さいたま市立中学3年の女子生徒(当時14歳)が自殺し、「復讐(ふくしゅう)します」などと書かれた遺書が見つかった。市教委は19日、同級生による「ネットいじめ」があったことは認めたが、「直接の原因とは考えられない」との見解を示した。これに対し、女子生徒の母親(42)は「ネット上や学校で何があったのか親には知るすべがない」と話し、両親は他にいじめがなかったか学校側に調査を求めている。【弘田恭子】
市教委や母親によると、女子生徒は昨年10月、自宅で首をつり自殺した。同年6月にこの中学に転校し、間もない7月上旬、同級生の携帯電話の自己紹介サイト(プロフ)に「転校生、うまくすれば不登校になる」などと書き込まれているのを見つけ、学校に相談。同級生の女子生徒2人が関与を認めたため担任らが謝罪させた。女子生徒の死亡後に見つかった遺書には、この同級生2人のうち1人の実名を挙げ、「復讐します」などと書かれていた。遺書に日付はなかった。
市教委などによると、中学校では19日午前8時半ごろ、体育館に全校生徒を集めて緊急の集会を開いた。女子生徒が自殺したことや、ネットいじめがあり書き込んだ生徒が謝罪したことなどを説明。記者会見で校長らは、「同級生の謝罪後、3カ月たっており、女子生徒は2学期も休まずに通っていた。無関係とは言い切れないが、直接の因果関係はないと考える」と話した。
一方、女子生徒の母親は取材に、「自殺する前夜、成績のことで怒ったことが原因かと自分たちを責めたが、遺書を見て驚いた。学校にすべての責任があるとは思っておらず、何があったか知りたいだけ。真実をきちんと調べてほしい」と話している。
「ネットいじめ」が全国的に増加する中、県内でも06年度の178件から1年間で252件と約1・4倍に増えており、県やさいたま市も対応マニュアルの作成など対策を取っている。ただ、ネットの世界でのトラブルは生徒から学校や保護者への相談がなければ把握は難しく、判明しているのは氷山の一角とも言われる。県教育局生徒指導室は「生徒が教師に話ができる基本的な信頼関係づくりが重要」と話す。
県教委は昨年5月にネットいじめ等対策検討委員会を設置し、公立中高生約2万人にアンケートを実施。8人に1人がネットいじめを経験している実態が明らかになり、ネットを巡るトラブルの予防と対策をA4判78ページにわたって詳述したマニュアルを作成した。さいたま市教委も、対策を中心に同3ページのマニュアルを昨年5月、市立学校に配布している。
しかし、実態は教師ら大人の方が携帯電話の操作に不慣れで、子供たちが利用する自己紹介サイト「プロフ」や日記サイト「ブログ」を見たこともないケースが多い。県のマニュアルには、きわどい水着姿の写真付きのプロフや性行為を描いたケータイ小説、悪口が羅列された掲示板などの画面を掲載して実態を伝えている。
県生徒指導室は「マニュアルは作ったが、どう保護者や地域の人も巻き込んで活用するかが課題。学校がネットをすべてチェックすることは不可能なので、生徒が教師に相談しやすい関係の構築が大切だ」と話している。【稲田佳代】
毎日新聞 2009年1月20日 地方版