市町村設置の全有床診療所 勤務医当直行わず岩手県内の市町村が設置する有床診療所のすべてが、勤務医の負担軽減のため医師の当直を行っていないことが29日、河北新報社の取材で分かった。入院患者の急変時には、常勤医らを呼び出す「オンコール」で対応しており、当直を続ける県立診療所(地域診療センター)との違いが浮き彫りになった。県医療局は診療センター無床化計画の理由に、当直による医師負担の大きさを挙げるが、19床以下の診療所に医師の当直義務はなく、「市町村のように当直をやめ、入院ベッドを残す道もある」との指摘も出ている。 県内の市町村立の有床診療所は14施設。このうち実際に入院患者がいるのは田老(宮古市)、雫石(雫石町)、川井中央(川井村)など7施設だった。 いずれも夜間は看護師が診療所内に残り、医師は近くの自宅や官舎に帰宅。急患や入院患者の急変時には駆け付けて処置している。 診療所については市町村立、県立を問わず、症状が安定した高齢の入院患者が多い。設備不足などから重症者が救急車で運ばれることも少ない。 このため「医師が駆け付ければ対応できる」(久慈市山形など)とする市町村立の診療所がほとんど。奥州市前沢診療所は「入院患者の急変は月に3、4回あるが、まったく問題ない」と言う。 これに対して県立の5カ所の診療センターは常勤医や県立病院の医師らが毎日、夜間も勤務している。医師1人の平均当直回数は月8回に上る。 病院経営に詳しい伊関友伸(ともとし)城西大准教授は「数少ない医師で毎日当直するのは無理があり、急変の少ない高齢入院患者が中心の市町村診療所が、オンコール態勢を取るのも理由がある」と指摘。県医療局の対応には「仮に『オンコールなら有床を維持してもいい』と言う医師がいれば、一律に無床化する必要はないように思う」と語る。 医療局は「夜間の医師不在を不安視する地域の声を受け、医師の当直を続けてきた。『当直もオンコールも心理的負担は変わらない』という勤務医の声もある」と、当直廃止による有床維持には否定的だ。
2009年01月30日金曜日
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