裁判員制度に関する毎日新聞の全国世論調査で、一般市民が死刑判決に関与することへの反対が6割を超えた。制度導入の際、国民が死刑判決にかかわることを巡る論争は高まらなかった。施行3年後の制度見直しを見据え、継続的な検証と国民的な議論が求められる。
調査では56%の人が裁判員制度を「評価しない」と答えた。このうち83%が、一般市民の死刑判決関与に反対した。人の生死を左右しかねない不安が、制度への抵抗感の大きな要素になっていることがうかがえる。
重大事件を裁判員制度の対象にしたのは、国民の関心が高く社会的な影響も大きいためだ。フランスやドイツなども、市民が裁判官とともに有罪・無罪と量刑を判断する参審制を採用しているが、死刑制度がなく、日本とは事情が異なる。
これまでに全国で500回以上の模擬裁判が行われたが、最高裁は「シミュレーションに過ぎず、裁判員の心理負担は分からない」などと死刑想定事件を題材にしなかった。しかし、弁護士の一部からは「問題点を探るため不可欠だった」との声も根強い。
内閣府が04年に実施した世論調査では、死刑存続を認める意見が8割を超えたが、プロの裁判官による判決を前提とした結果だ。裁判員制度の導入は死刑制度の是非を巡る議論を呼ぶ可能性もある。
被害者や社会の厳罰を求める声と、死刑選択の重さの間で、裁判員が心理的に大きな負担を抱えることは容易に予想される。裁判員の心のケアの充実も必要だ。【北村和巳】
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◆5月から一般の市民から無作為に選ばれた人が裁判員になり、裁判官とともに殺人などの重大事件を裁く「裁判員制度」が始まります。この制度を評価しますか、評価しませんか。
全体 男性 女性
評価する 35 42 27
評価しない 56 54 58
◆裁判員に選ばれた場合、参加することは国民の義務です。あなたは選ばれた場合、どのような姿勢で臨みますか。
積極的に参加する 14 18 10
義務なので参加する 35 35 35
できれば参加したくない 46 44 47
◆裁判員制度では、一般市民が死刑判決にかかわることもあります。一般市民が死刑判決にかかわることに賛成ですか。
賛成 28 35 21
反対 63 60 66
(注)数字は%、小数点以下を四捨五入。無回答は省略。
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24、25日の2日間、コンピューターで無作為に選んだ電話番号を使うRDS法で調査。有権者のいる1591世帯から、1046人の回答を得た。回答率は66%
毎日新聞 2009年1月28日 東京朝刊