厚生労働省の薬事・食品衛生審議会部会は29日、抗がん剤「ドキシル」(一般名ドキソルビシン塩酸塩)を卵巣がんの治療薬として承認することを了承した。薬事分科会を経て、4月にも正式承認される見通し。ドキシルは99年の米国を皮切りに世界約80カ国で承認されており、日本の承認が欧米より遅れる「ドラッグ・ラグ」の典型とされていた。
ドキシルは米国の製薬会社が開発し、日本の製造販売元はヤンセンファーマ(東京)。07年1月にエイズ関連疾患の治療薬として国内承認され、同月から卵巣がんへの適用拡大を申請していた。
卵巣がんの治療薬は、二つのタイプの抗がん剤が承認されているが、アレルギーで使えない患者が1割以上いるとみられ、耐性ができて効かない場合もある。日本婦人科腫瘍(しゅよう)学会の治療ガイドラインは、ドキシルを再発ケースに有効な化学療法として挙げており、厚労省は優先的に承認手続きを進める「迅速審査」の対象にしていた。
厚労省審査管理課によると、部会では臨床試験のデータが少ないため、全患者の追跡調査をすることを条件に承認を認めたという。
日本では新薬が世界で最初に発売されてから国内で販売されるまでの期間が平均4年で米国より1年半長い。国は体制強化のため、来年度の承認審査と市販後の安全対策にかかわる人員を、それぞれ約100人ずつ増やす予定。【清水健二】
毎日新聞 2009年1月29日 22時05分