考察レポート第6弾・最近のマルハン |
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考察レポート第6弾・最近のマルハン
1・威嚇型から殲滅型への転換
マルハンの戦略について考える前に、日本の歴史を少しだけ紐解いてみたい。
天下布武を唱え、武力による天下統一を志した織田信長は、難敵・本願寺との長島攻略戦において、鉄砲を使い、初めて民間兵を大量虐殺した。それまでの鉄砲は敵を殲滅するためのものではなく、相手兵を威嚇し、逃げさせるためのものだった。殺傷兵器である鉄砲で、なぜ威嚇なのか?
元来、日本の戦争は、敵地を焦土化することを目的としていない。
なぜなら、戦後には領国としての経営が待っているため、現地の住民を皆殺しにできないのである。欧米のような、搾取を基本原則とした植民地政策ではなく、あくまでも自国への併合を旨とし、年貢を基にした経営を行った。
税金を払い、国庫を潤してくれる農民を虐殺などできるはずがなかった。
狭い国土ゆえに、虐殺や収奪ができないのである。
それをする領主は簡単に地位を追われた。
ところが本願寺戦においては、信長は農民でもある信徒を鉄砲で殲滅した。
これは戦国史上の一大転機となり、以降、信長・秀吉による天下統一を早めていった。相手国においても、殲滅されるくらいならば臣従し、軍門に下ることで家名と農民を守ったのである。
また、鉄砲の絶対量が少なかったため、前線に置く「部隊」とすることができなかったという面もある。しかし、徐々に保有数を増やした信長は長篠の戦において、3000丁もの鉄砲部隊で武田勝頼率いる騎馬軍団を殲滅した。
マルハンの戦略は、信長の天下取りにおける戦略の変化に通ずるものがある。
2・威嚇(いかく)型とは
威嚇型を一言で言うならば、自らの強き要素で相手を威嚇し、戦意を喪失させる戦略のことである。かつてマルハンの強き要素とは何だったか。
・徹底した人材教育
・資金力による出店
・バイイングパワーによるボリュームディスカウント
これにより、マルハン出店となると、諦めに似た境地に陥ったホールも多いはずだ。ある者はどうせ勝てないと嘆き、ある者は実際に稼働を奪われることで廃業に追い込まれた。しかし、有力店の多くはマルハンに学び、真似できる部分はキッチリ真似をしたのである。
人材教育に資金を投じ、三井住友銀行やオリックスの支援を受けて出店を進めた有力店は「強いホール」として認知されるようになる。1円パチンコの興隆などもあり、稼働でマルハンに負けない店舗も多く存在するようになった。しかし、一部を見れば対抗できた店舗もあるが、遊技人口の減少もあって、全体としてはマルハンの独り勝ちであることに変わりなかった。長きに渡る争いの結果、マルハンは全店舗の90%以上が地域一番店となり、平均稼働40000発以上という化け物チェーンとなったのである。
弱小メーカーにとってのマルハンは、すでに頭が上がらない存在になっている。
ホールの足を引っ張る5号機などは、10万円以上の値引きで買えたりすることを見ても、ボリュームディスカウントの効果はより一層強まった。そして、中小有力店がどうやっても手に入れられないのが、このボリュームディスカウントなのである。
ホール運営において最も大きいコストは機械代。その部分で圧倒的優位に立つマルハン。業界人ならその脅威は誰しも知っており、まさに存在自体が威嚇にあたる。出店数か月で、赤字でもないのに経営を諦めるホールが多いのも、マルハンという名前は鉄砲のような威嚇効果を持っていることを如実に表すものである。
悲しいかな、この傾向は今後も続く。それどころか、より強くなる。ボリュームディスカウントを得られず、貸し剥がしにより資金力を削がれた中小ホールは、果たして接客だけで対抗できるのであろうか。
3・殲滅(せんめつ)型とは
殲滅型とは、相手の弱い部分を徹底的に攻撃し、二度と立ち上がれないよう、包囲殲滅することである。パチスパイで地方へ行くと、マルハンが殲滅型に舵を切ったと感じる。
「大分マルハン合同イベント!」
「富山マルハン合同イベント!」
マルハンの現在の全国イベントは7の付く日。アントニオ猪木を使って盛んに宣伝している。これに対抗できる強豪店のメインイベントは毎月1のつく日だったとする。マルハンは7の付く全国イベント以外にもう一つ、8のつく日に地域ブロック合同イベントを行うとしよう。相手の本丸である1の付く日には手をつけない。
強豪店は微動だにしないだろう。しかし、マルハンは強豪店を取り囲む形で配置されているため、顧客は徐々に周辺のマルハンへ「離散」させられる。ましてサラリーマン層などは本来、パチンコがメインの人生を送っていないため、近いホールでイベントをやっていればそちらへ行く。しかもテレビCMで「●●県マルハン合同イベント!」とやられたらどうだろうか。やさしいスタッフが指輪を探すCMが流れたらどうだろうか。
強豪店の稼働の一部を周辺に離散させることに成功したら、次のターゲットは日曜日だ。本来のイベントである7の付く日と、地域限定8の付く日が土日に重なる時を待つ。ここで本気の予算を確保することで、土日専門の浮遊層に、圧倒的な稼働と、出玉「感」を強烈にアピールするのだ。
そして最後に、相手の本丸である、1の付く日を最終日にした連続イベントを合同で開催する。8・9・10・11日と連続4日開催。相手より強くなった土日を前半に絡めれば、なお効果的だろう。圧倒的かと思われた強豪店のイベントだが、まず日曜日に空き台ができ、サラリーマン客は「前に比べると出てないな」という印象を持つようになる。イベントの日でさえ席が埋まらなくなったら、もう勝負は決まる。出玉感が減ることに常連層は敏感であり、一層の離散は止められないものとなろう。
4・包囲殲滅のポイント
包囲殲滅は、別に日曜日のサラリーマンを狙わなくともかまわない。ポイントは「相手顧客を周辺のいずれかのマルハンに離散させること」である。
1・強豪店の弱い曜日を見つける
2・それを避けて県内合同イベントを打つ
3・強豪店の「暇な日」を作ることでファンの意識から出玉感を奪う
4・強豪店の「暇な日」を増やすように合同イベントの日程を組み続ける
5・全国、合同を絡めつつ、強豪店のメインイベントの日を最終日とする連続イベントを開き、足腰が立たなくなるほどのダメージを与える
6・以上繰り返し
マルハンは図体が大きいから、意思の決定が遅くなると思われていた。しかしこの夏、九州のマルハンだけが、店舗の名前をさらすオフィシャルブログを始めた。これは二つのことを意味する。
「地域ブロックでの裁量とその自由さ、決断の速さ」
「サラリーマンなど、常連以外へのPR」
小回りの利かない大鑑巨砲かと思ったら、高性能イージス艦の集まりだったという感じだろうか。情報をベースに相手が少しでも弱い所を見つけたら、そこをほじくり、さらに弱くする。相手の弱みを広げたら、自分の強みを用いて全力で切り込む。最近のマルハンは、この一連の流れがきちんと出来ているように感ずる。
ちなみに千葉県においては「ゲッツ君」というオリジナルキャラを作成し、毎週月曜日をマルハンゲッツと題した県内合同イベントを開催している。全国イベントである7の付く日と重なった時より、二日間連続となる暦の時の方が、他店へのダメージが大きいように思われる。これぞまさに、包囲殲滅型の真骨頂であろう。
5・マルハンに対抗する期間限定地域連合
マルハンが同一チェーンで包囲殲滅を狙うなら、その輪を分断させることで、逆包囲殲滅が可能となる。「相手の弱い部分を徹底的に」という殲滅型の原則を思い出してほしい。県内で一番弱いマルハンを近隣強豪店で包囲する「期間限定地域連合」「突貫チェーン店」を組織するのだ。
パチンコ業界における合併や買収は、お山の大将型のオーナーが多いために難しい。しかし、1年間の限定連合ならばそれも不可能ではあるまい。狙った1店舗を徹底的に叩く事で、連合の稼働は安定する。次は、別のマルハンを狙うために、別の連合を組む。大手チェーン店が一番恐れるのは地域連合であり、それが柔軟に変化するとなれば、なおさら対処は難しくなろう。
ダイエーやセブン&アイとイオンの違いをご存じだろうか。セブン&アイはイトーヨーカドーとセブンイレブンを母体としている。そしてセブンイレブンはかつて、イトーヨーカドーの一事業であった。つまりセブン&アイは元々は純粋な単一会社と言える。一方のジャスコは、岡田屋、フタギ、シロ、伊勢甚、ヤオハンなど、地方の有力スーパーを糾合して大きくなった。
パチンコホールも、一時的とはいえ合従連衡を繰り返すことで、ホールディングスカンパニー(持ち株会社)化の道も開けるだろう。つまり、期間限定地域連合は、合併の練習でもある。
・方針の近い、考え方の近いホールが集まり、持ち株会社を作る
・機械の仕入れのみ持ち株会社が行う
・屋号は独自性を保ったまま、「私達は●●グループです」と展開する
・バイイングパワーを獲得し、メーカーに対してマルハン以上の優遇を要求する
目指すはバイイングパワーの獲得。しかしパチンコ業界は、過去に多くの団体が生まれ、機能不全に陥った。おそらく、現段階においてパチンコホールの大連合は不可能だろう。いや、このままでは将来に渡って永久に不可能と断言してもよい。ゆえに、「連合することに慣れる」という作業が必要なのである。それが期間限定地域連合だ。
6・単独店で生き残るには
弱者が強者に挑むには、強者が嫌がることをチクチクやり続けることが肝要となる。なるべくなら、相手が諦めるくらいの細かさで、だ。
マルハンの韓裕氏はかつて、内定者懇談会に出席した私にこう語った。
「ライバルは●●●●●やね。店舗数はうちの方が圧倒的に多いけど、彼らは頭が柔軟で、何をするか分からない。そういう組織は怖いよ」
相手は柔軟な発想を嫌がる。ならばこれを見逃す手はない。細かい発想で抵抗すべきだろう。マルハンで人気のあった機械を確実に中古で導入し、「あなたが大好きだったあの台を買いました!」とやる。全台バラエティ、または少台数の組み合わせを行い、台数ではなく機種数でリードする。そして、組み合わせ方を変えることで、シマに特徴を持たせる。
・必殺・暴れん坊・藤岡弘の柳生十兵衛で「時代劇コーナー」にする
・小林幸子・千昌夫・五木ひろしで「演歌コーナー」になる
・組み合わせを変えれば、必殺・藤岡弘・小林幸子で「あの人は今コーナー」になる
他にも白海・黄海・赤海・金海を組み合わせた色分け甘海バラエティにするなど、既存のシマ移動で顧客の目に「変化」を焼き付ける。仮に失敗したとしても、死に台の組み合わせを変えるだけなので、これ以上稼働は落ちない。新鮮さを感じてもらう可能性だけが残される。
つまり、ノーリスク・ローリターン。
ノーリスク・ローリターンの積み重ねがアイディアの本質であり、マルハンも嫌がる「小回り」である。ここで注意したいのは、稼働が伸びるとは思えないとアイディアを潰していては、いつか「ホンモノ」を潰す事になるということ。あなたの周りにもいるだろう。「そんなので利益は取れない、稼働は伸びない、認められない」と簡単に潰すくせに、「アイディアマンが欲しい。うちはそれを受け入れる」と頓珍漢な事を云う管理者が。
くだらないアイディアを出す事、それを認める事に慣れていない組織に、ホンモノのアイディアなど絶対に生まれない。シマ移動レベルで構わないから、まずはアウトプットの癖をつけよう。
7・まとめ
これらの戦略・戦術は、全てお客様へPRしよう。「うちの客は分かってくれるはず」というのはサービス提供者の願望にすぎない。施策は口に出さねば伝わらないのだ。
また、常連に対するPRはいらない。ロイヤルカスタマーはあくまで「結果」であり、運営に対する褒賞くらいに考えた方が良い。なぜなら、常連にPRしすぎると、新人には意味すら分からなくなるからである。ホールのイベントはホールと常連しか知らないという状態だ。常連に伝える言葉は新人には分からないが、新人に伝える言葉は常連にも伝わる。ならば費用対効果で「新人に」「分かりやすい言語で」「頻度高く」伝えることが肝要となる。
地域連合は、マルハンに対抗できる組織を作り上げ、包囲殲滅を互いに繰り返す「覇権と淘汰」の仕組みだ。マルハンに勝つ。勝つまでやるという消耗戦である。ジャスコのイオングループが、セブン&アイに挑む戦争と同じだ。
一方、ノーリスク・ローリターンのアイディアを個店単位で積み重ねる方式は、いわば「共存共栄」の道のりである。違うカテゴリならば、それは共存可能な同業者となるであろう。地域連合が不可能ならば、中小店はマルハンとの共存枠を狙うべきである。そして、アイディアを積み重ねず潰れて行くホールを尻目に、地域で独自の立場を築いてほしい。共存共栄の枠は地域で1店舗か2店舗。それほど多くはないのだから。
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いいパチンコLLP