野党3党の幹部は27日、経団連に対して、いわゆる派遣切りをやめるよう申し入れました。日増しに強くなる雇用不安。一方で新たな問題も浮上しています。それは、働きたい人と雇いたい人のニーズが一致しないという「雇用のミスマッチ」です。
男性の所持金は、ついに2000円を切りました。男性は40歳。パチンコ店の店員や製造業の派遣を転々とし、去年のクリスマスに、いわゆる派遣切りにあいました。年明けから仕事を探していますが、まだこれというものは見つかっていません。
「(Q.これというのはありますか?)ないですね。飲食関係で探そうとは思っているけど」(「派遣切り」にあった男性)
日本では、3月までに8万5000人が失業すると予想されていますが、一方で一部のタクシー会社や居酒屋チェーン、さらには林業など、働き手を求めているところもないわけではありません。
その中でも、最も人手不足の深刻な業界が「介護」です。障害者介護NPOのスタッフ、前田勝利さん(31)。今は現場のリーダーも任されていますが、つい3年前まではゲームセンターの店員など転々と職を変える日々を送っていました。
「ダメ人間でしたね、当時は。お金もらっているニートって感じ」(前田勝利さん)
しかし友人に誘われ、軽い気持ちで足を踏み入れた介護にはまりました。介護ヘルパー2級の資格も取り、充実の日々を送っています。ただ、問題はあまりの忙しさ。朝から事業所で働き、夜はその足で訪問介助。朝10時までの泊まり勤務が週1回、回ってきます。介護の現場では働き手が足りないのです。
「優しい方が(派遣切りなどの)苦境に陥っていると思う。そういう優しさが私たちの介護業界では大事な仕事ですので、その優しさを誇りに持てる方だったら、是非、来てほしいなと本当に思っております」(日常生活支援ネットワーク・椎名保友さん)
このNPOでは、学歴、経験、年齢は一切不問だと言いますが、職探しをしている人たちの反応はというと・・・
「人と関わるような仕事をしていない、今まで。その辺がネック。給料が高いとかなら別だけど。(介護は)そんなに高くないし。どちらかというと“3K系”ですよね」(求職者)
「ガソリンスタンドから板金、溶接関係からトラック運転手から関わっていたんですけど、やっぱり次探すとなると同じ職種ですね」(求職者)
求人と求職の間に大きなミスマッチが生じているのが現状なのです。近畿で最も派遣切りが多い滋賀県のデータでは、全体の求人数は1年で4割減っています。ただ、激減しているのは製造業と派遣などのサービス業だけで、医療・福祉系はむしろ増えているのです。
「どうしても製造ラインでものを作っている方が性に合っているという方もいる。なかなか無理やり『人が足りないので行きなさい』とは言えない」(滋賀労働局・職業安定部長)
デンマークやオランダでは、こうした雇用ミスマッチを解消するために失業保険を受け取る条件に職業訓練を義務づけ、失業者が別の職種にもつけるよう取り組んでいます。日本では訓練制度の参加は任意。訓練を受ける人は2割以下です。
専門家は、日本でも雇用ミスマッチ解消に向けて資格取得や職業訓練に対する国レベルの支援が必要だと話します。
「特に非正規雇用者は、個人でキャリアを形成するのが難しい。やはり社会的な訓練システムを非正規との関連で今後、より充実発展させていくと」(大阪市立大学経済学部・玉井金五教授)
「職業選択の自由」は憲法にも定められた大切な権利で誰にも強制できませんが、やる気のある働き手を必要としている職場は意外に身近なところにあるのかもしれません。(27日18:08)