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【社会】ヘルパー 自ら育成 ALS患者と家族2009年1月27日 夕刊
二十四時間の介護が必要で、普通は病院暮らしや付きっきりの家族介護が必要な筋萎縮(いしゅく)性側索硬化症(ALS)患者。だが、首都圏では一人で暮らすなど、自立に向けた試みが進んでいる。患者と家族が、ヘルパーを育てる新システム「さくらモデル」を導入したからだ。活動の輪は、全国に広がろうとしている。 (中部報道部・城島建治) 三十二歳で発病した橋本操さん(56)=東京都練馬区=は、ほとんど身体を動かすことができないが、五年前に家族から離れ、一人暮らしを始めた。ヘルパーが二十四時間、付き添ってくれているからだ。 それを可能にしたのが「さくらモデル」。仕組みは▽患者や家族が介護専門学校や福祉系大学の学生らをヘルパーとして養成▽患者や家族が訪問介護事業所を運営し、育てたヘルパーを自分たちの家に派遣する−。 ヘルパーを養成するのは、特定非営利活動法人(NPO法人)ALS/MNDサポートセンター「さくら会」(東京都中野区)。橋本さんら都内の患者、家族、看護師などの支援者ら五人が二〇〇三年六月に立ち上げた。 橋本さんらは「介護の負担が重く、家族に自由がなくなり、患者も申し訳ない気持ちでふさぎ込んでしまう。そんな実情を何とかしたかった。研修段階から学生らヘルパーと接するのでコミュニケーション、信頼関係も深まる」と話す。 二カ月に一度、重度訪問介護の資格を取得できる研修会を開く。大学生や専業主婦を積極的に勧誘し、既に七百人が修了した。 資格を取ったヘルパーは、東京、神奈川、埼玉、千葉の一都三県で、さくら会会員の患者や家族が経営する二十五の介護事業所に登録され、患者宅に派遣される。現在、約七十人の患者がサービスを受けている。 事業所は障害者自立支援法などの適用要件を満たしており、自分たちの家だけでなく、希望者宅にヘルパーを派遣すれば収入を得ることもできる。 深夜帯勤務もしやすい学生ヘルパーのおかげで、家族は安眠できるようになり、患者からも「若い人と接することで元気をもらえる」と好評だ。 人工呼吸器を付けた患者は、たん吸引という医療行為を伴うため、介護には時間がかかる。そのため、全国的にみればヘルパー派遣を敬遠する介護事業所もあり、十分なヘルパーを確保できず、家族が睡眠時間を削って介護するケースも少なくない。 さくら会の活動は口コミで広がり、京都市や仙台市でも同じシステムを利用して、一人暮らしする患者が現在三人いる。 同会代表でもある橋本さんは「さくらモデルが全国に広がって家族の負担が減り、自立に向けた動きが進んでほしい」と話している。 <筋萎縮性側索硬化症(ALS)> 全身の筋肉が次第に弱くなる難病。頭脳や感覚ははっきりしたまま、発症から2−4年で呼吸筋がまひする。人工呼吸器の装着や、たんの吸引など24時間介護が必要となるため、家族の負担も大きい。全国の患者は約8000人。
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