諏訪市の諏訪湖流域下水道豊田終末処理場の下水汚泥を処理する過程で出る灰に、多くの金(Au)が含まれていることが、県と日本下水道事業団の調査で分かった。めっき工場や温泉が多い地域特性が要因とみられ、含有量は金鉱石に匹敵するという。金の市場価格は高値水準で推移しており、県諏訪建設事務所は回収した金を売却し、同処理場の維持管理費に充てることを決めた。
建設事務所流域下水道課によると、売却は昨年10月から開始。今月末に初めて収益を得るが、汚泥焼却灰を高温で溶かす過程で出る「溶融飛灰」には1トン当たり約1,900グラムの金が含まれており、約500万円が入るという。
同処理場の焼却灰は、以前から貴金属類を多く含んでいるとされていたが、県が同事業団に委託して2007年度に行った調査で、その含有量は「優良な鉱石と同程度」と判明。金価格の高騰で回収コストを差し引いても採算が取れると分かり、回収・売却を決めた。
今年度は溶融飛灰5トンを金属製錬会社へ売却し、約1,500万円の収益を見込む。同課によると、同処理場にある溶融結晶化施設の維持管理費は約1億7,000万円(昨年度)に上っており、売却収益を充てる考えだ。
県によると、下水汚泥はセメント原料などとして有効利用されるが、温泉がある土地柄上、同処理場の汚泥焼却灰はヒ素を多く含有し、溶融結晶化施設で溶出を防ぐ処理をした上で、人工骨材として利用している。
ただ、この処理の過程で出る溶融飛灰などは人工骨材化できず、これまでは特別管理産業廃棄物として処分。年間700万円近くの処理費用が掛かっていたが、今回の取り組みでこの経費を削減できる利点もあるという。
同処理場には1日約10万トンの下水が流入し、約3トンの灰が発生する。同課は「灰の検査で一定の含有が認められる場合、有価物として売却していく。金価格や含有量で収益に変動は出てくるが、維持管理に活用し、流域下水道利用者へのサービス向上を図りたい」と話している。