認知症患者の介護をする家族の半数以上が、患者に対して虐待的な行為をしたことがあると認めていることが英国の研究により明らかにされ、英国医師会誌「British Medical Journal(BMJ)」オンライン版に1月22日掲載された(印刷版は1月24日号に掲載)。実際に身体的暴力を加えたケースは介護者220人のうちわずか3人とまれであったが、115人(52.3%)が患者に対して何らかの虐待的行為をしたことを認めており、74人(33.6%)が「重大な」虐待をしたと述べているという。
この結果は、認知症患者の介護が極めて難しいことを示すものだと、研究著者である英医学研究審議会(MRC)のClaudia Cooper博士は述べている。最もよくみられたのは、認知症患者に対して叫ぶ、怒鳴りつけるなどの行為(26%)で、侮辱的な言葉や罵倒(ばとう)が18%、介護施設に送るなどと脅す行為が4.4%にみられた。「認知症患者は攻撃的な行動をすることがあり、介護者の行為はそのような状況に対応しようとしたものだ」とCooper氏は指摘する。
英国政府は、雇用された介護者に焦点を当てて、弱者の安全を守るための政策見直しを検討中だが、過去の複数の小規模研究で家庭での虐待行為が3分の1という高い比率で報告されていることから、今回の研究は家庭での介護を対象として実施された。
Cooper氏らは、ロンドンおよびエセックスで認知症患者とともに自宅に暮らす家族との面接を実施した。予想では、介護者の約3分の1が重大な虐待行為を報告し、身体的虐待や頻繁な虐待は少数であると考えられ、ほぼそのとおりの結果が得られた。この研究は介護家庭での虐待の減少を目的とした大規模プログラムの一環として実施されたもので、「虐待を減らす方法を考える前に、実情を正確に知る必要がある」とCooper氏は述べている。
米アルツハイマー協会(AA)のBeth A. Kallmyer氏によると、このような虐待の米国での発生率は不明だという。しかし、同協会は虐待について多数の相談を受けており、24時間テレホンサービスを設けているほか、介護者のストレス判断テストも提供している(www.alz.org/stresscheck)。1人で介護しようとせず、燃え尽きる前に助けを求めてほしいとKallmyer氏は述べている。
同じ号に掲載された別の研究では、高齢者専門の病院施設が有益であることがスペイン、ヘタフェGetafe大学病院(マドリード州)のチームにより報告されている。救急高齢者施設での専門家による治療と、従来の病院施設とを比較する11研究をレビューした結果、専門施設で治療を受けた高齢者は、退院後の機能的能力が高かったほか、3カ月以内の再入院のリスクも低いことが分かった。ただし、この効果が長期間持続するものかどうかを判断するには、さらに研究を重ねる必要があるという。
原文
[2009年1月22日/HealthDay News]
Copyright (c)2009 ScoutNews, LLC. All rights reserved.