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【コラム】李大統領、左派との戦い(下)

 そこには政策が正しいのか、誤っているのかという論争は介在しない。何か問題が生じれば、「待ってました」と言わんばかりに対立をあおり、憎悪の拡大再生産を図ろうとする。そして、あたかも力が強い者が弱い者を搾取しているかのような印象を与えようとしている。その背後には、李大統領の北朝鮮に対する厳しい姿勢を改めさせようという脅しが隠されている。左派の中でも特に、北朝鮮寄りの勢力が問題だ。

 李大統領が事態の深刻さやその要因をきちんと認識すれば、見通しは明るいものになるだろう。それはたとえ政敵であっても幅広く起用し、左派との戦いを宣言し、大統領としての職務を急進的に進めていくというものだ。米紙ニューヨーク・タイムズのコラムニスト、トーマス・フリードマン氏は最近執筆したコラムで、オバマ米大統領に対し「“日常”から早く決別する」ことを求め、これまでの慣習や慣行に従って大統領としての職務を遂行していては、米国を救うことはできない、と注文した。われわれが今、この時点で李大統領に求めるべきことも、「日常」からいち早く決別し、ダイナミックな変身を遂げるということだ。

 それは一国の大統領が21世紀の序盤において、国のためにすべきことの優先順位が何なのかについて、深く省察することから始めなければならない。今や、李明博という人物が大統領として国民の信頼を回復し、経済を再生し、経済成長率を引き上げ、大運河を建設するといった業績を作り上げることは容易ではないと思える。李大統領が改めて国民統合の象徴たる指導者として生まれ変わることもまた困難ではないかと思える。左派が足を引っ張り食い下がるという状況の中で、李大統領がすでに弱みを見せてしまっているからだ。

 だとすれば、李大統領がこうした環境の中でできることは、ポピュリズムに訴えるのではなく、所信に従って毅然とした態度で真っ直ぐに政策の道を進むということだ。もはや左派を手なずけ、経済を再生させ、安全保障も確立できるという「万能指導者」を目指す必要はない。大統領選の際、10年間の左派政権を経験した国民が李大統領に何を求め、そして李大統領が国民に何を約束したのか、初心に帰ってその一つだけでも成し遂げることだ。

 短い期間ではあるものの、李大統領はこの1年間の経験を通じて、自分の前に立ちはだかる問題が何なのか、どこまでが自分の限界なのか、そして少ない選択肢の中から自分ができることは何なのかを追求し、その答えを出さなければならない。左派との戦いが避けられないのであれば、自分の足を引っ張る左派の手を振りほどくためにも、その戦いに果敢に挑んでいかねばならない。左派に押されてばかりいては経済の再生も不可能だ。それこそが、失敗の中から成功を導き出す道であり、「李明博」の名を後世に残す道だ。

金大中(キム・デジュン)顧問

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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