オッショイ!九州

オッショイ!九州

文字サイズ変更
ブックマーク
Yahoo!ブックマークに登録
はてなブックマークに登録
Buzzurlブックマークに登録
livedoor Clipに登録
この記事を印刷
印刷

福岡・中1自殺:担任の体罰で昨年6月にも「死にたい」と漏らす 3日前にも相談メール

自殺した生徒が友人に送ろうとしていたメール=福岡市西区で2009年1月25日、朴鐘珠撮影
自殺した生徒が友人に送ろうとしていたメール=福岡市西区で2009年1月25日、朴鐘珠撮影

 福岡市西区小戸で19日、登校中に飛び降り自殺した市立内浜中1年の男子生徒(13)が、担任の男性教諭(37)から体罰を受け、昨年6月にも自殺しようとしたことが分かった。体罰は自殺の3日前にもあり、携帯電話には「先生がまたなぐった 電話していい?」と友人に相談しようとした未送信メールが残っていた。遺書はなく体罰と自殺の因果関係は不明だが、同校の薄(すすき)公治校長(55)は「指導が自殺の要素の一つだったとも考えられる」としている。

 校長によると、担任は08年6月、生徒が同じ学級の男子をいじめた疑いを持ち、放課後2日間にわたって理科準備室などで「(男子の)上履きを隠したのはお前だろう」などと問い詰めた。その際、生徒の頭をげんこつで殴り、ひざをけるなどしたという。

 両親によると、生徒はこの日泣きじゃくりながら帰宅し、母親(39)が事情を聴いたところ、体罰を受けたことを明かし「やっていないと言っても信じてもらえない」と話した。さらに「帰り道、車に飛び込んで死のうとしたけど、足が動かなくて死ねなかった」と明かした。驚いた母親は担任に「息子が死にたいと言っている」と連絡。駆け付けた担任は「すみません」と体罰を認めたという。

 校長によると、翌日に校長、担任、母親の3者で面談し、体罰の事実を確認。校長は「行き過ぎた指導をしないように」と担任に伝えたという。しかし、市教委にはこの問題を報告していなかった。

 また今月16日には、担任は生徒が忘れ物をしたとして、クラス全員の前で頭を1発たたいた。携帯に残った友人あての相談メールは翌17日付だった。

 自殺当日、生徒は母親の携帯電話に10回以上かけたが、勤務中だったためつながらず、留守番電話に泣き声だけ残していた。現場に残された通学かばんからは、やり忘れた二つの宿題が見つかった。

 学校は生徒の自殺後に体罰の問題を市教委に報告したが、校長は19日の会見で「(自殺の理由は)心当たりがない」と話していた。薄校長は体罰を市教委に報告していなかった理由について「生徒の様子に変化が現れれば、報告しようと思っていた」と話している。

        *

 「息子を救ってあげられなかった」--福岡市西区で19日朝に飛び降り自殺した中1男子生徒の両親は、自責の念にさいなまれている。生徒は昨年6月にも担任から体罰を受けた後、車に飛び込もうとしていた。「前の週から学校に行きたがらなかった。メッセージを発していたのに……」。だが、担任から最近も体罰があったことを知らされたのは、息を引き取った病院の廊下だった。

 生徒は会社員の父(44)と高校講師の母(39)、小学生の弟の4人家族。下がった目尻が母親似だった。剣道部員で成績も上位だが、「担任に嫌われているかも」と悩んでいたという。

 両親が息子の変調に気づいたのは、自殺4日前の15日だった。先に家を出た母親の携帯電話に、登校前に5回着信があった。留守番電話には鼻をすする音。帰宅後、事情を聴くと「忘れ物は絶対にしちゃだめなんよ」「学校に行きたくなかった」と話した。

 学校によると、担任の男性教諭は忘れ物二つで生徒の頭をげんこつでたたくルールを決めていた。その朝、生徒は学校に持っていく連絡帳が見つからず、ようやく探し当てたが遅刻したという。

 しかし翌16日、別の忘れ物をして担任に頭をたたかれた。17日には担任が顧問を務める部活を休み、「先生がまたなぐった」とメールで友人に相談しようとしていた。

 そして、19日朝。母親は勤務先で息子から10回以上の着信があったのを見て驚く。留守番電話には2度、「う、う、う」と絞り出すような泣き声が残っていた。

 泣き声は、自宅1階にいた父親も聞いた。2階の子ども部屋をのぞくと、電話を手に座り込んでいた。「まだおったんか。はよ行かんか」。登校を見届けた後、気になって、息子が見ていたインターネットの閲覧履歴を見ると、「楽な死に方」などを検索した跡があった。

 飛び降りの一報が入ったのは、その数十分後。泣きながらつぶやいた「行ってきます」が最後のやり取りになった。父は「ネットの履歴を見た時、すぐに追いかけていれば間に合ったかもしれない」と自分を責める。

 一方、母親は昨年6月の体罰で面談をした後も、ずっと学校の様子が気になっていた。しかし「(文句ばかりを言う)モンスターペアレントと思われて、逆に息子への指導が厳しくなるかと思うと、怖くて学校に行けなかった」と悔やむ。

 ようやく聞けたのは、自殺当日の病院。「最近、変わったことはなかったですか」。母親の問いに、担任は「先週末、忘れ物が多かったのでげんこつをしました」と明かした。

 自殺後、学校には教員の体罰を批判する匿名の投書が届いた。遺影の前で、両親は静かに語る。「真実が明らかになって、追いつめられる子がもう出なくなれば、息子も報われると思います。息子は、他に悩んでいる子を助ける運命だったのかもしれません」。【朴鐘珠、高橋咲子】

2009年1月29日

オッショイ!九州 アーカイブ一覧

 
郷土料理百選

特集企画

おすすめ情報