模型とキャラ弁の日記 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2009-01-14

白燐弾はどういう兵器でどのように使われてきたか

白燐弾はどういう兵器か

英語圏ではそうではないのですが、何故か日本語圏のネット情報では「白燐弾に焼夷効果は無い」とかのトンデモがまかり通っています。

そこで、中央公論社版図解科学の第21号(昭和18年11月号)に白燐弾(黄燐弾)の詳細な説明が載っていますので、そこから引用して紹介したいと思います。今から60年以上も前の雑誌ですが、それで白燐の物性が変わるわけでもありませんし。

ただ、この雑誌は戦中の本なだけに旧字旧かなで書かれているので、旧字旧かなを読めない人のことも考えて引用にあたって新字新かなに訳しました。

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この黄燐焼夷弾こそは,前大戦直後からいち早くアメリカがその戦術的価値をみとめて研究をすすめて来たもので,現在は化学爆弾の一種として重量30ポンド(約15キロ)の発煙弾WP.M1型として制式になっている.内部の装薬は6キロで,頭部にMkXIV型の安全装置付着発信管をもち,目的は煙幕展張用または焼夷攻撃用となっている.ちょっとみたところ何の関係もなさそうなこの二つの目的,煙幕用と焼夷用の二つを兼ねられるところに黄燐焼夷弾の大きい特徴があり,アメリカ空軍が重用しているのもこのために他ならない.

1920年頃から空軍万能論をとなえだしたアメリカのミッチェルが,反対論者を圧伏させるため廃棄戦艦を爆撃した際にもまず使って見せたのがこの黄燐弾である(第2図).100ポンド(約50キロ)の黄燐弾を戦艦の橋頭に命中させたところ白煙と火沫が瞬時に100メートル以上も飛び散って,あたかも橋を骨とする洋傘状に戦艦をつつんでしまい,その遮蔽力を観衆に認めさせたのであった.これはただの煙幕とはちがい,高射砲などの露出した照準手にくっつくと容易にとれず,火傷を負わせるというので,更にその効果を追認せられたものである(第3図).

このことあってからアメリカ空軍は海上の艦艇ばかりでなく対地上部隊の攻撃にも黄燐弾を使い,一方これを見た陸上の砲兵までが黄燐をつめた煙弾をうち出すという流行ぶりである.こうして黄燐弾に味をしめたアメリカが大戦に加入し,自慢とする4発の援英機を欧州に送った矢先,盲爆戦法をとろうというのだから,秘蔵の黄燐弾を使うのに何の不思議があろう.わが国に対する場合を考えると,黄燐の発火効果がさらに高まるから,当然大量の黄隣弾使用が予想せられるのである.

P3より。

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けれど黄燐の強みは,なんといってもその火が消えにくいことで,数十メートルの秒速をもつ強風を吹きかけてもなかなか消えないという.この性質は火焔剤として極めて大切なことで,例へば火焔放射器の筒口から毎秒数十メートルの速さで燃焼液を吹き出すことに成功し,よしそれが100メートルの彼方に届いたところで,火焔がこの液柱を伝わる速さが液の放出初速より遅かったら火は消えてしまって目的物に着火させることはでぎない.つまり秒速数十メートルの可燃液柱に火が伝わるということは,逆に考えてこの可燃液の表面に秒速数十メートルの風が吹きつけてもなお火が消えないということである.この性質がなければ遠距離へ放射する火焔装置はなりたたないので,火焔放射器ではまず液柱を遠方へ届かせるために粘りのある重油を使う一方,伝火の早い軽油をまぜるのである.こう考えてみると,風に消えにくい黄燐は,着火して秒速数十メートルの高速で飛散させても消えないということは容易にのみこめる.

それに都合のよいことには,ほんの一瞬間焔に接触しただけですぐ着火する性質をもっているから,黄燐焼夷弾の火薬が炸裂する瞬間に火が伝わり,無数の細かい燐片に着火して広い範囲に飛散する.したがってその固形の火焔剤は四方に吹き出す一種の火焔放射器のようなものである.

P5より。

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前に記した黄燐の性質は,燐酸による耐火皮膜の障害を別とすればまさに焼夷攻撃に好都合である.それではこれをどう使用するかというと,着発信管と爆薬をもった爆弾型の容器につめるだけである(第5図).これは空中に投下されるもの故、弾道性能をよくするために尾翼をもつことは勿論であるが、爆弾の仲間ではいちばん構造の簡単な部類に属し,小は数キロから大は50キロ級まで、いずれも似たような構造である.

黄燐焼夷弾が命中したらどんなことになるかというと,まず頭部の信管が瞬時に働いて内部のピクリン酸やTNTなどの強爆薬を爆発させる.このときに発生する高温高圧のガスはドロップ状の一塊になった黄燐ごと金属製の弾体をも粉々に砕き,強烈な力で大音響とともに四方に飛散させる.これは普通の小型の瞬発地雷爆弾の炸裂と同じく,爆風作用や破片作用で建築物や人畜に被害を及ぼすことはいうまでもない.それに加えて黄燐弾特有のはたらきを呈し,高温高圧のガスによって着火した無数の燐片が青白い焔をあげ,火沫は白煙をひいて飛散する(第6図).あたりは濛々たる白煙がたちこめ,飛散した燐片はすぐ溶けて焔かあげて燃えつづける.

ところで消火行動を妨害する白煙が現場を濃く包むのは約1分間で,そのうちに飛散した細かい燐片は煙を出しつくし大きい燐片の発煙だけになって3分もたてば煙は次第に薄らいでくる.もっとも,風があれば煙の消失も早いが,気象状況の如何によって長く立ちこめることもある.

ところで焼夷弾,とくにその大型のものでは,消火は最初の1分で勝負がきまるといわれる.ところが黄燐弾のように同時に煙幕作用を伴うものでは第一に落火点がわからないし,燐片がへばりついて焔をあげている無数の火点を全部発見することは容易ではない.それに発生するガスが刺激性をもち,また二硫化炭素溶液に黄燐をとかしたものを主剤とする黄燐にあっては,二硫化炭素,亜硫酸ガスのような毒性ガスを発生するから,これに対して万全を望むなら防毒面も必要ということになる.少くとも濡れ手拭で鼻やロを覆ふ事は必要である.これがまた消火活動を妨げること一通りではない.そのうえ爆圧による破壊作用で家屋が倒壊したり防火従事者が負傷したりすれば消火は一層困難になる.また火沫が防護服に付着したとすればこれに対する処置もしなくてはならない.

こうした種々の随伴的困難に対して,いざという場合どうするか予め確乎たる方策を定めてかかり,相応した訓練を積んでおくのでなくては,実戦にあたって倒壊家屋と白煙のなかをうろたえまわるだけで何の役にも立つことは出来ない.

それでは対策はいったいどうすればよいかというと,まず黄燐焼夷弾特有の焼夷作用,破壊作用,傷害作用の正体を見極めてかからなくてはならない.

P5-P7より。

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地雷爆弾としての爆風や弾片による殺傷力と黄燐火沫の火傷の加わったものが黄燐焼夷弾の殺傷作用として惹き起されるから面倒である.

20キロ級のものを例にとると,爆風および高熱の爆発ガスによって直接危害をうける範囲は落下点から半径6メートルの程度で,これは20キロ級の地雷爆弾の場合の数分の一にすぎない.けれど,黄燐の飛散火沫による危害半径は約20メートルで,これはまず20キロ地雷弾の爆圧及び弾片の危害半径とほぼ一致する(第9図).ということは,遠方から飛んで来た燐の火沫が着衣に付着しても大した危害にならないともいえる.そのわけは,燐片が空中を飛行しているうちに弾片とはちがい次第に酸化消耗して,直径3センチの塊でも60〜70メートルも飛んで行くうちには殆ど燃えつくしてしまうという.したがって火沫の最大飛散距離が80メートルとか60メートルとかいっても,その辺りでは殆ど威力を発揮できぬと見てよい(第10図).

これに反し黄燐弾の落下点付近ではかなりの火傷を覚悟しなくてはならない.エレクトロン弾はもとより油脂弾の場合よりも火傷者が多いというのは,20キロ弾の例でいうと,炸裂点から半径数メートルの範囲では直接全身火傷をうけ,半径20メートルのところまでは中心に近いほど重く,かなりの火沫をうけて火傷を負うものと心得なくてはならない.この場合,露出した皮膚に火傷をうけるのは当然だが,たとえ衣服をつけていても,溶けた燐とか,黄燐をニ硫化炭素にとかしたものは衣服の生地を透して皮膚に浸透するから,やはり火傷は免れない.

P8より。

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さてここに待避中あるいは出動の中途において黄燐の火沫をうけたらどうするかというに,あわてふためいて一刻も早くもみ消そうとするのが常識的なやりかたであり,また事実反射的にそうする場合が多い.また地面を転がりまわるというのも普通の消火方法であるが,これらはいずれも効果があがらず,かえって火勢を強めることさえあることを忘れてはならない.

P9より。


これらの文から白燐弾の特徴をまとめると、

・煙幕と焼夷の両用兵器

・燃える黄燐が体にくっつくと容易に取れず火傷を負う

・火が消えにくく着火しやすい

・燐酸による耐火皮膜のために対物焼夷効果には劣る一方で対人殺傷力は高い

・燃焼で生成する刺激性ガスや毒性ガスを含む煙が消火活動を阻害する

・爆発で飛び散らされた燃える黄燐の破片は何十メートルも飛ぶと燃え尽きてしまう

・燃える黄燐は燃焼熱で溶けて浸透するので防御困難

といったところでしょうか。

白燐弾はどのように使われてきたか

次に白燐弾が戦場でどう使われたかパウル・カレル著「彼らは来た」から引用して紹介します。「彼らは来た」は第二次世界大戦ドイツ西部戦線での戦闘を主題にした書籍です。引用にあたっては、最近の白燐弾報道で問題になっているのは主に砲撃による白燐弾の使用であることから、明確に砲撃による焼夷兵器としての使用の部分を選びました。

ランジェヴルをめぐる戦闘は白熱化した。イギリス軍ははじめて燐酸榴弾をつかった。炸裂力のほか数メートルの焔をあげ高熱で燃える。

トミー戦車に対する反撃のうち、《桜桃》は決定的にやられた。《シトロン》も損害をうける。小隊のほかの二台も燐酸榴弾で火だるまとなった。乗員はおどりだし、ころげまわって燃える戦闘服を消そうとする。砲火のなかを傷兵たちは最後の可動戦車にのせられた。尾部に傷ついた擲弾兵、戦車兵がうずくまる。大半はひどいやけどではだかが多い。仲間が燃える服をはぎとって毛布をかぶせてくれたのだ。戦車の震動、あつい排気管で彼らはうめく。うめきがやむのは包帯所で鎮静剤の静脈注射をうけてからだ。

P241-242より。

文中、燐酸榴弾は白燐弾。《桜桃》《シトロン》はドイツ軍戦車の車両ごとのコードネーム。説明不要とは思いますがトミーはイギリス軍のこと。

これはイギリス軍とドイツ軍の戦闘の描写部分です。

この文が示しているように白燐弾は敵車両や敵兵を焼くために焼夷弾として使われることがあります。

白燐弾による攻撃でドイツ軍戦車が火だるまにされてしまってますが、これは当時のドイツ戦車の構造的欠陥のせいでもあります。車両後部上方のエンジングリルとか、燃焼熱で溶けた黄燐が流れ込める隙間がいっぱいありますから。

正面からの徹甲弾や上空から降り注ぐ榴弾の破片には耐える戦車もエンジングリルなどの隙間から車内に流れ込む燃える黄燐には耐えられず燃やされてしまうというわけです。

こういう弱点があったのはドイツ戦車だけというわけではなく、ノモンハンの戦いにおいてソ連戦車が日本兵の火炎瓶に結構やられたりしているように、当時の多くの戦車に共通する弱点といっていいでしょう。

一四時、アメリカ軍は黄燐榴弾を撃ちこみ、一発が弾薬庫に命中した。大爆発。大火災。流れだす黄燐が兵舎寝室のわらに燃えうつった。換気装置がなかったので、地下壕は煙とガスに満ちた。

P411より。

これはアメリカ軍によるドイツ軍に対する攻撃の描写部分。

文中、黄燐榴弾は白燐弾。

米軍は攻撃目的でドイツ軍に向けて白燐弾を撃ちこみ、その砲撃で撃たれた白燐弾が弾薬庫を爆発させてしまっています。

燃焼熱によって溶けた黄燐はその流動性と浸透性により防御困難です。

上空から降りそそぐ榴弾の破片をある程度は防げるヘルメットと防弾着も液化して浸透する燃える白燐を防ぐことはできなかったりするわけで、白燐弾はその防御困難性において有効な兵器です。

弾薬や燃料が榴弾の破片程度は防げるように防護されていたとしても、隙間から流れ込み浸透する燃焼熱で液化した黄燐は防ぎにくいものです。

よって、白燐弾をこういう風に焼夷兵器として敵に用いることにより弾薬や燃料の誘爆を狙えるわけです。

アメリカ軍がこういう風に使った白燐弾は「煙幕弾」と名づけられてはいますが、現場でこういう風に焼夷兵器として敵に対して使われるのは当たり前のことでした。

白燐弾は高高度で爆発するように撃てば落下するまでの間に殆どの燐片が燃え尽き概ね煙幕弾としてしか機能しませんが、低高度で爆発するように撃てば防御困難な燃える燐片を地上にばら撒く焼夷弾となるわけです。

彼らは来た―ノルマンディー上陸作戦
パウル カレル
中央公論社
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次は参考情報として漫画「ベトナム2」に収録されている小林源文氏の「コンフリクト2」の白燐手榴弾の使用シーンを紹介。

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P98-P99より。ウィリーピートはWPつまり白燐の呼び名。登場人物が屋内の敵の掃討に白燐手榴弾を用い、それにより敵兵が焼かれてしまっています。

フィクションですので、これを白燐弾が焼夷兵器でもあることの根拠にするつもりはありませんが、白燐弾が焼夷効果を持ち敵の掃討に用いられるということは、こういう描写がされる程度には一般的知識であったことは分かってもらえるのではと思います。現在と違い、白燐弾が焼夷兵器でもあることが日本でも軍事常識だったのはそう昔のことではありません。

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P100より。

「M-34白燐グレネード 肉から骨のズイまでくいこむ」

白燐が煙幕剤であると同時に骨まで焼くような焼夷剤であることはGlobalSecurityのWhite Phosphorus (WP)を見れば分かるように軍事常識です。(ただし、現代日本は除かねばならないようです)


報道の力

それにしても白燐弾に関する日本語圏のネット情報は本当にひどいものです。

白燐弾報道をデマとし「白燐弾に焼夷効果は無い」「白燐弾の対人使用はありえない」なんていうようなトンデモがまかり通っているわけですから。

戦史を紐解けば焼夷兵器として使われているのも対人使用されているのも分かろうというものなんですけどね。

戦後の軍事アレルギーの所為もあるとはいえ、笑えない軍事音痴ぶりです。

ウィキペディア日本語版の白燐弾の項なんて英語版のWhite phosphorus (weapon) - Wikipedia, the free encyclopediaと比べて、とても同じ兵器について書かれたものとは思えません。

ウィキペディア英語版には、軍事常識的には当たり前のことですが、白燐弾が(煙幕弾であるとともに)焼夷兵器でもあることが書かれています。

対して、日本語圏ではこれだけ戦史においては常識的な知識に反することがまかり通るわけですから、戦史的にありえない妄言を吐く田母神氏のような歴史修正主義者が自衛隊のトップになれるのにもなんとなく納得です。悲しいことですけどね。

まあ、社会にトンデモが蔓延することは珍しいことではないので気にするほどのことではないかもしれません。血液型性格診断とかゲーム脳とか「水からの伝言」とか「日本刀は三人しか斬れない」とか「農耕民族は虐殺しない」とか、そういうトンデモって挙げればきりがないですし。

まあ、そういうわけで世界の軍事常識的に普通に考えれば、白燐弾は煙幕弾であるとともに焼夷弾でもあり、1980年ジュネーブでの特定通常兵器使用禁止制限条約,焼夷兵器の使用の禁止又は制限に関する議定書(議定書III)に抵触する兵器です。

アメリカとかが「条約での焼夷兵器にはあたらない」とか言っているのは白々しいエクスキューズというものです。煙幕と焼夷の両方を主目的とし、実戦で焼夷兵器として使っていながら「焼夷効果は副次効果であり主目的ではない」と強弁することで焼夷兵器として使用しても「条約での焼夷兵器にはあたらない」としているわけですから。

そう、アメリカですら副次効果としての焼夷効果は認めているわけです。日本語圏での「白燐弾に焼夷効果は無い」とかいうのがどれだけトンデモか分かろうというものです。

それにしても、人間とは本当に白々しいエクスキューズをする生き物ですね。

チベット問題に対する中国政府の白々しいエクスキューズ。ロシアグルジアの紛争においてのグルジア大統領の白々しいエクスキューズ。沖縄密約における日本政府の白々しいエクスキューズ*1。うんざりします。

軍事で言えば、明らかに民間施設や民間車両を狙っておきながら「そこに軍事標的がいたから」とか、対人使用が禁止されている兵器を人に向けて使用しておいて「装備を狙って撃った」とかが、その手の白々しいエクスキューズの常套句でしょうか。

そういう白々しいエクスキューズを真に受けるのは現実的態度とは言えませんね。

本来は焼夷兵器に対する規制だけで十分なのに焼夷兵器の内で白燐弾のみを個別に明示的に禁止する条約を作る必要があるとすれば、そういう白々しいエクスキューズを用いて焼夷兵器としての使用を正当化しようとする国々があるからというものです。

で、現実は実際にそうなりつつあるようですね。

白燐弾の非人道性を伝える白燐弾報道は日本以外の国では概ね受け入れられているようで、海外の人権団体は規制に向けて動き出しているようですから。

白々しいエクスキューズを抜け道として使う国に対し、そのような抜け道を塞ごうとする動きを作り出したわけですから白燐弾報道は偉大です。

思えば、焼夷兵器の使用を明示的に禁止する条約が作られたのも、(逃げ惑う少女とか犠牲者のケロイドとか)ベトナム戦争における焼夷兵器の非人道性を伝える報道がなされた影響が少なくないわけです。それを考えると報道の力とは凄いものだと思います。

そういう風に考えれば規制への流れは当然というものなのかもしれません。白燐弾報道はデマというデマがまかり通るような日本がそういう流れを主導することはなさそうですけど。まあ、日本は「ネットで真実に目覚めた人」や「ネットが無ければ危うくマスゴミに騙されるところだった人」とかがたくさんいる「とてつもない国」ですから仕方が無いですね。仮に白燐弾のみを個別に明示的に禁止する条約が作られるとして、せいぜい、他国の後を追う形で批准するのが関の山ではないかという気がします。不名誉なのでそうなってほしくはないのですけどね。

せめてもの救いは対人地雷クラスター弾の場合と違って規制に対する不満を愚痴り続ける人は少なそうなこと。

追記

何かブクマコメでトラックバック送ればいいのにと言われたので、ブクマコメに書いてあるアドレスにトラックバックを送っときます。

http://obiekt.seesaa.net/article/9941732.html

私自身がこの人からトラックバック送られたことがないのですけどね。

*1:米国公文書でその存在が明らかになっているというのに

BLACKBIRDBLACKBIRD 2009/01/18 16:18 漸く、白燐焼夷兵器に付いての日本語解説サイトに辿り着けました^^;。
燐に付いては実際に扱った事が無く、科学/化学的知識が無いので困ってました。
困った時には昔の文献が役に立つ典型ですね。
軍事趣味の人達の間で、どうも官僚的に情報を取捨選択する傾向が有るのは困る傾向だなぁと思います。
ま、自分は弾薬・火器類はとんと駄目で、飛行機船舶の類の兵器に興味が有るってのも単なるメカ/機械好きの延長上に過ぎなくて…色々勉強せねばなぁと思う所です。
って言うかやっぱり人を殺傷する原動力の物体、弾薬・砲弾・銃器・ミサイルの類っておっかなくて情動的に受容出来ないヘタレの精神構造でして…。
戦闘機は曲芸飛行だけやってればいいと思ってばかりで、弾薬ミサイルキャリアーが本分の爆撃機とかは苦手だったり、戦艦・空母は見た目だけが好きだったり。
本当に助かりました。
有難う御座いますm(_ _)m。

BLACKBIRDBLACKBIRD 2009/01/18 16:43 自分にとっての戦争のイメージはやっぱり先の戦争(大東亜戦争)とベトナム戦争です。
ベトナム戦争は特に戦場報道写真でのミンチに成った人体/肉塊を銃で事も無げに引っ掛けて様子を見ている(?)米兵の写真が忘れられないです。

D_AmonD_Amon 2009/01/19 11:36 どういたしまして。
私の場合、興味の中心は兵器自体より人間の行動の記録である戦史なのですが、戦闘機や戦車や戦艦も好きです。多分、「力の象徴」的に。
戦史には犠牲者の惨たらしい遺体の写真も載っていたりして、カミさんはそういうのを見るのを嫌がります。
私も、風呂桶の中で抱き合って黒焦げになっている母子の写真、おそらく焼夷弾による火災の中でそこに逃げ込んだものの苦しい死を遂げたもの、とかは思い出すたびに悲しい気持ちになります。

BLACKBIRDBLACKBIRD 2009/01/19 19:01 M34 Smoke WP
http://www.lexpev.nl/grenades/americas/unitedstates/m34smokewp.html

有名ハリウッド戦争映画"Platoon/プラトゥーン"にもM34は出演済みでした。
自分も映画館で見たのですが携行兵器・小火器の知識は皆無なので当然気付いてないです。

Platoon imfdb
http://www.imfdb.org/index.php?title=Platoon
M34 White Phosphorous Grenade
http://www.imfdb.org/index.php?title=Platoon#M34_White_Phosphorous_Grenade

D_AmonD_Amon 2009/01/19 19:45 映画内でM34を地下道の破壊に使っていたのですね。
「白燐煙幕弾」はベトナム戦争の頃までは焼夷目的や殺傷目的などで盛んに使われていたそうですから、それが反映されたのだろうと思います。

BLACKBIRDBLACKBIRD 2009/01/19 23:22 湾岸戦争以後のアメリカのメディアに対する情報コントロールは巧妙に成りネットで情報発信・流通が活発化してるにも関わらず、戦場の情報って減っている気がするのです。
単なる杞憂かもしれないのですけど…。

湾岸戦争当時、菊花・桜花の電脳無人化兵器進化版、巡航ミサイルやスマートボムが精密爆撃と称して、コンクリートの建物を破壊する様子の白黒のカメラ動画映像で繰り返し流される戦場から人の気配の無い無機的テレビニュース映像が当時、実に恐ろしくて…。
今は最前線の戦場の兵士、ジャーナリストも戦争の全容を捕らえ辛くなっているんじゃないかと思っています。

米軍のRQ-4グローバルホーク等の偵察機でUAV/無人機の運用が本格化し、MQ-1プレデターの対地攻撃機迄現れ、米海軍次世代機は無人戦闘攻撃機(UCAS: Unmanned Combat Air Systems)のX-47Bが検証中ですし、米空軍のF-22,F-35は繋ぎで、本命はUAV/無人機が主力に成る可能性も考えられますし、陸軍も戦闘車両の無人化、UGVの研究を本気でしてるみたいですし、又、民間無人ロボット車両のラリーレースでVWの四輪駆動車改造の無人車両の高度な地形把握能力・走破能力は証明されてますし、米軍が戦場に投入する軍事力は何れは無人化兵器が主力を担いそうで…。
無人化兵器=ロボット兵器=命令を忠実にこなすだけだけの血も涙も無い殺戮兵器、敵を一人残らず「浄化」する機械化兵士の為政者の夢を実現する…。
実に恐ろしい時代に突入しつつあるんじゃないかと。
国民/兵士が死なない軍隊を持てば、為政者/政府は自国の生身の兵士の死傷を危惧する世論を気にせず躊躇無く軍隊を送り込め、軍事力を行使出来ますし。

D_AmonD_Amon 2009/01/20 10:17 米軍自体がジャーナリストを自軍の行動に随伴させて報道させたい内容の報道がされるように図っていたりしていたりする影響か、軍事行動の残酷さを感じさせるような報道は減っているような気がします。ただ、ベトナム戦争でその手の報道で国内の反戦運動が盛り上がった米国としては、自軍兵士の士気のためにも必要上そうせざるをえないところがあるとは思います。

戦場の無人化はこれからもどんどん進んでいくと思います。
その結果が、自軍の人命を気にせずに軍事力行使することが可能ゆえに軍事力が気楽に行使される世界だったりすると嫌ですね。
そうならないために民主主義の基本として、国民による権力の監視と国民自体の資質が問われるのだと思います。

Dr-SetonDr-Seton 2009/01/20 23:03 丁寧なエントリーご苦労様です。
ちょっと関わるか微妙ですが、スピルバーグの「ミュンヘン」で、暗殺に白燐爆弾を使う、というシーンがありました。しかも、飛び散って高温で燃焼する、という説明付きで。
ところが原作の「標的は11人」では、その部分は「マグネシウム」を利用した爆弾なんです。わざわざ原作と設定を変えたのは、おそらくスピルバーグにファルージャの事が念頭にあったから、と思われます。「ミュンヘン」自体が「イラク戦争」は「9.11」に対する過剰防衛じゃないの?という提示ですからね。スピルバーグが映画で告発する程度には、白燐弾はアメリカでも問題視されていた、と思います。

それにしても、代用焼夷弾として白燐弾が使われたなら、それの「本来の」目的が煙幕だとしても、危険性と非人道性、違法性が問われるのは当然だし、少なくとも第三者が弁護する動機は無いように思うんですけどね。

D_AmonD_Amon 2009/01/21 00:28 コメントどうもです。
興味深い設定変更ですね。
白燐の効果に関してはベトナム戦争の経験からアメリカでは分かっている人が多いと思いますし、そういう風な表現として「告発」がなされるということも十分にありえることだと思います。
私には白燐の焼夷性を否定するような非科学的なことをしてまで白燐弾報道を否定するようなことをしていた人々の存在にこの社会の病を感じます。

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