東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 放送芸能 > 紙面から一覧 > 記事

ここから本文

【放送芸能】

エンタメ発の流行 (1)おバカタレント

2009年1月4日 朝刊

 時代の空気を象徴する流行やブームは、テレビに代表されるエンターテインメントの世界が「発信源」「増幅装置」となっているケースが多い。社会に広がっていった現象を、キーパーソンはどう見つめているのか。さらなる展開は望めるのか。ブームの源流に迫った。

 「『羞恥心(しゅうちしん)』を売り出して“いける”なんて、全然思ってなかった」

 フジテレビのクイズ番組「クイズヘキサゴン2(ローマ数字の2)」(水曜午後7時)で、珍解答を繰り返し、一躍ブームとなったおバカタレント。同番組の神原孝プロデューサーは、その人気の広がりに驚きを隠さない。CD発売の際、「ユニットが話題になれば、番組が活性化するだろうな」ぐらいにしか期待していなかったからだ。

 もともと心理ゲーム的要素が強かった番組は二〇〇五年、「賢い人から勉強のできない人までが、一緒に出られるクイズ番組」にリニューアル。その構成上、必要に迫られておバカタレントがキャスティングされた。

 ただし、「おバカは、勉強ができないだけでは務まらない」と神原さんは強調する。番組の雰囲気に適応し、司会の島田紳助の「バカ」という言葉、いじりを抵抗なく受け入れる素直さが要求されるからだ。分からない問題でも、とにかく解答する前向きさ、いわゆるバラエティー的体力も求められる。

 さらに、彼らの人気を支える才能として、神原さんは「瞬発力」を挙げる。「瞬間的に面白いことを言うタレントというのが僕の認識。おバカというくくりは、周りがつくっていること」と話す。

 一方、「教育に良くない」との視聴者からの批判もあるのも事実。こうした声には「番組に求めるものが違うのでは」と答える。「バラエティーは、腹の底から素直に笑えることが一番。紳助さんのいじりも、愛情を持ってやってる。バカな解答も、家族で見ていたら、そこから会話が生まれるんじゃないですか」

 さて、おバカでブレークしたタレントたちは連続ドラマ出演など、バラエティー以外にも進出した。羞恥心は新年二日、個々の活動に専念するとして歌手活動を休止した。

 「今、おバカタレントといわれている子たちは、それぞれの世界で、十年後も何かしら活躍していると思う。その時、おバカの代名詞は要らない。上地雄輔におバカタレントって、もう言いづらいじゃないですか」と神原さん。

 彼らをプロデュースした紳助は、次の仕掛けにノリノリらしい。神原さんも変化には柔軟だ。「『そういえばこの子たち、昔おバカタレントだったよね。ヘキサゴンってクイズ番組だったよね』って、どんどん変わっていけばいい。今年も、いろんな球を投げ続けていくつもり」

  (高橋知子)

オリコン1位、公演も成功

 おバカキャラの原形は「クイズヘキサゴン2(ローマ数字の2)」の出演者全員が受ける予選ペーパーテスト(50問)で、最下位を争っていたタレント。初期は、山田花子、村上ショージ、ほしのあき、若槻千夏ら、お笑いやグラビアアイドルが中心だった。二〇〇七年後半から、後にユニットとなる上地雄輔、つるの剛士、野久保直樹(以上、羞恥心)、里田まい、スザンヌ、木下優樹菜(以上、Pabo)らがその代表格に。

 昨年四月、羞恥心は紳助のプロデュース「羞恥心」でCDデビュー。オリコンチャートで四週連続二位、四十七万枚超の売り上げを記録する。十二月に発売したラストシングル「弱虫サンタ」は、オリコン初登場一位。羞恥心と紳助は、日本レコード大賞特別賞に輝いた。

 昨年十月、番組から生まれたユニットがヘキサゴンファミリーとして、東京・代々木第一体育館でコンサートを開催。ファミリーで発売したアルバム「WE LOVEヘキサゴン」は、発売一週目で二十七万枚を売り上げた。羞恥心とPaboは、年末の紅白歌合戦にも出演している。

 ところで、羞恥心のグループ名は、上地雄輔がクイズで「羞恥心」を「さじしん」と読んだことに由来する。ズバ抜けたおバカキャラ三人のグループ名にぴったりだとして紳助が名付けた。Paboは、韓国語で「おばかさん」の意味という。

 

この記事を印刷する