現行法では銀行のみに認められている送金など為替取引を、ほかの業者にも認める新制度の創設が今国会に提案される。金融決済の環境が内外で大きく変化していることに加え、金融イノベーションに対応した改革措置である。
この問題は、07年末に策定された金融・資本市場競争力強化プランに、安全かつ効率的で利便性の高いシステムなどの構築として盛り込まれて以来、課題となっていた。欧米諸国ではこうした業務は送金業や決済サービス業として免許制や許可制で認められている。
昨年5月から金融審議会で、金融技術の進展や利用者利便を高める改革の方向について検討が行われ、送金サービスの開放などで意見の一致をみた。
現行の銀行法に基づく銀行は預金や融資を扱うことが根本にあるため、各種の規制が厳しい。銀行以外の業種が送金業を営むためには、この規制をクリアしなければならず、送金業など為替取引は銀行の独占となっている。
その結果、送金手数料が諸外国に比べて高く、消費者は不利益を被っているといわれる。また、海外送金の手数料高は非合法な地下銀行などを生み出しているともいわれる。
インターネットバンキングの普及で国内送金手数料は安くなる傾向にはあるが、新規参入が実現すれば、新たな競争により、手数料のみならずサービス内容の改善も期待できる。
その場合、争点になるのが、受け入れた資金の保全や、資金移動の確実性をどこまで求めるかである。手数料などを低く抑えるためには、銀行並みの安全性や確実性を求める必要はないとの意見もある。基本は、決済に支障が生じないことを優先した、簡便な送金業の制度設計である。
そうはいっても、実際に新規参入がなければ消費者利便も高まらない。日本の経済界はこれまで声高に規制改革を求めてきた。東京金融市場の活性化のためでもある。経済界は積極的に取り組むべきだ。
このところの世界的な金融危機で、金融分野では必要な規制については強化の方向にある。しかし、消費者保護措置を取った上での銀行の独占分野の開放はそれとは別物である。
また、今回の金融審ではコンビニエンスストアでの公共料金などの収納代行サービスや、宅配業者の代金引き換えサービスの扱いも論点となった。いまや、国民生活の中で必要不可欠のサービスとなっているが、法律的には不安定なままだ。
今後とも、利用者保護や確実な決済の確保などの観点から、制度整備に向けた議論が必要だ。そのためにも、これらのサービスを実施している事業者やその所管官庁と金融当局、消費者が共通の認識を形成する必要がある。
毎日新聞 2009年1月29日 東京朝刊