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金沢“GK”克彦のこちらプロレス村役場ドットコム

1961年12月13日、北海道帯広市出身。青山学院大学卒業後、新大阪新聞社に入社。“I編集長”こと井上義啓氏のもとで『週刊ファイト』編集部でキャリアをスタート。その後、日本スポーツ出版社『週刊ゴング』編集部へ。99年から04年まで編集長を務める。05年に同社を退社。以後はフリーランスとして幅広く活躍中。テレビ朝日系『ワールドプロレスリング』やサムライTV等で解説を務めるほか、『kamipro』でも執筆。著書に『風になれ』(東邦出版)、『力説』(エンターブレイン)。通称GK(=ゴング金沢)。

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1月29日更新

養豚場で人生の悟りを開く?“平成の寅さん”安田忠夫は生きていた!


安田忠夫がいま現在どんな生活を送っているのかフォーカスしてみよう


この1ヵ月ほど、ある男からやたらと電話&メール攻撃に見舞われている。失踪していると思いきや、2月1日&3日のチーム・ベイダー興行2連戦(東京・新木場1st RING)に突然の参戦が決定した安田忠夫である。この男、いったいどこで何をやっているのやら? 別に気にならないといえば本当になるし、気になるといえば嘘になる(笑)。

ただし、こんなに毎日毎日、電話&メール攻勢に襲われると、嫌でも安田の存在がつねに私の頭の片隅にインプットされた状態になってしまうのだ。べつに、上京したときに会場で話したり、メシでも食って話せばいいものを、なぜか安田は長電話をしたがる。先だってなど1時間強である。しかも、向こうから掛けてきて、私が電話を取った瞬間に、「オヤジ、わりい。金かかるから掛け直して!」と一言いってプチッと切るのだ。しょうがない。いままで安田と15年付き合ってきて何の得もなかったけれど、貸しっ放しの3万2000円の件もあるので、絶縁したらこっちが損をするではないか。そんなわけで、“平成の車寅次郎”こと安田忠夫がいま現在どんな生活を送っているのか、少しばかりフォーカスしてみようと思う。

一昨年10月の自殺未遂騒動から「閻魔大王にもキックアウトされちゃいました!」の名言と共に、名実ともに復活してきた安田を救ったのは、やはりアントニオ猪木だった。猪木の言う「馬鹿になれ!」をそのまんま実践してしまった不肖の愛弟子(?)を再抜擢した猪木は、07年の12.20『GENOME2』(有明コロシアム)、それに続く08年の2.16『GENOME3』(有明コロシアム)への安田参戦を許した。同時進行で、猪木の紹介により安田は大手パチンコチェーン店に就職。その新潟店でサラリーマン生活を送っていた。

ところが、そこでも2ヵ月ともたずに再び無職となった安田は、青森県大間町の友人のもとで居候生活へ。そこでまたしても救いの神が現れる。というより、救いの神のもとへ押しかける。6月〜7月にかけて、猪木が映画撮影(アカシアの花が咲きだすころ/辻仁成監督)のため、函館で缶詰状態となっていたのだ。それを見逃す安田ではない。津軽海峡を泳いで……いや、船の片道切符だけを購入して師匠のもとへと押し掛けたのだ。

昨年10月末、3ヵ月の研修期間を義務付けられた安田は八幡平の養豚場に向かった


正直、私も猪木の気持ちが少しだけ理解できる。しかしながら、私とアントニオ猪木の決定的な違いは、この度を越えた不肖の弟子を猪木の場合、底なしの度量でまたも受け入れてしまったこと。猪木の親心によって再び上京した安田は、8.15『GENOME6』(両国国技館)でメインのリングに向かう小川直也を急襲した。これで、安田のIGF復帰は確定と見られていたものの、またも安田は姿を消した。本人いわく「本職がないと食っていけない」との話だった。このとき、安田のために一肌脱いだのが、これまた安田と15年の付き合いで何一つ得をしていないケンドー・カシン。

現在、早稲田大学の大学院生であるカシンは、実家(青森県)で経営する『トキワ養鶏』グループの養豚場(岩手県八幡平市)での仕事を安田に紹介したのである。昨年10月末、まずは3ヵ月の研修期間を義務付けられる恰好で、安田は八幡平の養豚場に向かった。

「いやあ、ビックリしたなあ。俺は鶏の世話をすると思っていたのに、相手は豚さんだもん。これがでかくなると250〜300キロあるわけよ。最初は恐怖だよ。だって、アンドレ・ザ・ジャイアントより重いんだからな……見たことないけどね(笑)。小錦(KONISHIKI)ぐらいの重さだろ? それが向かってきたときは逃げたもんなあ」

そんな恐怖心もやがては消えて、なんだかすっかり仕事に溶け込んでいる模様だ。「豚さんってね、臆病だけど、好奇心旺盛で頭もいいし、こっちの気持ちが通じるんだよな。俺が可愛がって面倒を見ると寄ってくるし、こっちの機嫌が悪いときは近寄ってこないし、逆に噛まれるもん。デカイのに脚を噛まれたり、足踏まれたりするとさすがに痛いもんな。やっぱり集団でいると、人間社会と同じよ。喧嘩もするし、ちょっとしたイジメもあるし、そこで毎日世話してる豚に死なれると悲しいわな。なぜ死んじゃったのかなあ?って原因を考えても答えが簡単に見つからないからね」。

嗚呼、安田忠夫なのだ。一般人としての社会生活、サラリーマン生活にイマイチ適合できなかった男は、養豚場での労働を通じて人生を見詰め直し、何か悟りを開きつつあるかのようだ。もしかしたら、これが天職というものなのか? それはともかく、2年前に私が貸した3万2000円をいつ返してくれるのだろうか!?