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主張救急搬送 重症患者の命救うシステムに

公明新聞:2009年1月28日

急増する出動回数の抑制策は必要

 救急車が通報を受けてから患者を医療機関に搬送するまでに要した時間は全国平均で33・4分と過去10年間で最長――。総務省消防庁が22日に公表した2008年版「救急・救助の現況」は、救急搬送の深刻な実態を改めて浮き彫りにした。

 「現況」によると、07年中に全国で救急搬送された計490万2753人のうち、医療機関までの到着時間が「30分~1時間」の人が最も多く、216万1931人(44・1%)に上った。次いで「20~30分」(35・7%)、「10~20分」(13・6%)。「2時間以上」も1万7580人おり、うち9282人が急病人だった。

 救急患者の受け入れ先がなかなか決まらない問題が全国的に多発しているが、それを裏付ける数字といえよう。

 また、医療機関までの平均所要時間を地域別で見ると、東京が47・2分で最長。埼玉39分、千葉37・1分、岩手・茨城・栃木36・3分と続いた。医療機関や医師が集中し、交通網も整備されているはずの首都圏、特に東京での搬送の遅れは、昨年、妊婦が多くの病院から受け入れを拒否され死亡した事件でも指摘されたように、救急システムが機能不全に陥っていることを物語っている。

 救急システムが機能しなくなった要因の一つに、救急車の出動回数の急増が挙げられる。07年に全国で救急車が出動した件数は529万236件と、この10年間で約1・5倍に増えた。一方、救急隊数は10年間で約8%の増加にとどまっており、受け入れる医療施設・救急医も慢性的な不足状態が続いている。

 しかも搬送者の過半数は軽症だ。心肺機能停止状態の傷病者の発生など一刻を争う局面で、迅速に対応できない問題を生じている。重症患者の命を救う、救急医療本来の機能を回復するには、軽症者の受診を他へ回す方策が欠かせないだろう。

事前に患者を選別

 その点、フランスでは、救急搬送を受け付ける段階で患者を振り分ける救急システムを導入している。24時間常駐の医師が救急電話に応答し、緊急の治療が必要と判断した場合のみ救急車を手配する仕組みで、年間約1000万件に上る通報に対し、救急出動を65万件に抑えているという。わが国でも、119番通報を受けた時に緊急度・重症度を選別する「コールトリアージ」について、導入に向けた検討が進められているところだ。横浜市は昨年10月から、患者の症状に応じて出動する救急隊員の数を増減させるコールトリアージを全国に先駆けて開始しており、その成果に注目したい。

 救急医療体制の整備をめざし、公明党は、関係機関の視察・調査をもとに、救急搬送システムの改善や情報システムの構築、医師・看護師不足の解消、ドクターヘリの全国配備などを提唱してきた。搬送時間を短縮し、重症患者に迅速・的確に対応できる救急医療の実現へ、さらに全力で取り組む決意だ。

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