日本の屋根 4 【瓦屋根】
瓦 kawara という名称は甲冑の加和良,
サンスクリットの kapala からでたともいわれるが,定説はない。
最初に大陸から導入された形式の瓦は,いわゆる本瓦。
現在も寺院や城郭において普通に見られる。
本瓦は平瓦と丸瓦を交互に葺くもので,
源流は東南アジアの竹屋根,
あるいは年輪に沿って割った板を使う屋根に由来するとも考えられているらしい。
しかしいずれにしろ本瓦は日本には完成した形で導入された。
元興寺に葺かれている現存日本最古の瓦葺きは,
台形のそりのある平瓦に,下が広い円筒を縦に割ったような丸瓦を
重ねて葺いた屋根で「行基葺き」と呼ばれる。
現在の本瓦葺きは下写真の左側のように丸瓦の上部を小さくし,
重ね合わせたときに上側の丸瓦が出っ張らないような構造になっている。

江戸時代の延宝二年(1674年),瓦の歴史としては画期的な考案がなされた。
近江大津の西村半兵衛(NISHIMURA Hambee)による桟瓦の発明である。
本瓦は,重厚で重く,
桟瓦は,軽快で軽いといった特徴を持つ。

本瓦と桟瓦の断面イメージ

本瓦(左)と桟瓦(右)
数奇屋建築などでは軽快な屋根が求められるが,重い本瓦は使えず杮葺であった。
ところが杮葺には耐火性はない。
その点桟瓦は防火の役割も果たし,造形的にも数奇屋にふさわしいものとなった。
面白いことに京都の町屋のほとんどが桟瓦屋根であるのにたいし,
すぐ近くでありながら奈良・大坂や瀬戸内地方の民家は本瓦屋根であった。
すでに江戸時代には桟瓦は相当に普及していたようである。
■ 現在の写真
寺社仏閣,民家は重伝建(重要伝統的建造物保存地区)の町並みを中心に日本の伝統的な瓦屋根を見てみましょう。
重伝建とは,周囲の環境と一体をなして歴史的風致を形成している伝統的建造物群のこと。
つまり,歴史的な風景を保存している町並みのことです。
【本瓦葺】

法隆寺(国宝) 奈良県斑鳩町 7世紀末-8世紀初頭

元興寺(国宝) 奈良県奈良市 1244年
飛鳥~奈良時代の古瓦が使用されていることで有名。
赤い色をした瓦が飛鳥時代(6世紀末),白い色が奈良時代(718年)らしい。

薬師寺 東塔(国宝) 奈良県 730年

三十三間堂(国宝) 京都府京都市 1266年

千畳閣(国重要文化財) 広島県廿日市市 1587年(未完)
軒瓦に金箔瓦を使用。

姫路城(国宝) 兵庫県姫路市 1601-9年

大坂城(国重要文化財) 大阪府大阪市 1620-19世紀半ば

東大寺 大仏殿(国宝) 奈良県奈良市 1709年

東本願寺 御影堂 京都府京都市 1882年
世界最大級の木造建築。

今西家(国重要文化財) 奈良県橿原市今井町 1650年

古市金屋の商家町 山口県柳井市

竹富島の民家 沖縄県竹富町
【桟瓦葺】

二条城 本丸御殿 京都府京都市 1847年

馬場家 長野県松本市
蔵造りの商家 埼玉県川越市

ひがし(Higashi)の茶屋町 石川県金沢市

上賀茂神社の神官の屋敷 京都府京都市
八坂の塔および東山界隈の民家 京都府京都市

石州瓦の町並み 島根県大田市(大森銀山)
■ 昔の写真
三十三間堂 明治時代

京都・祇園四条通り 1872年以前

東大寺 大仏殿 明治中期

大坂城 明治初年
江戸の細川藩邸 19世紀中頃
八坂の塔 明治時代

米屋と土蔵 明治時代?

正月の酒屋 明治時代?
【付録】朝鮮の瓦屋根
朝鮮には日本起源の瓦屋根,桟瓦葺きの伝統建築はありません。
中国伝来の,本瓦のみです。

漢城 崇礼門(南大門) 1890年
漢城 昭義門(西小門) 1880年

平壌 普通門
朝鮮では,両班以上の家でしか
瓦屋根を使うことができませんでした・・・
両班の屋敷(退渓宗家,サンパンsangbangの裏) 安東上渓 1973年
両班の屋敷(両班宗家)安東 1973年
両班の屋敷(退渓宗家門カン) 慶北安東郡土渓 1973年
両班の屋敷(退渓宗家アンチェ) 慶北安東郡土渓 1973年
(=´ω`=)y─┛~~