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景気を語るこの指標

(09/01/29)ウォン急落に続き、実体経済の急速な悪化に直面する韓国(平塚宏和氏)

 次に、対外債務の状況をみると、06年以降の「その他投資」項目における資本流入拡大が示唆するように、債務残高が急速に拡大している(図表2参照)。内訳をみると、銀行部門の対外借入残高が拡大している。こうした状況の下で、世界的な金融危機の影響により金融機関の外貨資金調達環境が悪化し、対外債務の借り換えが困難となったため、返済のためのドル需要が高まり、ウォン相場の急落をもたらしたとみられる。

 第3に、証券市場からの資金流出も、ウォン相場下落の一因と考えられる。金融危機の深まりにより海外投資家がリスク資産を圧縮し、安全資産・流動資産に逃避する傾向が加速したことで、韓国の株式市場も下落基調となった。証券市場への海外資金の流出入状況をみると、08年1〜11月の外国人の株式投資資金流入額は2966億ドルであったが、流出額が3383億ドルとそれを上回ったことから、ネットで417億ドルの流出超となった。同期間に居住者の対外株式投資資金の国内回帰が65億ドルあったものの、これを差し引いても株式投資資金はネットで352億ドルの出超となった。一方、08年1〜11月の外国人の債券投資資金はネットで49億ドルの流入超であったが、株式市場からの流出が大きく、証券投資全体として資金の流出額が流入額を上回った。

 最後に実体経済面で08年に入ってインフレが加速したことも、一定程度ウォン安圧力をもたらしたとみられる。消費者物価上昇率は07年11月に前年比3.6%と韓国銀行の目標レンジである2.5〜3.5%の上限を超え、08年6月以降は5%台で推移した。総合消費者物価上昇率だけでなく、農産品・石油製品を除くコアインフレ率も6月以降前年比4%を超えた。

08年末以降、為替相場は小康状態

 08年10月以降、韓国政府は、ドル流動性の需給緩和を通じてウォン相場の安定化を目指した。10月には韓国銀行による通貨スワップや競争入札及び政府系韓国輸出入銀行を介したドル流動性供給の実施や、銀行の対外借り入れに対する最大1000億ドルの政府保証付与を開始した。10月30日に韓国銀行は、ドル流動性供給の原資を拡充するため、米連邦準備理事会(FRB)と通貨スワップ協定を締結し、最大300億ドルのドル・ウォンのスワップ枠を確保した。韓国銀行は、これまでに164億ドルを利用し、公開入札を通じて銀行にドル資金貸し付けを行っている。

 さらに、12月12日には、アジア各国が緊急時に 外貨を融通し合う通貨交換協定「チェンマイ・イニシアチブ」に基づき日本、中国と締結している2国間通貨スワップ取極(とりきめ)を増額することを発表した。日本との間では、円・ウォンのスワップ枠30億ドル相当を200億ドル相当に増額し、既往のドル・ウォンのスワップ枠100億ドルと合わせて300億ドルとした。また、中国との間では、元・ウォンのスワップ枠40億ドルを300億ドル相当に増額した。このほか、韓国銀行は矢継ぎ早かつ大幅な利下げや、レポを通じた資金供給オペレーションの拡充などの措置を講じている。

 こうした韓国当局の重層的な対応に加え、米国をはじめとする各国当局により景気刺激策や金融安定化策が立て続けに打ち出されたことで、内外の金融市場はやや落ち着きを取り戻した。年末にかけてウォンの対ドルレートは1300ウォン台まで回復し、その後は小動きの展開が続いている。

 前述のウォン安をもたらした要因のうち、経常収支は、資源価格の下落を反映して輸入が減少したことや、大幅なウォン安の効果で旅行収支が約7年半ぶりに黒字化したことから、10月以降、改善している。消費者物価上昇率も、食料・エネルギー価格の下落に伴い低下に向かっている。ただし、当面は銀行部門の対外債務返済によりドル需給が逼迫(ひっぱく)しやすい状況が続くため、為替相場は弱含みの展開が続くだろう。

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