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「改革には事実認識が必要」―東大・吉川教授

 1月28日に開かれた医療経済研究機構の500回記念大会で講演した東大大学院経済学研究科教授の吉川洋氏は、「(医療の)改革を真の意味で進めていくためには、誇張なく全員参加で進めていかなければ成功しないと思う。そのためには、やはり事実認識だ。できるだけ多くの人が、基本的なことについて合意する必要がある」と述べ、国民が共通の認識を持った上で価値判断をするべきだと強調した。

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■医療崩壊と医療費抑制を結び付けるのは「少し乱暴」

 先進国で医療費が上昇した一番の原因として、吉川氏は医療技術の進歩を挙げ、「高齢化がよく挙げられるが、医療技術の進歩が背景になければ、高齢化が必ずしも医療費を膨らます原因になり得ないかもしれない」と説明。その上で、「その成果として平均寿命が伸びていくのであれば、それを無理やり抑えるのは変なことだと思う」と述べ、国の医療費抑制政策に疑義を唱えた。
 その一方で、吉川氏は「時々、医療関係の方々で、『医療崩壊。何が悪いって、医療費を抑えるからいけない。医療費を上げろ』と言う方がいるが、それは少し乱暴すぎる議論だと思う」と指摘。その理由を「仮に日本全体で医療費が潤沢にあっても、地域の病院で若い医者がいなくなることはあり得ると思う。あるいは、特定の診療科の医者が不足することも当然起こり得る」と説明し、「医療崩壊と呼ばれる問題は極めて複雑で、ただ全体の医療費を増やせばそれで全部解決する問題ではない」と強調した。

■窓口3割負担ではなく、高額療養費制度が重要

 また、吉川氏は国民皆保険について、「マスコミでも国会の議論でも、3割の自己負担をめぐる議論が悪く目立ち、そこだけに注意が集中していると感じてきた」と述べ、「リスクに対するインシュランス(保険)という本来の趣旨からすれば、日本の医療保険制度で大事なことは、いわゆる窓口の3割負担ではなく、高額療養費制度(自己負担に月額上限を定める制度)にあると考えている。問題はこの制度の認知度が低いことだ」と強調した。

 吉川氏はまた、来年度の税制改正関連法案の付則に2011年度以降の消費税率引き上げ方針が盛り込まれたことを評価した上で、「さまざまな改革をしながら、医療を含めた社会保障の機能を強化する必要があるが、強化のためには負担をしなければいけない。消費税を上げるという形で負担増を合意しなければ、日本の社会保障は『中福祉』を維持できないのではないか」との認識を示した。

【高額療養費制度】医療機関に支払った1か月分の一部負担金が自己負担限度額を超えた際、申請後に高額療養費が支給される制度。所得区分が一般人の場合、「8万100円+(総医療費−26万7000円)×1%」。


更新:2009/01/28 22:18   キャリアブレイン

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