海底のマグマで熱せられた海水の噴き出し口は、レアメタルなどの鉱物の宝庫。開発次第では「資源大国」に――。日本周辺の海底で、鉱物資源を含む「熱水鉱床」を本格的に調べるため、文部科学省は新しい探査技術の開発に乗り出す方針だ。未知の鉱床を見つけて資源量を正確に把握し、将来の商業採掘を後押しする狙いだ。
海底熱水鉱床は、海底から噴き出す熱水に含まれる金属成分がたまってできる数百メートル四方ほどの岩石塊。金、銀、銅、鉛などのほか、ガリウムやゲルマニウムなどのレアメタルも豊富に含む。石油天然ガス・金属鉱物資源機構などの調査で、沖縄や小笠原の海域の深さ700~1600メートルの海底に多数見つかっている。
ただ、今は熱水の噴出を主な手がかりに鉱床のありかを推定しており、厚さや分布の広がりは不明。文科省は、厚さを測るセンサーや無人探査機、噴出が止まった未知の鉱床も見つける広域探査技術などの開発が必要と判断。深海探査に強い海洋研究開発機構の蓄積などを生かす考えだ。
政府は3月に策定した海洋基本計画で、「燃える氷」と呼ばれるメタンハイドレートなどと並び、今後10年程度かけて海底熱水鉱床を商業化する目標を掲げた。日本の排他的経済水域(EEZ)は世界で6番目の広さで、EEZ外でも資源開発ができる「大陸棚」拡大も目指す。海底鉱物利用の可能性は大きい。
海底熱水鉱床の開発は世界でも例がなく、掘削や精錬の技術、生態系への影響評価、経済性評価なども必要になる。全体の道筋は、資源エネルギー庁が今年度中に策定予定の「海洋エネルギー・鉱物資源開発計画」で示される。
http://www.asahi.com/science/update/1116/TKY200811160034.html