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社説

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補正予算成立―この先も思いやられる

 定額給付金を除けば第2次補正予算に与野党の大きな対立はない。ならばそこだけでも早く実現してほしい。それが多くの国民の率直な思いだろう。

 だが、国会はそう動きそうもない。

 「100年に1度の金融災害」に立ち向かうためと、麻生首相が大型の経済対策を発表したのは昨年10月末のことだった。それからほぼ3カ月。ようやく2次補正が成立した。

 これほど遅くなった最大の理由は、政府が昨年の国会に2次補正案を提出せず、年明けに先送りしたことだ。

 最終局面では、衆参の議決が異なったことを受けての両院協議会がもつれた。議事録を残し、公開すべきだと求めた野党側に与党が反対した。またしてもメンツだ。決着が少々延びても大したことはないと見切っているのか。

 首相や与党は本当に経済対策を急ぎたいのか。そんな疑問を抱かせることは、こればかりではない。2次補正が成立しても、関連法案が成立しないと多くの施策は実行に移せないのに、そのめどが立っていないのだ。

 2兆円の定額給付金に反対する野党の抵抗で、参院での法案審議はまだ手つかずだ。このままだと、年度末に向けた中小企業の資金繰り支援や雇用創出策なども宙に浮いてしまう。

 定額給付金への世論の批判は極めて厳しい。政府の財政制度等審議会でさえ、取り下げて2兆円の使い道を考え直すべきだという声をあげる始末だ。

 これだけ反対が強いのに、政府与党はひたすら押し通す。そうした強硬姿勢が、野党に格好の抵抗材料を提供しているのは皮肉なことである。

 結局、最後は衆院の3分の2による再議決でけりをつければいいと踏んでいるからなのだろう。

 「3分の2」は、確かに野党の抵抗をねじ伏せる特効薬だ。半面、使えるまでには60日間という長い日数を待たねばならない制約がある。

 政治が止まったり、後戻りしたりした福田前政権のころの国会で、与党はそれを思い知ったのではなかったか。福田氏が政権を投げ出したのは、国民の批判を含めて、そうした国会運営の難しさに音を上げたためでもあった。

 にもかかわらず、麻生政権は再び「3分の2」頼みの政治に突入しようとしている。次は09年度当初予算の関連法案でまた「3分の2」に頼らざるを得なくなるのは目に見えている。

 本当に経済対策を急ぐというのであれば、首相は定額給付金をはずすといった妥協を考えるべきだ。そろそろ「ねじれ国会」の現実を受け入れ、打開する方法を学習したらどうか。

 不況は深刻さを増している。このうえさらに「3分の2」症候群の不毛な政治劇を見せつけられるとしたら、有権者はたまらない。ここから日本の政治を抜け出させる責任は首相にある。

グアンタナモ―姿消すテロ戦争の暗部

 対テロ戦争の負の遺産のひとつが、ようやく姿を消すことになった。

 オバマ米大統領は、キューバにあるグアンタナモ米軍基地に設置している収容所を、1年以内に閉鎖するよう命じた。米中央情報局(CIA)が海外に設けている秘密の収容施設も閉鎖する。拘束者への拷問も禁止した。

 いずれもブッシュ前政権による対テロ戦争の暗部であり、人権侵害として米国内外で批判の的になってきた。「安全と理想の二者択一を拒絶する」と宣言した就任演説のとおり、これまでの誤りを正そうとするオバマ氏の姿勢を歓迎したい。傷ついた米国の信頼回復へ、重要な一歩である。

 グアンタナモ収容所は、9・11同時多発テロを受けて設けられた。アルカイダやタリバーン関係者と米国がみなした「敵性戦闘員」を拘束し、収容してきた。鉄条網の中で目隠しされ、オレンジ色の拘束衣で縛られた姿が目に焼き付いている人も多いだろう。今も240人以上が収容されている。

 他国の人間を法的手続きを踏まずに連行し、無期限に拘束する。平時には考えられない乱暴な措置が、「テロの再発を防止する」という理屈で正当化されてきた。ジュネーブ条約による保護から外すため、拘束者を「捕虜」とは認めない。一方で、通常の犯罪者に対する刑事手続きも「米国領ではない」として適用しない。国際法と国内法を勝手に使い分け、法の及ばぬ闇の世界を作り出していたのだ。

 ハンガーストライキで抗議すると、無理やり鼻からチューブで栄養を注入された。「水責め」といった拷問も行われていた。おぞましい虐待が起きたイラクのアブグレイブ刑務所(06年に閉鎖)と並んで、グアンタナモ収容所は、反米感情をかきたてる象徴となった。国連人権委員会(現理事会)も06年に閉鎖を勧告している。

 安全保障に全力を傾けるのは当然だが、ミイラ取りがミイラになってはいけない。開かれた社会を守ることが、テロとの戦いの目的のはずだ。テロリスト相手には手段を選ばないというのでは、米国が攻撃してきた「ならず者国家」と変わらない。

 問題は収容者をどうするか。なかでも、同時テロの首謀者とされるような「確信犯」は難題だ。米国の法廷で裁くのが筋だが、拷問などの尋問方法が問題になり釈放されるかもしれない。証拠が機密情報で法廷に出せない場合もあろう。釈放された拘束者がイエメンに逃れてアルカイダ幹部となり、爆弾テロにかかわった例もあるという。

 収容者の一部を引き取る、と申し出た欧州の国もある。釈放後にテロ行為へ走らぬよう、社会復帰への受け皿づくりや動向の監視など、各国も協力できるはずだ。この機会に、反テロでの国際的な連携を再構築していこう。

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