日銀は金融政策決定会合で、二〇〇八、〇九両年度の実質経済成長率予想をそれぞれマイナス1・8%とマイナス2・0%に下方修正した。戦後最悪だった一九九八年度のマイナス1・5%を二年連続して更新するもので、あらためて経済状況の厳しさを突き付けられた。
今回の会合では、〇八年十月に示した「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」の中間評価を行い、実質成長率は従来予想の〇八年度0・1%、〇九年度0・6%から大幅に下振れした。生鮮食品を除く消費者物価も〇九年度が前年度比1・1%下落を予測、デフレに対する懸念も出てきた。
米国に端を発した世界的な金融危機に伴う景気の悪化が急速に進んでいる。東京商工リサーチの発表によると、〇八年の全国企業倒産件数(負債額一千万円以上)は約一万五千六百件で前年比11%増となった。
目を引くのが、資金繰りの行き詰まりだ。銀行が融資姿勢を厳しくしているためで、利益を出していたにもかかわらず資金調達難から破綻(はたん)した「黒字倒産」のケースも多いという。資金決済が集中する年度末を控え、まさに正念場である。倒産や減産が増えれば、雇用情勢は一段と深刻化して消費を冷やす悪循環に陥り、日銀が下方修正した予想をさらに下回ることにもなりかねない。
厳しさが増す企業の資金繰りを支援するため、日銀は企業が発行するコマーシャルペーパー(CP)と資産担保CP(ABCP)を三月末までの時限措置で三兆円を上限に買い取ることを決めた。さらに、残存期間が一年以内の社債の購入についても検討する。
金融危機を受けて金融機関や投資家は、CPや社債の購入に慎重だ。大企業でもこうした直接金融による資金調達はままならない。勢い金融機関からの借り入れへと向き、中小企業にとっては資金調達が一層困難な状況をきたしている。金融機関が企業から購入したCPや社債を日銀が買い取ることになれば、金融機関が手を出しやすく、中小企業への融資につながることも期待できよう。
CPなどは高格付けのものとする条件を設けているとはいえ、損失が発生する恐れのある民間資産を日銀が購入するのは異例の措置だ。しかし、景気の回復に資金繰りは欠かせない。経済を取り巻く環境は極めて深刻な非常事態にある。あらゆる手だてを駆使して打開への取り組みを強めてもらいたい。
太陽光や風力など自然エネルギーの普及や研究開発を促進する「国際再生可能エネルギー機関(IRENA)」の設立総会が二十六日、ドイツのボンで開かれる。再生可能エネルギー専門の国際機関は初めてだ。
IRENAはドイツが中心となって発足にこぎ着けた。再生可能エネルギーの利用拡大を通して地球温暖化対策や貧困対策などに国際協力で取り組む。再生可能エネルギーの発電効率などの性能を評価する国際基準づくりも進める方針だ。ドイツ政府によると、総会にはフランスやデンマーク、インドなど約百の国・地域が参加し、約四十の国などが設立条約に署名する見通しだという。
問題は日本の姿勢である。IRENAへの参加をめぐっては政府内でも意見が分かれる。当初は、経済産業省出身者が事務局長を務める国際エネルギー機関(IEA)と事業内容が重複するなどとして参加しない方針だった。ところが、参加に消極的だった米国がオブザーバー参加する見通しとなるや一転してこれにならった。
このような腰の引けた対応でいいのだろうか。再生可能エネルギーは、エネルギー安全保障や地球温暖化対策、さらにはビジネスチャンスといった観点からも重要性が高まっている。オバマ米大統領も地球温暖化対策と雇用創出を絡めた「グリーン・ニューディール」構想を掲げており、今後、米国がいつ正式参加に傾くか分からない。
日本は優れた環境関連技術を生かして、世界の再生可能エネルギーの推進役を担う立場にある。にもかかわらず、このままでは国際ルールづくりに参加できないばかりか、国際社会に温暖化対策に消極的との印象を抱かせかねない。積極的な対応が求められる。
(2009年1月26日掲載)