先進工業国と開発途上国の格差はいろいろあるが、保健分野で最大の問題は妊産婦の死亡率のようだ。国連児童基金(ユニセフ)が発表した「世界子供白書2009」が指摘した。
世界では毎日千五百人の女性が妊娠や出産に伴い命を落としているというから驚きだ。一九九〇年以来、世界の年間死亡者は五十万人を超え、アジアとアフリカ大陸に集中する。
〇五年の統計によると、先進国での妊産婦死亡は八千人に一人だが、発展途上国では七十六人に一人で、後発発展途上国では二十四人に一人で、死亡率は先進国の三百倍以上となる。
子どもの死亡率も深刻だ。五歳未満児の死亡の四割が生後二十八日以内で、このうち四分の三は生後一週間で亡くなっている。白書は質の高い医療と十分な栄養、新生児の健康について母親に理解させる教育の必要を訴える。
興味深いのは、日本の戦後の母子保健政策への高い評価だ。妊産婦の死亡率を三分の二減らしたとして、母子健康手帳や乳幼児期から就学直前までの地域ケアに言及している。
国連は一五年までに世界の妊産婦死亡率を九〇年水準の四分の一、乳幼児死亡率は三分の一に減らす目標を掲げ、国際社会の協力を求めている。ここは日本の出番だ。国際支援に一段と力を入れ、命の格差を解消したい。