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社説:農政改革 成長産業にする意気込みで

 経済を再生するには、新たな成長分野が必要となる。そして、雇用情勢が急速に悪化しているのを背景に、農業を新たな成長産業とし、雇用の場とすべきだという主張が盛んに展開されるようになった。

 そんな中で農政の指針となる基本計画を見直す作業が始まった。5年に1度の改定で、食料・農業・農村政策審議会が1年程度かけて論議し、来春の閣議決定をめざすという。農業が成長産業となるような抜本策が提示されることを期待したい。

 焦点となっているのは、コメの生産調整である減反政策を維持すべきかどうかということと、食料自給率の向上策だ。

 コメは現在、高関税で保護されている。しかし、国内の消費量の減少に、高関税の代償の最低輸入義務も加わり、余剰状態が続いている。穀物価格が急騰し世界各地でコメを求めて暴動が発生している時にもなお、日本では生産調整が続けられた。

 しかも、世界貿易機関(WTO)の多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)が再開されて妥結すると、最低輸入義務の拡大などが必要となる情勢だ。

 一方、国内をみると、農業従事者の高齢化が進み、限界集落にみられるように地域社会の維持に支障が出ているところもある。こうした点からも農業改革が喫緊の課題となっている。

 農業を成長産業とするには、生産性の向上が欠かせない。ところが、生産調整と生産性を高めることを両立するのは難しい。

 減反をやめればコメがますます余り、米価の下落につながる。しかし、これまでのようにつぎはぎをあてるような施策を続けても、限界にきていることははっきりしている。

 今は円高と穀物価格の下落の結果、コメの内外価格差が再び広がっている。しかし、一時はかなり縮小し、日本のコメも生産性を高めれば、国際的に太刀打ちできるのではないかと、多くの人が期待を寄せた。

 コメづくりで優れた技術を持っていても、それが生かせない状況を改め、世界と渡り合っていける競争力をつける。そんな挑戦が日本の農業に必要なのではないだろうか。

 そのためには、減反問題に加え、農地の流動化を進め、農業への参入障壁を大幅に低くするといった措置も検討してもらいたい。

 同時に、転作奨励金などの補助金を農家の所得補償に充てるといった支援策や、米粉や飼料米などの用途の多様化も探ってほしい。

 一方、自給率を向上するには、農地の確保が不可欠だ。耕作放棄地を減らすだけでなく、農地の転用を規制する措置が必要なのかもしれない。

 農業への期待が高まっている。それをばねに、農政の見直しに取り組んでもらいたい。

毎日新聞 2009年1月30日 東京朝刊

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