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メタボリックシンドローム本体は内臓脂肪の過剰蓄積
監修:大阪大学大学院医学系研究科 内分泌・代謝内科学 准教授 船橋 徹 先生

体脂肪と肥満

脂肪の役割
美容健康を考えるとき、「皮下脂肪」は目の敵にされがちです。
特に女性は、「やせてきれいになりたい!」とダイエットにはげみ、必要以上に脂肪を落としてしまうことも少なくありません。しかし、適度な体脂肪は健康を維持する上で大切であり、また女性にとっての適度な脂肪は、妊娠・出産のために重要となります。
体脂肪には、「内臓脂肪」と「皮下脂肪」の2種類があり、共通してエネルギーを貯蔵する重要な働きがありますが、違った性質も持ち合わせています。
内臓脂肪と皮下脂肪の特徴
内臓脂肪
皮下脂肪
  • エネルギーの一時的な貯蔵
    (摂取・消費カロリーバランスに迅速に反応する)
  • 内臓のまわりの腸間膜(ちょうかんまく)に蓄積(外からつまむことができない)
  • 内臓を正しい位置に保ったり、衝撃をやわらげるクッションの役割
  • 長期的なエネルギーの備蓄や放出(摂取・消費カロリーバランスにゆっくりと対応する)
  • 腰まわり、おしり、太ももなど皮膚の下に蓄積(しっかりとつまむことができる)
  • 体温の保持、他に外からの衝撃をやわらげるクッションの役割
「脂肪」はエネルギーバンク!?
内臓脂肪は、日々の活動に使われるエネルギーを簡単かつ速やかに出し入れできる普通預金。そして皮下脂肪は、エネルギーを長期的に備える定期預金にたとえることができます。 内臓脂肪は、皮下脂肪に比べて代謝が早く、蓄積もしやすいですが、食事制限や運動を心がけるだけで比較的減りやすいことが知られています。日々の生活を見直し、「ベルトの穴が一つ減る」というような効果としてあらわれるので、内臓脂肪は、皮下脂肪よりも速やかに減りやすい、努力が報われやすい脂肪組織ともいえますね。
肥満とは?
脂肪が体につきすぎた状態を一般に「肥満」といいます。内臓脂肪がついた内臓脂肪型肥満」と、皮下脂肪がついた皮下脂肪型肥満」には、大きな違いがあります。
 
内臓脂肪型肥満
皮下脂肪型肥満
性別の傾向
男性に多く見られる
女性に多く見られる
体型
お腹がぽっこり出っ張ったりんご型
お腹がぽっこり出っ張ったりんご型
下半身に脂肪がついた洋ナシ型
下半身に脂肪がついた洋ナシ型
横から見た様子
横から見たりんご型
横から見た洋ナシ型
*:女性でも内臓脂肪型肥満がいます。
女性は、閉経後に内臓脂肪が増える傾向があります。
写真提供:松澤 佑次 先生
同じ肥満でも、脂肪がどの部分に蓄積するかによって種類が分かれ、それぞれ違った特徴があります。“肥満は万病のもと”という言葉がありますが、近年の研究から、肥満による病気の発症には、「肥満の程度」より「脂肪の蓄積する部位」が重要であることが明らかになってきました。 特に「内臓脂肪の蓄積」が糖尿病、高脂血症(脂質異常症)、高血圧症など生活習慣病の発症や、動脈硬化性疾患に深く関係していることがわかってきました。
内臓脂肪の増大はウエスト周囲径(腹囲)の増減に反映され、男性で85cm以上、女性で90cm以上あれば、内臓脂肪型肥満が疑われます。
男性に比べ女性の腹囲のほうが大きく設定されていますが、男女ともに同じ量の内臓脂肪が蓄積していた場合、女性のほうが腹部の皮下脂肪が多いことが考慮されたためです。
性別による脂肪分布の傾向
写真提供:松澤 佑次 先生
では、腹囲が基準値(男性85cm以上、女性90cm以上)を超えていれば、メタボリックシンドロームと診断されるのでしょうか。