身の声を“言葉を超えた呼びかけがある気がする"と評してくれたことがとても嬉しかった、と語る。三宮さんは会場に駆け付け、顕彰の喜びを分かち合っていた。
http://www.phileweb.com/news/audio/200812/04/8592.html
音を通じ暮らしに関わり社会に貢献しておられる方を「音の匠」として顕彰しています
■ 第12回・2007年の音の匠
優れた聴覚と音響技術を用いて漏水の発見に努め、水資源の有効活用と人々の暮らしに貢献をされている、東京都水道局の漏水調査の専門職員の方々
■ 第11回・2006年の音の匠
三宮麻由子(さんのみや まゆこ)氏(エッセイスト)
幼少より目がご不自由ながら優れた聴覚を活かし、聴覚の素晴しさを説くと共に人々に勇気を与える活動をされている
■ 第10回・2005年の音の匠
内沼映二氏 ((株)ミキサーズ・ラボ)
沢口 真生 氏 (パイオニア(株))
西尾 文孝 氏 (ソニー(株))
(特別賞)エリオット・シャイナー氏 (米国・制作・録音技術者)
−ステレオからサラウンドにソフト・ハードの垣根を越えて取組んでこられた方々
■ 第9回・2004年の音の匠
野田員弘氏 (株)野田鶴声社
居石浩己氏 (日本放送協会 放送技術局)
井上哲氏 (テレビ朝日映像(株)技術局)
−オリンピック年にちなみスポーツ分野で音の技術と文化に貢献した方々
■ 第8回・2003年の音の匠
玉井和雄氏((元)文化放送 編成局 制作部)
今井裕氏 ( 日本放送協会 放送技術局 )
久保光男氏 (日本放送協会 放送技術局)
−テレビ放送50周年にちなみ番組制作での音響デザインや効果音制作活動
■ 第7回・2002年の音の匠
服部文雄氏(ビクターエンタティンメント)、馬場哲夫氏(ソニーミュージックコミュニケーションズ)、 梅沢清氏(日本コロムビア)、東孝一氏(松下電器産業)、柿沼敬二氏(東芝EMl)、成瀬庸介氏(ソニー)、 鶴島克明氏(ソニー)、木目健治朗氏(三菱電機)、林英昭氏(日本コロムビア)、 鈴木雅臣氏(アキユフエーズ)、池戸勇二氏(パイオニア)、西川和男氏(パイオニア)、 桑岡俊治氏(日本ビクター)、阿部忠氏(松下電器産業)、田中伸一氏(松下電器産業)、 安田博氏(松下電器産業)Joop Sinjou氏(フィリップス)、Jacques Heemskerk氏(フィリップス)、 土井利忠氏(ソニー)、小川博司氏(ソニー)(順不同) −CDの開発および改良に貢献した技術者20名(CD発売20周年記念)
■ 第6回・2001年の音の匠
竹内正実氏
−世界初の電子楽器といわれるテルミンによる積極的な演奏活動や出版活動
■ 第5回・2000年の音の匠
清水虔氏 (びんてふ友の会名誉会長) −紀州備長炭によるビブラフォンを製作
■ 第4回・1999年の音の匠
松下和生氏 ((社)日本ピアノ調律師協会会員)
−演奏家が求める音色等,演奏者を支える重要な役割を担うピアノ調律
■ 第3回・1998年の音の匠
高橋美智子氏・佐々木硝子株式会社
−伝統あるガラスの楽器・グラスハープの製造と演奏活動
■ 第2回・1997年の音の匠
前田仁氏
−讃岐特産の石「サヌカイト」をもとに楽器を製作し音の文化の向上に努める
篠原儀治氏
−江戸風鈴の技法に独自の工夫を加えながら伝承している
明珍宗之氏
−鍛冶の技法による伝統工芸を守り独自な火箸風鈴を考案し伝承している
■ 第1回・1996年の音の匠
針谷照氏 (東日本旅客鉄道株式会社上野保線区)
−路線の状態を小ハンマーによる打音で判断
西日本旅客鉄道株式会社 技術開発推進部
−パンタグラフの風切り音の低減により時速300キロの新幹線「のぞみ」運行
http://www.jas-audio.or.jp/event/sound/index.php |
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