ギターを抱えたエルビス・プレスリーの銅像に、ゆっくりと白い布がかぶせられた。大勢の人々の「ありがとう」の声と拍手の中、プレスリーの代表曲「ラブ・ミー・テンダー」が流された。
東京・JR原宿駅近くの路地裏、海外ロックスターの関連グッズを扱う店舗の前で先日行われた閉店イベントだ。店舗は、プレスリー、ビートルズ、ローリング・ストーンズの三店が一体となっており、音楽関係者やファンに親しまれた。銅像は「ロックの聖地」のシンボルだった。
閉店の理由は、店舗の賃料の高騰という。付近はファッションの街として知られ、特に近年、ビルが並ぶ表通りから入った「裏原宿」と呼ばれる路地裏が人気なのだ。
もともとは住宅街だが、民家を改造するなどして衣料や飲食の個性的な小さな店が次々にでき、若者らでにぎわっている。名物店の閉鎖は惜しまれるが、地域の勢いがうかがえる。
人を引き付ける秘けつは、道が細く、入り組んでいること。車が通らず、ゆったりと歩いて店を巡れて心地よい。ショッピングセンターなどの管理された空間にはない、面白さもある。
都市開発でとかく広い道路や大きなビルを造ろうとしてきたのとは、逆の発想である。大都市でなくても実現可能で、地方都市が大いに学ぶべき事例だ。