喫煙の害について、米国で「サードハンドスモーク」という概念が提唱され、話題になっている。たばこを吸った室内に煙が吸着して有害物質が残り、その場が汚染されるというもの。「セカンドハンドスモーク」(受動喫煙)に続く害と考えられ、識者らは「子どもがいるなら、家庭内は完全禁煙を」と呼びかけている。
「サードハンドスモーク」は今月、米国小児科学会誌に掲載された米マサチューセッツ総合病院の小児科医らが執筆した論文で用いられた。05年9~11月、2000人に聞いて有効回答の1478人分を分析したところ、非喫煙者の95.4%、喫煙者の84.1%が、受動喫煙は子どもへの健康被害になると答えた。しかし、たばこを吸った部屋に翌日子どもが入った場合について同様な認識を示したのは非喫煙者の65.2%、喫煙者の43.3%にとどまった。さらに、「サードハンドスモーク」の認識がある家庭は、完全禁煙にしている割合が高かった。
04年に報告された米サンディエゴ州立大学の心理学講座の研究では、家族の中に喫煙者がいない家庭▽母親は喫煙者だが子どもと同じ部屋では吸わない家庭▽子どもに配慮せず吸う家庭--で、居間と子どもの寝室のほこり、家具の表面や空気中などのニコチン濃度を比べた。これらのデータを統計処理して試算した全体的なニコチン濃度は、配慮せず吸う家庭は同じ部屋で吸わない家庭の3~8倍、同じ部屋では吸わない家庭も、喫煙者がいない家庭に比べ5~7倍だったという。
小児科医らでつくる「子どもをタバコの害から守る合同委員会」の原田正平医師は「小さい子どもは床や家具に顔が近く、有害物質を摂取しやすい。日本でもサードハンドスモークについて適切な日本語訳を公募するなどキャンペーンを企画して、認識を広めていきたい」と話している。【柴田真理子】
毎日新聞 2009年1月28日 15時00分(最終更新 1月28日 15時15分)