2009年1月27日 20時54分 更新:1月28日 1時29分
毎日新聞が24、25の両日に実施した全国世論調査(電話)で、5月から始まる裁判員制度について聞いたところ、市民が死刑判決にかかわることに63%の人が「反対」と回答し、「賛成」は28%にとどまった。裁判員に選ばれた場合に「参加する」と答えた人は49%で過半数に届かなかった。制度スタートを前に、極刑を言い渡すこともある制度への抵抗感の強さが浮き彫りになった。
裁判員制度は殺人や強盗致死傷、現住建造物等放火など重大事件が対象。国民から選ばれた裁判員は有罪・無罪だけでなく量刑も判断し、事件によっては死刑を選択するケースもあり得る。
死刑判決にかかわることの賛否で、男性は賛成35%、反対60%に対し女性は賛成21%、反対66%で、女性の方が抵抗感が強かった。年代別で「反対」が最も高いのは50代の69%、最低は20代の55%。
裁判員制度への参加意識では「積極的に参加する」と答えたのが14%、「義務なので参加する」は35%だった。06年9月の前回調査(面接)では各17%と34%。「できれば参加したくない」は46%で、前回調査と同じだった。調査方法が異なるため単純比較できないが、制度を間近に控えても傾向は変わらなかった。
男女別では「積極的に参加する」が男性18%、女性10%で、女性の方が消極的。また、年齢が高くなるほど「参加したくない」の割合が高かった。
一方、裁判員制度を「評価する」と答えたのは35%で、「評価しない」の56%を大きく下回った。前回調査では、各34%と60%でほぼ横ばい。【北村和巳】
裁判員制度に関する毎日新聞の全国世論調査で、一般市民が死刑判決に関与することへの反対が6割を超えた。制度導入の際、国民が死刑判決にかかわることを巡る論争は高まらなかった。施行3年後の制度見直しを見据え、継続的な検証と国民的な議論が求められる。
調査では56%の人が裁判員制度を「評価しない」と答えた。このうち83%が、一般市民の死刑判決関与に反対した。人の生死を左右しかねない不安が、制度への抵抗感の大きな要素になっていることがうかがえる。
重大事件を裁判員制度の対象にしたのは、国民の関心が高く社会的な影響も大きいためだ。フランスやドイツなども、市民が裁判官とともに有罪・無罪と量刑を判断する参審制を採用しているが、死刑制度がなく、日本とは事情が異なる。
これまでに全国で500回以上の模擬裁判が行われたが、最高裁は「シミュレーションに過ぎず、裁判員の心理負担は分からない」などと死刑想定事件を題材にしなかった。しかし、弁護士の一部からは「問題点を探るため不可欠だった」との声も根強い。
内閣府が04年に実施した世論調査では、死刑存続を認める意見が8割を超えたが、プロの裁判官による判決を前提とした結果だ。裁判員制度の導入は、死刑制度の是非を巡る議論を呼ぶ可能性もある。
被害者や社会の厳罰を求める声と、死刑選択の重さの間で、裁判員が心理的に大きな負担を抱えることは容易に予想される。裁判員の心のケアの充実も必要だ。【北村和巳】